緑茶は水分補給や食事の際の飲み物として、様々な場面で飲む機会があります。
風邪予防や殺菌目的に緑茶を推奨している介護施設もあります。
しかし、緑茶を飲みすぎると頻尿になるなど体に様々な影響を及ぼす可能性があります。
緑茶にはどのような働きがあり、体にどのような効果を与えるのでしょうか?
また、緑茶の飲み方や飲水量など注意点はあるのでしょうか?
本記事では緑茶の効果について以下の点を中心にご紹介します。
- 緑茶にどのような効果があるか
- 緑茶はがんにも影響するか
- 緑茶を飲む際の注意事項はあるのか
緑茶の効果について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
スポンサーリンク
緑茶の成分一覧
緑茶には体の働きに作用する様々な成分が含まれています。
具体的には以下の成分です。
タンニン
タンニンとは食部由来成分ポリフェノールの1種で、カテキンやアントシアニンと同様のフラボノイド系に属します。
お茶の苦味や渋味など味に関する重要な役割があります。
タンニンには以下の効果があります。
- 抗酸化作用:脂質の酸化を予防し、動脈硬化など生活習慣病予防につながる
- 止血作用:血栓融解物質であるプラスミンの働きを阻害し、出血を止める
- 下痢止め:腸壁や腸の内容物と結合し、本来の腸の運動に戻りやすくなる
カフェイン
カフェインとは天然由来の有機化合物アルカロイドの1種です。
コーヒーに多く含まれている成分ですが、緑茶にも含まれています。
緑茶の種類別によるカフェイン含有量は以下の通りです。
食品名 | 成分量(100あたりのmg) |
玉露 | 160 |
煎茶 | 20 |
出典:食品安全委員会【食品中のカフェイン】
カフェインには以下の効果があります。
- 利尿作用:腎血管の拡張や尿細管の再吸収抑制に働くことで尿量が増加する
- 覚醒を高める:眠気の下となるアデノシンの働きを阻害し、眠気を妨げる
- 脂肪燃焼作用:有酸素運動30分前にカフェインを摂取すると脂肪酸化を増加させる
出典:The Journal of the International Society of Sports Nutrition「Caffeine increases maximal fat oxidation during a graded exercise test: is there a diurnal variation?」
カフェインと聞くと眠気覚ましのコーヒーをイメージする方が多いですよね。一方で、カフェインの摂りすぎはよくないとも聞きます。では、ちょうどいいカフェインの摂取目安はどのくらいなのでしょう?本記事では、カフェインについて以下の点を中心[…]
テアニン
テアニンとはアミノ酸の1種です。
旨味や甘味など味に関する重要な役割があります。
緑茶の中でも玉露や新茶などに多く含まれています。
テアニンには以下の効果があります。
- 睡眠の質改善:自律神経の副交感神経が働き、疲労回復、睡眠時間を延長する
- リラックス効果:脳波のα波を増加させ、ストレスや不安を軽減させる
- 精神安定:統合失調症など精神疾患患者のうつ症状や不安症状を改善させる
- ウイルス予防作用:インフルエンザの予防効果がある
- 記憶力改善:言語記憶や実行機能など認知機能を改善させる
- 血圧上昇抑制:カフェイン等の刺激を抑制し、高血圧を予防する
出典:岐阜大学「L-テアニンの睡眠改善効果の検討」
日本生物的精神医学会誌「1.緑茶成分テアニンの向精神作用について」
公益社団法人日本茶業中央会「茶の健康効果20選」
ビタミン
緑茶にはビタミンB12とビタミンDを除く全ての種類のビタミンが含まれています。
最も多く含まれているビタミンはビタミンCです。
緑茶の種類別によるビタミンC含有量は以下の通りです。
食品名 | 成分量(100あたりのmg) |
玉露 | 19 |
煎茶 | 6 |
釜炒り茶 | 4 |
番茶 | 3 |
出典: 日本食品標準成分表2015年版(七訂)「16 し好飲料類」
緑茶に含まれるビタミンの種類と効果は以下の通りです。
- ビタミンC:抗酸化作用や美肌効果がある。お茶のビタミンCは熱に強く壊れにくい
- βカロチン:ビタミンAの前駆体。夜盲症の予防や美肌効果などがある
