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トップページ>認知症を学ぶ>認知症と尿失禁の関係は?症状の特徴や対処方法を解説します

認知症と尿失禁の関係は?症状の特徴や対処方法を解説します

認知症は、加齢に伴って誰でもなり得る症状です。
認知症の中にも様々な症状がありますが、その中に「尿失禁」という症状があることを知っていますか?

今回は、認知症の方の尿失禁について以下を中心にご紹介します。

  • 認知症による尿失禁の特徴
  • 認知症による尿失禁の症状
  • 認知症の方が尿失禁したときの対処法
  • 認知症の方が尿失禁したときの注意点

認知症と尿失禁について理解を深めるためにも、参考にしていただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

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認知症とは

認知症の症状の種類

認知症とは、脳の神経細胞の減少や死滅などの障害が起こり、正常に日常生活を送ることができなくなる症状です。
認知症の中でも特に患者が多いのは、脳神経が変性し脳の一部が委縮する過程で起こる「アルツハイマー型認知症」です。

認知症は一般的に高齢者が発症することが多いですが、20代や30代などの若者が発症することも珍しくありません。

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認知症の症状

認知症の症状

認知症の中には様々な症状があり、認知症の種類や原因によっても違いがあります。
ここからは、認知症の症状をご紹介します。

中核症状

認知症には、脳に障害が起き認知機能が低下したことで起こる「中核症状」があります。

認知症の中核症状の中には、「記憶障害」「見当識障害」「理解力・判断力の低下」などがあります。

認知症の種類により初期症状に違いがあるものの、物忘れなどの記憶障害が最初に現れることが多いです。
また、記憶障害以外にも理解力や判断力、集中力の低下などが起こるので、自立した生活を送ることが難しくなります。

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周辺症状

中核症状に加え認知症の方の性格や置かれている環境など、様々な要因が相互に影響し合うことで起こるのが「周辺症状」です。

認知症の周辺症状の中には、「暴力・暴言」「徘徊」「妄想」などがあります。
周辺症状がほとんど現れない方もいれば、かなり激しく現れる方もいます。

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認知症の周辺症状:機能性尿失禁

認知症の周辺症状の機能性尿失禁

上記で紹介した症状以外にも、認知症の周辺症状には機能性尿失禁と呼ばれる症状があります。
ここからは、尿失禁の特徴と症状をご紹介します。

特徴

一口に尿失禁とは言っても、尿失禁の中にはいくつかの種類があります。
まずは、尿失禁の種類を1つずつご紹介します。

  • 切迫性尿失禁:尿意を感じてもこらえることができず漏らしてしまう失禁
  • 腹圧性尿失禁:重いものを持ち上げたときや、咳・くしゃみなどでお腹に力が入ったことで起こる失禁
  • 混合型尿失禁:切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁の混合タイプ
  • 機能性尿失禁:排尿障害や認知症が原因でトイレに間に合わず漏らしてしまう失禁

認知症の尿失禁は機能性尿失禁に分類されます。

膀胱や尿道などの排尿機能に問題があることで起こるものではなく、認知機能や理解力・判断力の低下が原因となって起こります。
そのため、「尿意を催したときはトイレに行く」「尿をトイレで排泄する」といった基本的なことさえも分からなくなります。

症状

認知症に伴う尿失禁の主な症状は以下の通りです。

  • トイレへの行き方や場所が分からない
  • 尿意を感じても周囲の人に上手く伝えることができない
  • トイレへ行くこと自体を忘れてしまう
  • 排泄行為の意味を理解できない
  • 暗い夜間にトイレへの距離や感覚を掴めない

上記の結果、トイレ以外の場所で排泄したり、トイレに間に合わずその場で排泄してしまいます
また、旅行や施設の入所などの環境の変化によっても失禁が起こる場合があります。

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認知症の方が尿失禁した時の対処方法

認知症の尿失禁の対処方法

では、認知症の方が尿失禁をした場合はどのように対処すれば良いのでしょうか。
ここからは、認知症の方が尿失禁をしたときの対処方法を4つご紹介します。

トイレの表示を明確にする

トイレの場所が分からず失禁することが多い場合は、トイレの表示を明確にすることが重要です。

トイレのドアに大きく見やすい字で「便所」「お手洗い」などと書いた貼り紙をすることで、トイレの場所を認識し、スムーズに行けるようになる可能性があります。
認知症の方が一目見て「ここがトイレだ」と認識しやすい工夫をすることが、失禁の軽減や改善に繋がります。

文字を読み取ることが難しい場合は、「便器のイラストを貼る」「トイレのドアを少し開けて見やすくしておく」などの方法もあります。

たとえトイレの表示を明確にしたとしても、思い出せるようになるまで時間がかかることが考えられます。
認知症の方が思い出せるようになるまでなるべく同行してあげましょう。

