ウイルス性胃腸炎は、ウイルスの動きが活発になる秋から冬にかけて流行のピークをむかえる、感染性胃腸炎の一種です。
複数の感染経路を持つため感染力が強く、子どもから大人まで容易に感染するリスクがある身近な病気として知られています。
なかには、「ウイルス性胃腸炎の原因は?」「具体的な症状や治療方法が知りたい」と感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ウイルス性胃腸炎について以下の点を中心に詳しく解説します。
- ウイルス性胃腸炎の原因ウイルス
- ウイルス性胃腸炎の症状と治療方法
- ウイルス性胃腸炎を予防する方法
ウイルス性胃腸炎にご興味のある方はご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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ウイルス性胃腸炎とは
まず、ウイルス性胃腸炎について解説します。
ウイルス性胃腸炎とは、ウイルス感染が原因で発生する胃腸炎の総称です。
ノロウイルスやアデノウイルスなどの主要なウイルスが胃腸に入り込むと、刺激を受けた胃腸が異常に働き、下痢や嘔吐といった症状が現れる可能性があります。
また、感染者の咳やくしゃみによる飛沫感染や、ウイルスが付着した食品摂取による経口感染など、感染経路が多いのも特徴の1つです。
ウイルス性胃腸炎の症状は通常3日~1週間程度で治まりますが、その後最大4週間は排泄物を介して感染を広げるリスクがあります。
ウイルス性胃腸炎が流行する冬場には、感染予防はもちろん、感染後の二次感染対策を徹底しましょう。
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ウイルス性胃腸炎の主な原因となるウイルス
次に、ウイルス性胃腸炎の主な原因とされるウイルスについて、以下の3つをご紹介します。
- ノロウイルス
- ロタウイルス
- アデノウイルス
感染性胃腸炎には、ウイルス感染によるものと細菌感染によるものがありますが、冬季の感染のほとんどがウイルスが原因です。
気温が低く空気が乾燥する冬場はウイルスが活性化するため、普段より丁寧に感染予防を行いましょう。
①ノロウイルス
ウイルス性胃腸炎の主な原因となるウイルスの1つ目は「ノロウイルス」です。
ノロウイルスが原因の感染症は1年をとおして発生していますが、ウイルスが生存しやすい環境となる冬場は、とくに感染リスクが高まります。
なお、大人のウイルス性胃腸炎のほとんどは、ノロウイルスが原因によるものともいわれています。
口からウイルスが侵入する経口感染が最も多いとされているため、口に入れる食品の管理や手洗い消毒による殺菌を徹底しましょう。
②ロタウイルス
2つ目は「ロタウイルス」です。
ロタウイルスの感染力は非常に強く、たった10〜100個程度のウイルスが体内に侵入するだけで感染が成立します。
さらに、ほかの原因ウイルスと比較すると症状が重くなる傾向があり、とくに乳幼児が感染した場合は、重度の脱水状態に陥ることも。
また、嘔吐や下痢などの症状に加えて、黄色またはクリーム色の便が現れるのも特徴です。
大人が感染した場合は症状が現れないケースも多いため、ロタウイルスが流行する冬季には、感染の拡大防止を意識して行動しましょう。
③アデノウイルス
3つ目は「アデノウイルス」です。
アデノウイルスは、腸だけでなく呼吸器や目、泌尿器などにも感染症をもたらす可能性があります。
また、アデノウイルスには多くの型があるため、一度感染しても免疫がつきにくく何度も感染する恐れも。
ほかの原因ウイルスと比較して潜伏期間が2〜10日と長いため、無自覚のまま感染を拡大させるリスクが最も高いといえます。
アデノウイルスが流行をむかえる時季には、マスクの着用や手洗いなどで、感染予防と二次感染予防の両面からアプローチしましょう。
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ウイルス性胃腸炎は食べ物が原因?
