心電図検査は心臓の動きを波形として記録する検査です。
心電図検査によって心臓の状態を調べられます。
そもそも心電図検査の結果はどのように見たらいいのでしょうか?
また、異常が出た場合はどうしたらいいのでしょうか?
本記事では健康診断の心電図でわかることについて以下の点を中心にご紹介します。
- 心電図の判定結果ごとの対応は
- 心電図検査で異常が出た場合は
- 心電図検査のやり方と痛みは
健康診断の心電図について理解するためにも参考にしていただければ幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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健康診断とは
健康診断とは、さまざまな病気の早期発見・早期治療、病気の予防を目的とした検査です。
企業に実施が義務付けられている健康診断は以下の2種類です。
- 一般健康診断
- 特殊健康診断
また、健康診断は主に5つの種類に分けられています。
- 一般健康診断
- 雇入時の健康診断
- 定期健康診断
- 特定業務従事者の健康診断
- 海外派遣労働者の健康診断
上記以外にも、給食従業員の検便というのもあります。
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健康診断の心電図検査でわかること
健康診断の心電図検査でわかることとは何でしょうか?
心電図検査の役割や心電図検査でわかることを紹介します。
心電図検査の役割
心電図検査は、心臓の電気的活動を検出し、波形として記録します。
心電図の変化には、発症からの経過時間や伝導障害の有無などが関係しています。
そのため、波形を見ることで病気の早期発見、予防が可能です。
特に虚血性心疾患の診断では、心電図検査がメインとして使われます。
心電図検査だけで病気を判断するのは難しいですが、すぐに検査できるのが利点です。
小学生〜大学生には心電図検査がありますが、年齢によって心電図検査をしない場合もあります。
また、35歳未満、36〜39歳の方は、医師が必要でないと認めるときに心電図検査を省略できます。
心電図検査によってわかる病気
健康診断の心電図検査では、以下の病気がわかります。
- 不整脈
- 狭心症
- 心筋梗塞などの虚血性心疾患
- 心臓の肥大や拡大など
ただし、心電図検査は検査時の心臓の状態を調べます。
そのため、たまたま検査時に異常がなかっただけという可能性も十分にあるのです。
心電図検査で異常がなくても、自覚症状がある場合は、医師にしっかりと伝えましょう。
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健康診断の心電図検査の結果の見方
健康診断で心電図検査の結果を見ても、よくわからないことがほとんどでしょう。
心電図検査の結果の見方を紹介します。
異常Q波
心電図波形は、以下の3つの波形で構成されています。
- Q波
- R波
- S波
異常Q波とは、Q波が著しく大きくなる状態です。
異常Q波が認められた場合は、心筋梗塞や心筋症などの疾患の可能性があります。
しかし、健常者でも異常Q波が見られる場合もあり、必ずしも心筋梗塞や心筋症というわけではありません。
右軸偏位
右軸偏位は、心臓を収縮宿させる電気の流れが右に偏っている状態です。
右室肥大や心臓病、重症の肺疾患により、心臓に負担がかかるときに認められます。
しかし、小児では一般的に見られ、やせ型の健常者にも見られることがあります。
そのため、右軸偏位だけではさほど問題になりません。
左軸偏位
左軸偏位は右軸偏位と反対に、電気の流れが左に偏っている状態です。
左軸偏位が見られるときは、左心室肥大や刺激伝導系の問題の場合があります。
しかし、左軸偏位は高齢者や肥満者にも見られる所見のため、左軸偏位だけではあまり問題視されません。
ST低下
ST低下は、心電図波形でST部が通常より下がった状態です。
ST低下は、心臓肥大や狭心症、貧血や電解質異常のときに見られます。
しかし、ST低下は軽微正常〜極高度まであります。
