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あらすじ
チャンスマートで働く70歳のソンチルは、頑固で口うるさい独身のおじいちゃん。
孤独死を意識し始めたある日、向かいに引っ越してきた花屋の女性グンニムに心を奪われる。
しかし、ソンチルはアルツハイマー型認知症で家族の記憶を失っており、グンニムもまた末期のすい臓がんを患っていた。
お互いの事情を知らないまま、二人は恋に落ちる。
やがてソンチルの家族や街の人々が、二人の恋を温かく見守り応援するようになる。
限られた時間の中で、二人は人生最後の輝きを見出していく。
特徴・見どころ
もし、70歳にして、人生で初めての「恋」に落ちたとしたら。
本作『チャンス商会〜初恋を探して〜』は、韓国映画の歴史を変えた『シュリ』や『ブラザーフッド』の巨匠カン・ジェギュ監督が、そのイメージを鮮やかに裏切り、キャリアの集大成として挑んだ、心温まるラブストーリーです。
物語の主人公は、70歳になる頑固で気難しいおじいさん、ソンチル。
「チャンス商会」というスーパーマーケットで働く彼は、街でも有名な「偏屈じいさん」として知られていました。
そんな彼が、ある日、近所に引っ越してきた上品な女性・クムニムと出会い、人生が一変します。
彼女の笑顔に、ソンチルは生まれて初めての「恋」に落ち、戸惑いながらも、不器用なアプローチを始めていくのです。
名優が演じる、切実な「人生最後」の恋
本作が単なる「高齢者のラブストーリー」と一線を画すのは、二人がそれぞれに「秘密」を抱えている点です。
主人公ソンチルを演じるのは、韓国映画界の重鎮パク・クニョン。
そして、彼が恋に落ちる相手クムニムを、『ミナリ』で世界的な評価を得た名女優ユン・ヨジョンが演じています。
この二人の名優が演じるのは、実は「アルツハイマー型認知症」を患う男性と、「末期がん」を患う女性なのです。
ソンチルは、認知症の症状によって、大切な人との「今」この瞬間の記憶さえ、失ってしまうかもしれない恐怖と闘っています。
一方のクムニムも、自らに残された時間が長くないことを知っています。
だからこそ、二人が育む恋は、あまりにも切実で、一瞬一瞬が輝きに満ちているのです。
記憶が失われても、愛は心に残るのか
本作が観る者に問いかけるのは、「記憶」と「愛」の関係性です。
アルツハイマー型認知症のソンチルは、デートの約束や、彼女から貰った大切な言葉さえ忘れてしまうかもしれません。
しかし、カン・ジェギュ監督は、記憶を失ってもなお、その人の「心」や「感情」に愛は残り続けるのではないか、という希望を力強く描きます。
理屈や記憶ではなく、心が惹かれ合う。
認知症の症状の中でも、愛する人を前にした時の「ときめき」や「喜び」は、確かにそこに存在するのです。
ソンチルが失っていく記憶と、クムニムが手放さなければならない未来。
この二つの切なさが交錯する中で、それでも輝きを増す「愛の力」に、観る者は胸を打たれます。
世代を超えて、町中が二人の恋を応援する
本作のもう一つの大きな魅力は、不器用すぎるソンチルの初恋を、町中の人々が全力で応援する、その温かいコミュニティの姿です。
チャンス商会の社長(チョ・ジヌン)をはじめ、EXOのチャンヨル、ムン・ガヨンといった若手俳優たちが演じるご近所さんたちが、まるで自分のことのように、二人の恋の行方を見守り、時に手助けをします。
デートの服を選んだり、恋愛のアドバイスをしたり。
この世代を超えた温かい交流が、認知症や病気という重い現実を、決して暗いものにせず、作品全体を優しく、ユーモラスな空気で包み込んでいます。
これは、老いや病を抱えた人を、家族だけでなく「地域全体」でどう支えていくかという、一つの理想の姿をも示唆しているかのようです。
人生の最期に訪れた、奇跡のような出会い。
『チャンス商会〜初恋を探して〜』は、愛することの尊さと、いくつになっても人は恋をし、輝けるのだという希望を、温かい涙と共に教えてくれる感動作です。