ここでは、ウイルス性胃腸炎と食べ物の関係について解説します。
ウイルス性胃腸炎の感染経路はさまざまですが、以下の食品摂取によって直接的に感染するケースもあります。
- カキなどの二枚貝
- 加熱不十分な魚介類
- ウイルスに汚染された飲料水
ウイルスの完全な洗浄が難しい二枚貝、お寿司やお刺身などの加熱されていない魚介類は日常的に摂取する機会が多いため、とくに注意が必要です。
また、ウイルスが活発になる冬場には、汚染された飲料水や消費期限切れの食品による感染リスクも高くなります。
食材の洗浄や十分な加熱処理はもちろん、消費期限もこまめにチェックして食べ物からの感染を防ぎましょう。
ウイルス性胃腸炎の症状
次に、ウイルス性胃腸炎の主な症状について解説します。
ウイルス性胃腸炎の症状は原因ウイルスによって異なりますが、以下の症状は共通して現れるケースが多いとされています。
- 腹痛や下痢
- 嘔吐や吐き気
- 発熱
ウイルスの侵入によって胃腸が炎症を起こすため、下痢や嘔吐など消化器官に直結する症状が現れる場合がほとんどです。
また、免疫力の低い幼児や高齢者が感染した場合、頻繁な下痢や嘔吐による脱水症状のリスクも高まります。
原因ウイルスや感染者の年齢によっては症状がまったく現れないケースもあり、無自覚のうちに感染を拡大させてしまうことも。
ウイルスが流行する冬場には予防を徹底し、体調の変化があれば医療機関の受診を検討しましょう。
ウイルス性胃腸炎の治療方法
ウイルス性胃腸炎の治療方法について、以下の3つをご紹介します。
- 薬物療法
- 食餌療法
- 十分な水分補給
ウイルス性胃腸炎に効く特効薬はないため、症状を和らげる対症療法や免疫力を高めるための食餌療法が基本となります。
治療は医師の判断に基づいて行われるため、感染の疑いがある場合は速やかに医療機関を受診してください。
①薬物療法
ウイルス性胃腸炎の治療方法1つ目は「薬物療法」です。
ウイルスを直接的に攻撃する薬は存在しないため、下痢や嘔吐などの症状を和らげる目的で薬が処方されます。
そのため、症状が軽度な場合は、食餌療法のみで回復を待つケースも珍しくありません。
ただし、下痢や嘔吐などによって脱水症状が引き起こされている場合には、点滴や入院を伴う全身管理が行われることも。
なお、市販の下痢止めや吐き気止めはウイルスを体外へ排出する動きを弱めてしまうため、自己判断での服用は控えましょう。
②食餌療法
2つ目は「食餌療法」です。
ウイルス性胃腸炎に感染すると、胃腸が炎症を起こして異常に働いてしまうため、断食や刺激の少ない食事で胃腸を休める必要があります。
下痢や吐き気の症状が治まり食事をとれるようになった際は、おかゆやすり野菜のスープなど、柔らかく消化によい食事から始めましょう。
なお、急激な塩分や糖分の摂取は胃腸に負担をかけてしまうため、あっさりとした味付けがおすすめです。
③十分な水分補給
3つ目は「十分な水分補給」です。
下痢や嘔吐による脱水症状を防ぐため、こまめに水分補給を行いましょう。
ただし、胃腸が刺激された反動で吐き気や下痢がひどくなるケースもあるので、無理に水を飲むことはおすすめできません。
脱水症状を防ぐ方法として、1回5cc(スプーン1杯程度)の量を10~15分間隔で補給するのが目安です。
まずは、少量の水分補給をこまめに行い、OS-1などの電解質を含んだ経口補水液で徐々に栄養を補給していきましょう。
ウイルス性胃腸炎を早く治す方法は?
次に、ウイルス性胃腸炎を早く治す方法について解説します。
ウイルス性胃腸炎の早期回復には、十分な休息と水分/栄養補給が有効とされます。
軽度のウイルス性胃腸炎であれば、胃腸を休めるだけで回復する場合もあるため、自己判断での薬の服用や無理な食事を控えて安静にしましょう。
また、十分な水分補給は脱水症状の予防のみならず、ウイルスを体外へ排出する働きを促してくれます。
ただし、水分だけでは回復に必要な栄養は得られないため、経口補水液や消化によい食事などで少しずつ塩分と糖分も摂取するとよいでしょう。
無理な治療をせず、ゆっくりと休んで回復を待つことが早期回復につながります。
ウイルス性胃腸炎が治ったサインは?
ここでは、ウイルス性胃腸炎が治ったサインについて解説します。
一般的に、下痢や嘔吐などの症状が治まり全身の状態が良好になった場合、ウイルス性胃腸炎は治ったとみなされます。
また、ウイルス性胃腸炎に感染するとおならの臭いが強くなるため、臭いの薄いおならへ変化してきたら症状は改善しているといえるでしょう。
自己判断による登園や出勤に不安を感じる場合は、医療機関を受診することで正確な結果を把握できます。
なお、症状が治まってから最大4週間は便からウイルスが排出されるため、日常生活に戻る際は感染を拡大させない意識を持ちましょう。
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ウイルス性胃腸炎がうつらない人の特徴は?