トイレに行きたいサインを見つける

たとえトイレに行きたいことを伝えられないとしても「歩き回る」「落ち着かずそわそわする」など、トイレに行きたいサインを出す場合があります。

認知症の方のトイレに行きたいサインを見つけたら、タイミング良くトイレへ誘導してあげましょう。

トイレに行きたいサインを見つけるためには、認知症の方の表情や動作を日頃から観察しておくことが大切です。

脱ぎやすい洋服にする

認知症の方は運動機能の低下により動きが遅くなります。
そのため、脱ぎにくい洋服やズボンだと着脱に時間がかかり、トイレが間に合わなくなることがあります。

ボタンやファスナーの位置などが分かりやすく、認知症の方が着脱しやすい洋服を着させてあげると良いでしょう。

便器の使い方を確認する

便器の使い方が分からない場合は、使い方を確認しましょう。
「便座に座る・立ち上がる」「排泄後はレバーを動かして流す」など、排泄に必要な基本的動作を一緒に確認することが重要です。

トイレの場所と同様、思い出せるようになるまで時間がかかると考えられるので、何度も確認してあげましょう。

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認知症の方が尿失禁した際にパッド交換を嫌がる場合

認知症の尿失禁|パッド交換拒否への対応

認知症の方が尿失禁をした際、最初にパッド交換を考える方が多いでしょう。

しかし、認知症の方がパッド交換を嫌がる場合があります。
ここからは、認知症の方がパッド交換を嫌がったときの原因と対策をご紹介します。

原因

パッド交換を嫌がる原因には、以下の2つのことが考えられます。

  • パッド交換の必要性を理解できない
  • 介護者との相性が悪い

パッド交換の必要性が理解できない中、身体を触られたり、ズボンを脱がされることは認知症の方にとって非常にストレスです。
たとえパッド交換の必要性を理解できていても、介護者との相性が悪いことは認知症の方を不快にさせる原因になります。

認知症の方がパッド交換を嫌がるのは、嫌な気持ちを意思表示していると捉えましょう。

まずはどちらが原因となってパッド交換を嫌がるのかを知ることが重要です。

対策

認知症の方がパッド交換を嫌がったときは、以下の2つの対策を取りましょう。

タイミングを変える

突然パッド交換を始めるのではなく、認知症の方にとって良いタイミングで行うことが1つの方法です。

不定期にパッド交換を促すよりもトイレ時にさりげなく交換することで、何度もトイレへ誘導する必要がなくなります。
また、認知症の方の気分が良いときに行えばパッド交換がスムーズにできるので、好きな話題の会話中に行うと良いでしょう。

自分で交換してもらう

介護者との相性が悪い場合は、自分で交換してもらうことでスムーズにパッド交換ができます。

自分で交換してもらうためにはまず、信頼関係のある方がパッド交換の必要性を説明することが大切です。
説明をして必要性の理解を得た上で、本人にパッド交換を行ってもらいましょう。

薬の使い方

認知症経過段階


認知症は症状が進行する疾患です。
経過によってさまざまな症状があらわれるため、症状から認知症の段階や生命予後の予測が可能です。

ニューヨーク大学のバリー・ライスバーグ博士は、認知症を7段階の進行度合いで説明しています。

以下では失禁症状のある認知症患者において

  • どの進行段階に属しているか
  • 介護の度合いはどの程度か
  • 寿命はどれくらいか

について解説していきます。

失禁症状がある認知症患者の介護度合い

失禁症状は、7段階のうち段階6(やや重度の認知症で、アルツハイマー型認知症の中期)で多く認められるようになります。

記憶障害、見当識障害、判断力の低下が進行し

  • 自分が何をすればよいのか
  • 自分(あるいは周りの人・物)が誰なのか、何なのか

といった、自身の置かれている状況や周囲との関係性がわからなくなってきます。

すると

  • 適切な物品の選択ができない:食事に何を使えばいいかわらない
  • 使い方がわからない:持っている箸と茶碗の使い方がわからない
  • 行動の手順がわからない:トイレに来たものの何をすればよいかわからない

といった日常生活のさまざまな活動に支障をきたすことが特徴です。

また、1日のリズムが乱れて昼夜逆転徘徊などの周辺症状も見られます。
介護者は所在を確認したり、危険な行動がないか見守りをしたりと負担が大きくなることでしょう。

失禁症状が出現する段階では、他の活動にも支障をきたすことが多いと言えます。
そのため、できない部分のサポートや危険回避などが重要です。

失禁症状がある認知症患者の寿命

認知症介護に要する期間は、平均6~7年と言われています。
失禁症状がある認知症患者はやや重度の進行段階にあるため、生命予後としては寿命が近いといえます。

進行し段階7になれば、寝たきり状態となり身の回り全般の介助が必要です。
脳機能の全般にわたり障害があらわれ、運動機能や嚥下機能の低下も顕著にみられます。

すると、誤嚥による肺炎(誤嚥性肺炎)や免疫力低下に伴う感染症によって死に至る方もしばしばおられます。
認知症が原因で亡くなるのではなく、認知症による種々の機能低下が合併症を引き起こし、死に至るということです。

