あらすじ
アメリカ・オハイオ州の高齢者介護施設。
そこに暮らす多くの人が認知症を患っていた。
スタッフのジョンは毎日、入居者たちに「僕の名前を覚えていますか?」とたずねるが、答えは返ってこない。
93歳のエブリンは認知症と診断されて2年。自分の名前も書けず、ジョンとの会話も噛み合わなかった。
そこで始まったのが、日本で開発された「学習療法」。
簡単な読み書きや計算を続けることで、エブリンに大きな変化が訪れる。趣味の編み物を再開し、笑顔が戻り、そしてついに「ジョン」と呼べる日が来た――。
特徴・見どころ
本作「僕がジョンと呼ばれるまで」は、一つのドキュメンタリー映画でありながら、介護や認知症ケアの現場に携わる人々に大きな衝撃と感動を与えた作品です。
日本の公文式が開発した「学習療法」という独自のアプローチが、遠く離れたアメリカの介護施設で実践される様子を丹念に追いかけています。
認知症の改善という、非常に困難とされる課題に対して、具体的な可能性を示した貴重な記録となっています。
日々の「できた」が呼び覚ます、失われた記憶
この映画が描き出すのは、魔法のような奇跡の治療法ではありません。
スタッフが利用者一人ひとりと向き合い、「読み書き」や「簡単な計算」といった学習を共に行う、地道な日々の積み重ねです。
「学習療法」の目的は、単に問題を解くことではなく、コミュニケーションを通じて脳を活性化させ、本人の自信や意欲を引き出すことにあります。
最初は無気力だったり、自分の名前さえ思い出せなかったりした高齢者たちが、少しずつ表情を取り戻していく姿は圧巻です。
自分の名前を思い出し、家族や友人の顔を認識できるようになる。
その瞬間は、ご本人にとっても、支える家族やスタッフにとっても、何物にも代えがたい深い感動を呼びます。
人間の尊厳と、脳が持つ底知れぬ可能性を強く感じさせられます。
「もう元には戻らない」という常識への挑戦
認知症、特にアルツハイマー型認知症の治療においては、「進行を遅らせる」ことが中心的な目標とされがちです。
しかし、このドキュメンタリーは「改善」の可能性さえも示唆してくれます。
もちろん、全ての人が劇的に回復するわけではありません。
それでも、学習療法というアプローチが、ご本人の「できる力」を信じ、尊厳を保ちながら前向きな変化を促すプロセスは、大きな希望となります。
もし認知症の初期症状に不安を感じている方や、ご家族の介護で悩んでいる方がいらっしゃれば、本作は新しい視点を与えてくれるはずです。
介護とは何か、人と人との繋がりが持つ力とは何かを、改めて考えさせてくれる感動的な作品です。