次に、ウイルス性胃腸炎に感染しづらい人の特徴について、以下の2つをご紹介します。
- 健康で免疫力が高い
- 衛生管理を徹底している
ウイルス性胃腸炎の感染力は強いものの、免疫力が高い人や手洗いなどの衛生習慣がある人は、感染を免れることも。
感染経路が多いからこそ、日々の健康管理や衛生管理を意識することが大切です。
①健康で免疫力が高い
ウイルス性胃腸炎がうつらない人の特徴1つ目は「健康で免疫力が高いこと」です。
免疫力が高ければ体内に入ったウイルスを自力で攻撃できるため、感染が発生しない、または、症状が軽度で治まります。
ただし、免疫力を短期間で高めることは難しいため、普段から規則正しい生活や健康的な食事を心がける必要があります。
とくに、ヨーグルトやチーズ、納豆やキムチなど、腸内の善玉菌を増やす食品は免疫力アップに効果的とされます。
②衛生管理を徹底している
2つ目は「衛生管理を徹底していること」です。
ウイルス性胃腸炎の感染は、手や口を媒体とするケースが多いため、手洗いうがいの習慣がある場合は必然的に感染リスクも低くなります。
また、こまめな換気や部屋の掃除などを日常的に行うことで、空気感染や接触感染のリスクも軽減できます。
帰宅後やトイレ使用後の手洗い、定期的な清掃などの基本的な衛生管理を習慣化し、ウイルスに感染しづらい環境を整えましょう。
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ウイルス性胃腸炎の予防方法
ウイルス性胃腸炎の予防方法について、以下の4つをご紹介します。
- こまめに手洗いを行う
- 排泄物や嘔吐物を適切に処理する
- 消毒殺菌をこまめに行う
- 食材や調理器具を適切に扱う
冬場だけでなく日常的に感染予防を意識することは、あらゆる感染症対策につながります。
ウイルス性胃腸炎が流行する冬に備えて、感染予防を習慣化していきましょう。
①こまめに手洗いを行う
ウイルス性胃腸炎の予防方法1つ目は「こまめに手洗いを行うこと」です。
ウイルス性胃腸炎は手指を介して発生するケースが多いため、こまめな手洗いでウイルスを洗い流すと効果的とされます。
調理前やトイレの使用後、帰宅後など、手洗いのタイミングを定めておくと習慣化しやすいでしょう。
なお、ウイルス性胃腸炎の原因ウイルスは、アルコール消毒だけでは死滅しないため、石鹸と流水での手洗いが必要です。
②排泄物や嘔吐物を適切に処理する
2つ目は「排泄物や嘔吐物を適切に処理すること」です。
排泄物や嘔吐物を処理する際は、すばやい処理と細部の消毒を意識しましょう。
排泄物や嘔吐物に含まれるウイルスは、乾燥するとホコリと一緒に舞い上がり、空気感染の原因となるためです。
また、床や壁などを丁寧に消毒することで、接触感染のリスクも下げられます。
排泄物や嘔吐物を処理する際はゴム手袋を着用し、処理後には流水と石鹸で丁寧に手洗いを行いましょう。
③消毒殺菌をこまめに行う
3つ目は「消毒殺菌をこまめに行うこと」です。
ドアノブやテーブル、水道の蛇口など、普段から触れる機会の多い場所は何度も入念に消毒しましょう。
また、食器やおもちゃなど複数人で使用する可能性があるものも定期的に消毒しておくと安心でしょう。
ウイルス性胃腸炎の原因ウイルスはアルコールへの耐性が強いため、消毒には次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)を使用しましょう。
なお、次亜塩素酸ナトリウムは手荒れを引き起こす可能性もあるため、使用の際は必ずゴム手袋を着用してください。
④食材や調理器具を適切に扱う
4つ目は「食材や調理器具を適切に扱うこと」です。
カキなどの二枚貝や汚染の可能性がある飲料水などは、熱湯調理や煮沸を十分に行いウイルスを死滅させましょう。
また、野菜や果物にもなんらかの理由でウイルスが付着している可能性もあるため、必要に応じて洗浄や加熱処理を行うのがおすすめです。
ウイルス性胃腸炎の原因となり得る二枚貝や魚介類などはもちろん、そのほかの食材に使用した調理器具の洗浄と殺菌も徹底しましょう。
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ウイルス性胃腸炎の原因を理解して、感染リスクを下げよう
ここまで、ウイルス性胃腸炎についてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- ウイルス性胃腸炎の主な原因ウイルスは「ノロウイルス」「ロタウイルス」「アデノウイルス」で、いずれも強い感染力を持つ
- ウイルス性胃腸炎の主な症状は下痢や嘔吐などで、治療には症状を和らげる対症療法と水分/栄養補給によって回復を目指す食餌療法が用いられる
- ウイルス性胃腸炎の予防には、こまめな手洗い消毒や適切な食品管理、感染者の排泄物や嘔吐物を正しく処理することが有効とされる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。