※本記事は、香川県および厚生労働省の公式予算資料、公募要領、事務連絡等の一次情報(2026年1月時点)に基づき構成されています。
「健達ねっと」による情報提供であり、特定の制度利用を推奨するものではありません。
実際の申請にあたっては、必ず最新の行政通知をご確認ください。
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序論:2026年の危機に対する「香川モデル」の政策的応答

令和7年度から8年度にかけて、医療・介護現場を襲っているのは「コストの壁」と「労働力の壁」の二重苦です。
公定価格(報酬)によって収益構造が固定されているため、民間企業のようにコスト増を即座に価格転嫁できないことが、多くの事業所の経営基盤を浸食しています。
今回の「医療・介護等支援パッケージ」は、以下の3点を目的としています。
- 賃上げ(処遇改善): 他産業に負けない賃金水準の確保。
- 事業継続支援: 物価高騰下での赤字補填。
- 生産性向上: テクノロジー導入による省人化。
香川県では、全国一律の支援に加え、地域の物価動向や医療圏の実情に即した「独自の応援金」が上乗せされている点が大きな特徴です。
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医療分野:香川県内の医療機関・訪問看護への直接給付
医療分野への支援は、規模や機能によって「国が直接執行する病院支援」と「香川県が窓口となる診療所・訪問看護支援」に整理されます。
2.1 従事者の処遇改善および物価高騰対策給付
診療報酬改定(ベースアップ評価料)の効果を前倒しする観点から、届出を行っている(または見込みの)施設に対し、以下の一次金が支給されます。
| 施設区分 | 支援単位・金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 病院・有床診療所(5床以上) | 許可病床数 × 1.95万円 | 賃金分と物価分の合計(国が執行) |
| 無床診療所(医科・歯科) | 1施設あたり 32万円 | 賃金分15万円、物価分17万円 |
| 訪問看護ステーション | 1施設あたり 22.8万円 | 処遇改善の空白期間を埋める支援 |
救急対応病院に対しては、救急車受入件数等に応じ、500万円から最大 2億円 が加算される仕組みもあり、地域医療の「最後の砦」を死守する姿勢が鮮明です。
2.2 香川県独自の「食材価格高騰対策応援金」
香川県は、公定価格制度下で食材費の高騰を価格転嫁できない施設に対し、独自の補填を行っています。
- 医療施設等: 1床あたり 2,500円
- その他福祉施設: 利用者・定員1人あたり 15,000円
介護分野:最大月額1.9万円を狙う「三階建て」賃上げとICT
介護分野では、人材確保と業務効率化を「車の両輪」として進める、極めて戦略的な支援構造が導入されています。
3.1 賃上げ・職場環境改善支援(令和7年12月〜令和8年5月)
介護職員等に対し、以下の3つのレイヤーを積み上げることで、最大 月額1.9万円相当 の処遇改善を目指します。
【表1】介護職員賃上げ支援の積算構造(理論値)
| 支援の階層 | 支給額(月額相当) | 主な獲得要件 |
|---|---|---|
| 【1階】幅広い賃上げ支援 | 1.0万円 | 処遇改善加算の算定(または誓約) |
| 【2階】生産性向上上乗せ | +0.5万円 | ケアプランデータ連携システム 加入等 |
| 【3階】職場環境改善支援 | +0.4万円 | 業務の見える化、役割分担の明確化 |
「賃金を上げたければ、現場をデジタル化しなさい」という、行政からの強力なDX誘導策と言えるでしょう。
3.2 介護テクノロジー・ICT導入支援(香川県モデル)
香川県は、介護労働安定センター香川支部内に専門の相談窓口を設置し、初期投資を強力にバックアップしています。
- 補助率: 原則 3/4
- 補助上限額(目安):
