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あらすじ
特徴・見どころ
もし、言葉も文化も違う異国の地で、最愛の家族が認知症を発症したら、あなたならどうしますか。
本作『ベトナムの風に吹かれて』は、まさにその困難な状況に直面した日本人の母娘の姿を描いた、日本・ベトナム初の合作映画です。
認知症の介護という、ただでさえ重いテーマを、「ベトナム・ハノイ」という斬新な舞台設定で描いたことが、大きな話題を呼びました。
この物語は、小松みゆきさんの実体験に基づいたノンフィクション「ベトナムの風に吹かれて」が原作となっています。
メガホンを取ったのは、数々のヒューマンドラマを手掛けてきた巨匠・大森一樹監督。
実話ならではのリアリティと、監督の温かな視点が融合し、笑いと涙に満ちた唯一無二のヒューマンドラマが誕生しました。
松坂慶子と草村礼子、名女優が体現する「異文化介護」のリアル
本作の大きな見どころは、日本を代表する二人の名女優、松坂慶子さんと草村礼子さんが演じる「母娘」の姿です。
松坂慶子さんが演じるのは、主人公の佐生みゆき。
50代で単身ベトナムに渡り、日本語教師として第二の人生をスタートさせたばかりの彼女のもとに、日本から母・シズ子(草村礼子)がやってきます。
しかし、その母が、慣れない異国の地で認知症を発症してしまうのです。
言葉が通じない。
日本の介護サービスは、ここにはない。
症状は日々進行していく。
仕事と介護の両立に追われ、異文化の壁と認知症介護という二重の困難に、みゆきはたった一人で立ち向かうことになります。
松坂慶子さんは、そんな娘の戸惑い、焦燥感、そして母への変わらぬ愛情を、リアリティ豊かに演じています。
一方、その母・シズ子を演じる草村礼子さんの好演も光ります。
認知症によって、時に娘を困らせ、時に無邪気な姿を見せる母。
二人のぶつかり合いとすれ違いは、介護を経験したことのある人なら誰もが共感する、切実な「家族のリアル」そのものです。
介護の「孤立」を救う、ベトナムの温かい地域社会
日本であれば、「介護は家族の問題」として、家庭内に閉じこもりがちになり、介護者が社会から孤立してしまうケースは少なくありません。
みゆきもまた、ハノイという異国の地で、たった一人で母を抱え込み、孤立していきます。
しかし、本作が従来の介護映画と一線を画すのは、ここからです。
彼女たち母娘を救ったのは、ベトナムという国の人々の「温かさ」と「お節介」とも言えるほどの、人と人との距離の近さでした。
みゆきのアパートの大家さん家族や、市場の人々、教え子のベトナム人たち。
彼らは、国籍も文化も違うみゆき母娘を「他人事」として突き放しません。
認知症の母が徘徊しても、地域の人々が当たり前のように見守り、手を貸してくれる。
そこには、日本が失いつつある「地域全体で人を支える」という、温かいコミュニティが息づいていたのです。
本作は、異文化の中での困難な介護を描くことを通して、逆説的に、現代日本における介護における地域社会の支援の重要性を、私たちに強く訴えかけます。
国籍や血縁を超えた「助け合い」の精神。
それこそが、認知症介護の閉塞感を打ち破る、新たな可能性と希望の光であることを、ベトナムの風が優しく教えてくれます。
介護に直面している方はもちろん、異文化交流や、人と人との絆の大切さを感じたいすべての人に、温かい勇気を与えてくれる作品です。