程度によっては20代の若い痩せ型の女性にも見られる所見のため、あまり重要性はありません。
ただし、胸痛など自覚症状がある場合は、すぐに医師に相談しましょう。
ST上昇
ST上昇は、心電図波形でST部が通常より上がった状態です。
ST上昇は、急性心筋梗塞や冠攣縮性狭心症、心筋梗塞後心室瘤などで見られます。
しかしST低下同様、特に問題ないものからすぐ受診した方がいいものまでさまざまです。
自覚症状がある場合は放置せずに、すぐに医師に相談しましょう。
陰性T波
陰性T波とは、通常山型であるT波が、谷型のようにへこんだ状態です。
陰性T波は、高血圧や心筋症による心肥大や虚血性心疾患、心筋梗塞などの可能性があります。
また、症状は軽度の異常〜高度の異常まで存在します。
健常者にも見られることがあるため、原因を突き止めるには循環器科での精密検査が必要です。
洞性徐脈
洞性徐脈とは、安静時の心電図で脈が50回/分未満の状態です。
健常者でもよく見られ、習慣的にスポーツをしている方はしばしば洞性徐脈と診断されることがあります。
また、マラソンなど持久力が必要な競技者は、洞性徐脈が現れることもあります。
理由は、通常より大きく肥大したスポーツ心臓のためです。
スポーツ心臓の場合、競技に対応すべく体が変化した結果のため、健康上の問題はありません。
上室性期外収縮
上室性期外収縮とは、心房や房室接合部(上室)で、洞結節より早く心臓の拍動が指令されている不整脈です。
脈硬化や加齢、心不全などで見られることが多くあります。
また、緊張やストレスなどでも上室性期外収縮が見られる場合もあります。
動悸や不快感を強く感じる場合は、早めに医師に相談しましょう。
心室性期外収縮
心室性期外収縮とは、心室から心臓収縮の指示が送られ、心拍のリズムが狂うことによる不整脈です。
健康な方の場合、興奮やストレスなどで見られる場合があります。
しかし、心疾患を持つ場合は早期の検査が必要です。
心房細動
心房細動とは、1分間に250回程度心拍が生じており、けいれんを起こしている状態です。
心房細動は、弁膜症や心筋症、甲状腺機能亢進症などで見られることがあります。
また脈が乱れることにより正常に血液が流れず、動悸や息切れなどの症状が認められることもあります。
頻繁に心房細動が起こる場合は心臓に負担がかかるため、精密検査を受けましょう。
不完全右脚ブロック・完全右脚ブロック
不完全右脚ブロックは、心室内の右脚の流れが障害され伝導遅延が起きている状態です。
しかし、伝導時間は正常範囲内に保たれているため、所見だけではさほど問題になりません。
一方、完全右脚ブロックは、電気の流れがストップします。
心室内に3本ある刺激伝達路のうち、右1本に障害が起きた状態です。
基礎疾患がない場合、電気の流れは左脚を通り伝わるため、さほど問題になりません。
QSパターン
QSパターンとは、本来存在する山型のR波が消失している状態です。
心筋に障害があったり、過去に心筋梗塞を起こしたりしている場合に見られます。
左脚前枝ブロック
左脚前枝ブロックは、左脚の伝導路のうち前枝の1本が障害されている状態です。
特に問題がない場合も少なくありませんが、心筋の病気が疑われることもあり、注意が必要です。
左脚後枝ブロック
左脚後枝ブロックは、左脚の伝導路のうち後枝の1本が障害されている状態です。
特に問題がない場合も少なくありません。
しかし、虚血性心疾患や弁膜症、狭心症などの症状が現われることもあり、注意が必要です。
左室肥大
左室肥大は、左心室の周りの筋肉が厚くなる症状です。
左室肥大が認められる場合、不整脈や狭心症の恐れがあります。
自覚症状がなくても突然死のリスクが潜んでいるため、放置せず検査を受けましょう。
洞性頻脈
洞性頻脈とは、脈が早い状態のことです。
心臓は洞結節からのリズムで動き、一定の頻度を保って電気信号を送っています。
しかし、交感神経と副交感神経の影響を受けると脈拍の速さが変わります。
特に交感神経が優位になると脈は速くなるのです。
Ⅰ度房室ブロック
Ⅰ度房室ブロックは、心房から心室への電気の流れに不具合が生じている状態です。
健常者にも見られることもあります。