- パッケージ導入(センサー+インカム+ソフト): 1,000万円
- 介護ソフト単体:職員数に応じ 100万〜250万円
- 業務改善支援(コンサルティング):最大 45万〜48万円
障害福祉分野:支援対象の拡大と「空白の解消」
障害福祉分野においても、他産業との賃金格差を是正するため、1人あたり月額 1.0万円相当 の賃上げ給付が実施されます。
4.1 計画相談支援等への対象拡大
今回のパッケージにおける最大の英断は、これまで加算の対象外であった「計画相談支援」「地域移行支援」「地域定着支援」などの従事者も、一定の要件を満たすことで対象に含まれた点です。
これにより、障害児者の地域生活を支えるネットワーク全体の底上げが図られています。
香川県内各市町による「独自の物価高騰対策」
県全体の施策を補完するため、各自治体が「施設単位」で独自の上乗せを行っています。
【表2】香川県内自治体の独自支援(事例)
| 自治体 | 事業名 | 支援金額・上限 | 申請締切(目安) |
|---|---|---|---|
| 高松市 | 医療・福祉施設等物価高騰対策支援金 | 2.5万 〜 36万円 | 令和8年2月28日 |
| 坂出市 | 医療機関等物価高騰対策支援給付金 | 最大36万円 | 令和7年11月28日 |
| 三豊市 | 介護・障害事業者等物価高騰対策支援金 | 5万 〜 35万円 | 令和7年12月12日 |
| 三木町 | 医療施設等物価高騰対策支援金 | 病院36万円+2,500円/床 | 令和7年6月30日 |
自治体によって締切が大きく異なるため、年内に締め切る地域がある一方、年度末まで受け付ける高松市のような例もあります。
自法人の所在地の広報を週次でチェックすることが、受給漏れを防ぐ唯一の道です。
主要な実施スケジュールと実務上の対応事項
支援パッケージを最大限に活用するために、経営層が把握すべきカレンダーを整理しました。
【表3】2026年度に向けた重要スケジュール
| 時期 | 予定されるイベント | 対応すべきこと |
|---|---|---|
| 2025年8月 | ICT導入支援 交付申請締切 | 導入計画の最終確定 |
| 2025年10月 〜 12月 | 医療従事者処遇改善給付金(第2回) | 申請書の作成・提出 |
| 2025年12月 〜 | 介護・障害賃上げ支援開始 | 月額1.0万〜1.9万円 の支給開始 |
| 2026年5月 | 賃上げ給付金 対象期間終了 | 令和8年度報酬改定への移行準備 |
6.1 事業者が留意すべき実務要件
- 処遇改善加算の算定(誓約): 賃上げ支援を受けるための「入場券」です。
- 生産性向上への参画: 月額0.5万円の上乗せを得るため、「ケアプランデータ連携システム」への加入準備を早急に進めてください。
- 職員への周知と実績報告: 本補助金は「公金」です。基本給や手当のどの項目でいくら改善したかを、職員に 書面等で周知 する義務があります。これを怠ると、返還命令の対象となるリスクがあります。
結論:持続可能な「香川モデル」の完成に向けて

令和7年度から8年度にかけての香川県における「医療・介護等支援パッケージ」は、短期的な危機の「止血(物価対策)」と、2040年を見据えた「体質改善(ICT・賃上げ)」のハイブリッド戦略です。
2026年、事業者の皆様には、単に補助金を受け取るだけでなく、これを契機として「経営のデジタル化」を完遂し、職員が誇りを持って働ける「高賃金・高能率」な職場へと脱皮することが求められています。
行政、自治体、そして現場が一体となり、この国家的な緊急措置を「香川の福祉の持続可能性」を確立するための第一歩としていきましょう。
- 厚生労働省:令和7年度補正予算 医療・介護等支援パッケージの全容
- 香川県:医療・福祉施設食材価格高騰対策応援金 事務連絡
- 高松市:医療・福祉施設等物価高騰対策支援金 実施要綱
- 香川県:令和7年度介護ロボット・ICT導入支援事業 公募案内
- 厚生労働省:介護保険最新情報 Vol.1448