- ビタミンE:強い抗酸化作用を発揮、老化予防や血流の改善、美肌効果がある
- 葉酸:ビタミンB12と同様に貧血予防の効果がある
通常ビタミンCは、水に溶けやすく熱に弱い性質を持っています。
しかし、お茶に含まれるビタミンCは熱に強く壊れにくい性質を持っています。
製茶過程で、高温の蒸気によって蒸されることで、ビタミンCの酸化酵素を失活させるからです。
また、お茶に含まれるカテキンもビタミンCの失活を防ぐ役割があります。
なお紅茶にビタミンCは含まれません。
私たちの体は食べたものによって作られます。最近、体調が思わしくない、または健康診断の検査結果が良くなかったなど、不安を抱えていませんか。日々の食事内容を見直し、自分の体に必要な栄養素について理解していくことで、さらに充実した毎日を送[…]
ミネラル
緑茶にはさまざまなミネラルが豊富に含まれています。
最も多く含まれているのはカリウムです。
緑茶の種類別によるカリウム含有量は以下の通りです。
食品名 | 成分量(100あたりのmg) |
玉露 | 340 |
番茶 | 32 |
釜炒り茶 | 29 |
煎茶 | 27 |
出典: 日本食品標準成分表2015年版(七訂)「16 し好飲料類」
緑茶に含まれるミネラルの種類と効果は以下の通りです。
- カリウム:塩分を排出し血圧を安定させ、細胞内の浸透圧を安定させる効果がある
- カルシウム:丈夫な骨を作り、筋肉を収縮させる効果がある
- マグネシウム:エネルギー代謝の活性化、便通改善の効果がある
ミネラルは、体にとって重要な役割を担っている五大栄養素の1つになります。ミネラルには、どのような特徴や効果があるのでしょうか?ミネラルは、どのような食品に含まれているのでしょうか?本記事では、ミネラルについて以下の点を中[…]
スポンサーリンク
緑茶の健康効果
上述の通り、緑茶には様々な健康効果があります。
緑茶を摂取すると以下の効果が得られます。
コレステロールの低下
緑茶はカテキンを多く含む飲料水です。
カテキンの内、ガレート型カテキンはコレステロールを低下させる働きがあります。
カテキンは総コレステロール、LDLコレステロールが低下するという報告があります。
また、コレステロール以外に中性脂肪上昇の抑制、体脂肪軽減などの効果があります。
コレステロールや中性脂肪の低下は糖尿病など生活習慣病の予防に役立ちます。
出典:日本生物工学会「緑茶カテキン(ガレート型カテキン)の機能性研究と特定保健用食品の開発」
ダイエット効果
緑茶はダイエット効果につながる成分を豊富に含んでいます。
具体的な成分と効果は以下の通りです。
- カテキン:先述の通りコレステロールなど脂肪分を減らす働きがある
- カリウム:ナトリウムと一緒に水分を排出しむくみ予防の効果がある
- カフェイン:交感神経に働き、基礎代謝を高める、利尿作用によるむくみ予防
風邪予防
緑茶に含まれるカテキンは抗菌・殺菌作用があります。
カテキンは細菌の細胞膜を破壊し、殺菌する作用があります。
また、毒素を産生する細菌に対し、毒素を無効化する作用があります。
具体的なカテキンの抗菌・殺菌作用は以下の通りです。
- 虫歯予防:細菌の増殖抑制、う蝕の原因となる酸産生活性を抑制する
- 食中毒予防:腸管出血性O157に対し殺菌効果と、産生されるベロ毒素を無毒化する
- 口臭予防:口臭の原因となる細菌性歯垢付着の防止
- 風邪予防:ウイルスの粘膜吸着、増殖、放出を抑制する
出典:日本カテキン学会「抗菌・殺菌作用」
東北大学「緑茶カテキンは口腔レンサ球菌の酸産生を抑制する」
歯薬療法「茶カテキンによる口臭および歯垢への影響」
美肌効果
緑茶に含まれるカテキンは紫外線などの刺激から細胞を守る抗酸化作用があります。
また、緑茶に含まれるビタミンCやビタミンEは同様に抗酸化作用があります。
カテキンやビタミンC、ビタミンEによる抗酸化作用は体内で以下の効果を発揮します。
- 生活習慣病予防:活性酸素を抑え動脈硬化や老化を予防する
- 美肌効果:シミやたるみの原因となるメラニン増加やコラーゲン破壊などを抑える
- 発毛・育毛効果:毛髪の老化を抑制し、発毛・育毛効果を発揮する
出典:静岡県立大学食品栄養科学部「お茶の効能」
覚醒作用
緑茶に含まれるカフェインは覚醒を高める作用があります。
体内で産生されるアデノシンは覚醒作用のあるヒスタミンを抑え、眠気を催します。