しかし、以下の症状がある場合は、早期に医師に相談しましょう。
- 極端に電動時間が長い
- 失神、めまいなど自覚症状がある
WPW症候群
WPW症候群は、心房心室伝導時間が短くなっている状態です。
WPW症候群は、自覚症状や頻拍発作がなければ問題はありません。
しかし、以下のような重い自覚症状がある場合は医師に相談しましょう。
- 頻拍発作が日常生活を困難にする
- 失神する
低電位
低電位とは、心臓の周りや胸壁に脂肪があり、電位が低くなっている状態です。
心電図波形では、Q波・R波・S波の高さが、通常より低い状態で現れます。
肺気腫や体内の水分貯留、肥満の方に見られます。
健康診断の心電図の判定結果ごとの対応
A判定やB判定など、心電図の検査結果はアルファベットで表記されます。
健康診断の心電図の判定結果ごとに、どのように対応すればいいのか紹介します。
A判定
心電図結果がA判定の場合、現時点で異常はありません。
正常範囲内の数値であり、今後も定期的な健康診断を受けましょう。
B判定
心電図結果がB判定の場合、軽度異常はあるものの、日常生活に支障はありません。
1年に1回の健康診断を受け、特に変化がなければ問題ないでしょう。
しかし気になる自覚症状がある場合は、医師に相談することで改善できる可能性があります。
C判定
心電図結果がC判定の場合、異常があり再検査、または経過観察を必要とします。
生活習慣を見直し、次回の健康診断で様子を見ましょう。
また再検査の指示があれば、速やかに検査を受けてください。
D判定
心電図結果がC判定の場合、精密検査、または治療が必要です。
速やかに病院を訪れ、精密検査を受けましょう。
健康診断の心電図検査で異常が出た場合
健康診断の心電図検査で異常が出た場合、運動負荷心電図やホルター心電図などの精密検査をします。
運動負荷心電図は、運動により心臓に負荷をかけたときの、心電図変化を見る検査です。
以下の運動をし、心電図のデータを取ります。
- 2段の階段を昇り降りするマスターの2階段昇降試験
- ベルトコンベアの上を歩く
- 固定式自転車で運動負荷をかける
運動負荷心電図は、労作性狭心症や運動誘発性不整脈の診断などの評価に用いられるのが特徴です。
また、ホルター心電図は、24時間心電図を記録する検査方法です。
複数の電極を胸部につけ、腰につけた記録装置にデータを送る方法が一般的です。
健康診断の心電図検査では、検査したときの心電図しかデータが取れません。
しかしホルター心電図は24時間のデータが取れ、病的所見を見逃す確率が下がるのが特徴です。
健康診断の心電図検査のやり方と痛み
健康診断の心電図検査は、12誘導心電図検査と呼ばれます。
電極を体に貼りつけて心臓の様子を見ていきます。
電極を貼りつけるのは、胸に6ヵ所、両手首と両足首にそれぞれ1ヵ所です。
検査時はベッドに仰向けになり、胸や手首、足首の素肌が見えるように服や下着をずらします。
ストッキングやタイツ、靴下も脱ぐ必要があります。
そのため、心電図検査のときは胸や手首、足首を出しやすい服装にしましょう。
女性の場合は、ブラジャーではなくブラトップやスポーツブラで行くのがおすすめです。
また、腕時計やネックレス、ピアスは外す必要はなく、タトゥーがあっても問題ありません。
心電図検査は、心臓から発生する電気を機械が受け取り記録する検査です。
電流を流したり刺激を与えたりするわけではありません。
そのため、痛みはなくベッドで2〜3分程度横になっていれば検査は終わります。
ただし、痛みはないものの電極を貼り付けた跡が残ることもあります。
健康診断の心電図のまとめ
ここまで健康診断の心電図検査についてお伝えしてきました。
健康診断の心電図検査の要点をまとめると以下の通りです。
- 心電図の判定結果がC判定・D判定だった場合は再検査や精密検査が必要
- 心電図検査で異常が出た場合は、運動負荷心電図やホルター心電図などの精密検査をする
- 心電図検査は、体に電極を貼りつけて行い、痛みは全くない
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。