認知症の生命予後の因子には以下のようなものがあります。

  • 基礎疾患の有無
  • 診断された年齢
  • 性別

さまざまな因子により予後が異なるため、失禁がある認知症患者の寿命は一概に決まっているとは言えません。

しかし認知症の進行段階としては、重度に近くなっているということを知っておくとよいでしょう。

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認知症の方が尿失禁をした時の注意点

認知症の尿失禁時の注意点

認知症の方が尿失禁をした際、注意しなければいけないことがあります。
ここからは、認知症の方が尿失禁をしたときの注意点を3つご紹介します。

怒らない

トイレの失敗は認知症の方にとって非常にショックが大きく、自尊心が傷ついてしまいます。

介護者である家族も辛いですが、1番辛いのは認知症の方本人です。
尿失禁をしたときに大声で怒ったり、責め立ててしまえば余計に認知症の方を傷つけてしまいます。

尿失禁をしてしまっても怒らず、優しく冷静に対応することが大切です。
認知症の方の心の傷をさらにえぐってしまうような対応には注意してください。

自立を促す

尿失禁をしたからといって、すぐにパッドを使うことはおすすめできません。
認知症の方が体を動かせる場合は、自立のためにもなるべくトイレを利用しましょう。

サポートしてできることであれば、なるべく本人が行うよう手助けをすることが大切です。

認知症の方には、日常生活における自立のサポートがとても大事です。
なので、最初からパッド交換をするのではなく、あくまでもパッド交換は最終手段であることを把握しておきましょう。

専門家に相談する

認知症の方の排泄ケアは、介護者にとって非常に辛く大きな負担となります。
しかし、排泄問題を周囲に打ち明けることに恥ずかしさやためらいを感じる方は少なくありません。

介護者が体調を崩しては元も子もないので、ケアマネージャーなどの専門家に相談することも1つの方法です。
また、デイサービスやショートステイなどの施設を利用することも選択肢の1つとして把握しておきましょう。

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認知症による失禁に本人が気づかない?

認知症による失禁に本人が気づかない
認知症患者にとって、失禁はまったくわからないということはありません。
実は気づいている方も少なくないのです。

失禁した事実を受け入れられず、羞恥心から

  • 失禁したことを隠す
  • 失禁したことを認めない

といった行動をとる方もおられます。
それぞれについて解説していきます。

認知症による失禁を隠す

失禁したことが恥ずかしく情けないと感じる方は、自尊心が傷ついています。
そのため、失禁の事実を隠そうとするのです。

具体的には

  • 濡れた衣類をタンスなどに隠す
  • 見えないところに捨てる

などの行動をとります。

介護者としては、タンスを開けて濡れた衣類が入っていたら驚くでしょう。
しかし隠す側の心理に立って考え、さりげなく片づけるようにしてください。

隠すということは、自分で処理したい、迷惑をかけたくないという気持ちがあるからこそと思うようにしましょう。

認知症による失禁を認めない

中には、失禁の事実を認めない方もおられます。

介護者が失禁を強く責めるほど、強く否定し反発します。
認めないことも、羞恥心や迷惑をかけたくない気持ちからの行動です。

現実を突きつけるような対応はせず、さりげなくトイレに誘ったり、着替えを用意するなどの対策をとりましょう。

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介護者はまずは認知症を理解する

介護者が認知症患者に接する時に注意すべき点

「認知症だから仕方ない」ではなく、まずは認知症を理解することが尿失禁やその他の症状の解決に繋がります

認知症の方の言動に対して腹が立ったり、実際に叱ってしまうことがあるかもしれません。
しかし、認知症により記憶力や判断力などが失われていっても、感情だけはずっと残り続けます。

特に感情に関する記憶は残りやすく、認知症の方がマイナスな感情を持ったことは嫌な記憶として残ります。
介護者が怒ったり、責めたりすれば「嫌な人」「怖い人」として記憶に残るということです。

認知症という症状がありながらも、1人の人間としてプライドや恥じらいを持っています。
1人の人間として持っている感情は、他の健常者の方たちと何ら変わりはありません。

認知症の方を介護する家族は、本人以上に認知症を理解することが大切です。

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認知症と尿失禁のまとめ

認知症と尿失禁のまとめ

ここまで、認知症の尿失禁についてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。

  • 認知症の周辺症状である機能性尿失禁は、「トイレの場所が分からない」「トイレに行くことを忘れる」などの理由で尿を漏らすこと
  • 認知症の方が尿失禁をしたときは、「トイレの表示を明確にする」「脱ぎやすい洋服にする」などの対処が必要
  • 認知症の方がパッド交換を嫌がる場合は、パッド交換のタイミングを変えたり、自分で交換してもらうと良い
  • 認知症の方が尿失禁をしたときは怒らないことや、専門家に相談することが大切

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

監修者 メディカル・ケア・サービス

  • 認知症高齢者対応のグループホーム運営
  • 自立支援ケア
  • 学研グループと融合したメディア
  • 出版事業
  • 社名: メディカル・ケア・サービス株式会社
  • 設立: 1999年11月24日
  • 代表取締役社長: 山本 教雄
  • 本社: 〒330-6029埼玉県さいたま市中央区新都心11-2ランド·アクシス·タワー29F
  • グループホーム展開
  • 介護付有料老人ホーム展開
  • 小規模多機能型居宅介護
  • その他介護事業所運営
  • 食事管理
  • 栄養提供
  • 福祉用具販売
  • 障がい者雇用

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