カフェインはアデノシンの結合を阻害し、ヒスタミンの放出が抑制されなくなります。
結果、眠気を感じにくくなります。
カフェインの血中濃度は摂取後30分~2時間で最大になるとの報告があります。
出典:国立精神・神経医療研究センター「カフェインと睡眠」
リラックス効果
緑茶に含まれるテアニンは心身を安定させ、リラックスさせる効果があります。
テアニンは興奮系神経である交感神経の働きを抑制させる効果があります。
結果、副交感神経の働きが促進し、睡眠の質向上につながります。
また、テアニンは脳波に影響を与え、α波を出現させる効果があります。
α波はリラックスした時に出現する脳波です。
テアニンを摂取すると40分~2時間α波が持続するとの報告があります。
出典:日本農芸化学会誌「L-テアニンのヒトの脳波に及ぼす影響」
タンパク質について筋肉づくりや維持の為に、タンパク質を凝縮したプロテインを摂取する方も多いでしょう。しかし、タンパク質の特徴や過不足などを知らないと、健康のためのタンパク質摂取が逆効果になってしまうことがあることをご存じでしょうか。[…]
緑茶はがん予防にも効果がある?
緑茶に含まれるカテキンはがん予防の効果の可能性があります。
緑茶を5杯以上飲む女性は1杯未満より21%胃がんリスクが低下するとの報告があります。
また緑茶に含まれるカテキンは腫瘍に対する免疫を高めるとの報告があります。
しかし、緑茶によりわずかにがんリスクが上昇するという報告もあります。
また、緑茶が原因で胃腸障害や不眠など有害作用が生じる場合があります。
現在のところ、緑茶はがん予防にどのように影響を及ぼしているかは不明です。
今後の研究結果でがん予防につながる発表が出されることを期待します。
出典:埼玉県立がんセンター「緑茶カテキンによるがん予防、および転移抑制機構の物理学的・分子生物学的解析」
スポンサーリンク
緑茶の飲み過ぎによるデメリット
様々な効用を発揮する緑茶ですが飲みすぎに注意が必要です。
緑茶に含まれるカフェインを過剰摂取すると様々な有害作用が生じる場合があります。
カフェインの過剰摂取
カフェインの過剰摂取による急性作用は以下の通りです。
めまい | 心拍数増加 | 興奮 | 不安 |
震え | 不眠症 | 下痢 | 吐き気 |
また、カフェインの過剰摂取による長期的な影響は以下の通りです。
- 肝機能低下
- 骨粗しょう症
- 高血圧
出典:食品安全委員会「食品中のカフェイン」
カフェインによる利尿作用
緑茶には、カフェインが含まれており、カフェインには利尿作用があります。
カフェインは、腎臓の血管を拡張させるため、尿の生成量を増やし、尿の頻度や量が増加します。
暖かい緑茶や紅茶を飲む機会が多い冬に、頻尿に悩まれている方は、緑茶やお茶に気を付けてみましょう。
上記のカフェインの利尿作用に加え、体が冷えると血管が収縮します。
血管に対する血液量の増加に対応するため、体が排尿を指示します。
これによって、冬場に緑茶やお茶を摂取すると、利尿作用が強く働きます。
カフェインを多く含む緑茶やお茶は、水分補給に向かないとよく言われています。
これは、カフェインが脱水症状を引き起こすためです。
しかし、脱水症状を避けるために、水分補給を我慢すると、血液量の減少につながり、最終的に腎臓の機能の一時低下につながる恐れがあります。
利尿作用を抑えるためには、カフェイン量の少ないお茶やノンカフェインである麦茶やルイボスティーに置き換えてみましょう。
また、カフェインは高温のお湯に溶けやすい性質を持ちます。
そのため、お茶を入れる温度を60℃ほどのぬるま湯に変えてみるとよいでしょう。
冷え性の方は、緑茶やお茶の利尿作用に特に気を付ける必要があります。
排尿時に体の熱が奪われるため、お茶を飲むと体が冷えてしまいます。
トイレで夜中に起きてしまう方は、利尿作用のある緑茶などのお茶の就寝前摂取を控えましょう。
一日の摂取目安量
緑茶の1日の摂取目安量は上記カフェイン量を考慮する必要があります。
カフェインの1日の摂取上限は400mg、1度の摂取量は200mgまでとの報告があります。
煎茶100ml内にカフェインが20mg含まれています。
煎茶の場合、200mlであれば1日に約10杯程度を上限に摂取することができます。
ペットボトルの緑茶でも効果は期待できる?
近年、緑茶を携行用としてペットボトルから摂取する方が多いです。
茶系飲料の内、緑茶は年間約300万kl消費され、茶系飲料全体の約47%を占めます。
ペットボトルの緑茶は茶葉の抽出液(茶葉抽出液)と比較し栄養成分の量が異なります。
具体的には以下の通りです。
成分 | 茶葉抽出液に対するペットボトルの緑茶の割合(倍) |
テアニン | 0.34 |
タンニン | 0.45 |
カフェイン | 0.41 |
ビタミンC | 2.7 |
出典:京都光華女子大学短期大学部研究紀要「ペットボトル緑茶のカテキン、カフェイン、テアニ ン含量」
ペットボトルの緑茶は茶葉抽出液と比較し、テアニンやタンニンが少ないです。
結果、旨味や渋味成分、健康的な栄養成分が少なくなります。
一方、ビタミンCはペットボトルの緑茶に多い結果となります。
理由としてお茶に酸化防止剤(L-アスコルビン酸カルシウム)が混入されているためです。
L-アスコルビン酸カルシウムは添加物として安全性が保障されたビタミンCです。
また、ペットボトル緑茶は茶葉抽出液と比較し、カフェインの量が少ないです。
結果、ペットボトルの緑茶はカフェインの過剰摂取のリスクが少ないことが考えられます。
出典:厚生労働省「添加物評価書L-アスコルビン酸カルシウム」
緑茶の種類
緑茶は茶葉の育て方や仕上げの製法の違いにより様々な種類に分かれます。
具体的には以下の種類です。
抹茶
光を遮って(被覆)育てた茶葉を蒸して乾燥させ、石臼などで挽いて粉末にした緑茶。
鮮やかな緑色が特徴で、甘味や旨味を強く感じます。
玉露
抹茶と同様、一定期間茶葉を被覆させ、育てた緑茶。
光を遮ることでテアニンの成分が多く、旨味を強く感じます。
煎茶と比較し被覆などの手間がかかるため、相対的に高値で取引されます。
煎茶
摘んだ茶葉を蒸して揉みながら乾燥させて作る緑茶。
深く蒸した茶葉は緑色が濃くあらわれます。
旨味や渋味、苦味などバランスよく整えられています。
ほうじ茶
煎茶や番茶を強火で焙煎し、香ばしさを引き立たせた緑茶。
焙煎の過程でカフェインが昇華されるため、苦みが少ない特徴があります。
玄米茶
煎茶や番茶に炒ったお米を同じ割合でブレンドした緑茶。
玄米の香ばしい香りが特徴です。
また、お茶の葉の総量が少なくなるためカフェイン量も少なくなります。
番茶
新茶以外の成熟した茶葉を用いた緑茶。
テアニンやカフェインが少ないため、旨味や苦味は少なく飲みやすい特徴があります。
スポンサーリンク
緑茶の飲用頻度
緑茶の飲用方法は茶葉から入れる、ティーバックで抽出するなど様々です。
最も多い飲用方法はペットボトルや紙パック(緑茶飲料)で全体の約62%を占めます。
次いで茶葉から入れる方法で全体の約55%を占めます。
一方、全く緑茶を飲まない方は約13%いるという結果があります。
飲用頻度を比較した結果、茶葉から入れる方は約65%毎日飲むと回答していました。
理由としてお茶を入れることが習慣になっている方が約59%でした。
一方、緑茶飲料で毎日飲むと回答した方は約26%と低い結果になりました。
出典:農林水産省「緑茶の飲用に関する意識・意向調査結果」
スポンサーリンク
緑茶の効果まとめ
ここまで緑茶の効果についてお伝えしてきました。
緑茶の効果の要点をまとめると以下の通りです。
- 緑茶の健康効果は風邪予防やダイエット効果、美肌効果などがある
- 緑茶はがん予防に一定の効果があると考えられているが不明な点もある
- 緑茶を飲みすぎるとカフェインの過剰摂取になり、不眠症などの原因になる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。