突然、認知症の方が異常なほどの食欲を見せることがあります。
過食は認知症の代表的な周辺症状であるため、食欲旺盛だと感じたときは、すこし注意が必要です。
本記事では、認知症による過食の症状と、対処方法について解説します。
- 過食の定義
- 認知症による過食の特徴・症状
- 認知症による過食が見られたときの対応
- 過食以外に注意すべき摂食障害
ぜひ本記事を最後までお読みください。
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そもそも過食とはどういう状態?

過食とは、大量にものを食べ続ける状態です。
食べても食べても満腹感や満足感を得られず、目につくものを手当たり次第に食べてしまう状態を指します。
過食の原因は、「ストレス」や「過度なダイエットの反動」など、さまざまです。
ときには、認知症が過食を引き起こすこともあります。
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認知症による食べ過ぎの症状

過食は、認知症の周辺症状(BPSD)に該当します。
周辺症状とは、本人の性格や、本人を取り巻く環境によって、副次的にあらわれる症状のことです。
そのため、認知症による過食は、認知症の方に必ずあらわれるわけではありません。
また、症状のあらわれ方や程度にも、個人差があります。
それでは、認知症による過食の特徴について、具体的にご説明していきます。
一過性の症状
多くの場合、認知症による過食は、一時的な症状だといわれています。
一時期には異常なほどの食欲を見せるものの、次第に食欲は落ち着き、やがて元に戻るのが一般的です。
ただし、過食の期間には個人差があります。
時には長い期間、過食症状があらわれる場合もありますので、注意深く見守りましょう。
異常な食欲
認知症を発症すると、食欲が異常なほど旺盛になります。
これは、認知機能の低下によって満腹中枢が刺激されにくくなるためです。
つまり認知症の方は、食べても満腹感を感じにくいのです。
たとえば、食事の直後に食べ物を要求するのは、認知症による過食の代表的な例です。
夜中に起きだして、冷蔵庫や戸棚の中の食べ物を食べ尽くしてしまうケースも見られます。
特に、前頭側頭型認知症(ピック病など)の場合、我慢する機能(抑制機能)が低下するため、以下のような行動が目立つことがあります。
- 時刻表的行動:毎日決まった時間に同じメニューを食べないと気が済まないこと
- 嗜好の変化:極端に甘いものや、濃い味付けのものを欲しがること
- 常同行動:同じ料理を、飽きることなく毎日食べ続けること
食事したことを忘れる
認知症の方が過食になりやすいのは、認知症による記憶力の低下も関係しています。
認知症による記憶障害は、「体験を丸ごと忘れる」のが特徴です。
認知症の方は、認知機能の低下により食事したこと自体を忘れてしまうことがあります。
認知症による記憶障害について理解を深めることで、ご本人の行動の理由が見えてくるかもしれません。
食べても満腹感を感じにくいことから、「お腹いっぱいに感じない=まだ食べていない」と思い込み、食べ物を要求します。
認知症の種類による食欲の特徴は以下の通りで、種類によって特徴が異なることも覚えておきましょう。
| 認知症の種類 | 食欲・食事の特徴 |
|---|---|
| アルツハイマー型 |
|
| 前頭側頭型 (ピック病など) |
|
| レビー小体型 |
|
| 血管性認知症 |
|
※症状には個人差があります。
認知症による過食の対処法

過食は、肥満や糖尿病といった疾患を引き起こします。
できる限り、予防・防止が求められます。
認知症による過食の症状がみられた場合、以下のような方法で対処することをおすすめします。
食器をすぐに片付けない
「食卓についていた」ことを強く印象付けるのは、過食防止の有効な手段です。
たとえば食後は、あえて、皿やコップを食卓に広げたままにしておきます。
食後に認知症の方が「お腹が空いた」といっても、「さっきお皿を空にしたでしょう」と説明できます。
認知症の方にとっても、実際に使用済みの食器類を目にすることで、「食事は済んだ」と納得しやすくなります。
あるいは、食後にお茶などを飲みながら、団らんするのも良い方法です。
「食卓についていた」という記憶が残りやすいため、過食が起こりにくくなります。
手の届く場所に食べ物を置かない
認知症による過食では、食べ物が目につくと、食べるのを我慢できない傾向があります。
そのため、認知症の方の手が届く場所や、目につきやすい場所には食べ物を置かないようにします。
たとえば、棚に鍵をかける方法が手っ取り早いです。
食べ物の保管には、中身の見えない容器を使うのも有効です。
しかし、食べ物をすべて遠ざけると、かえって状況が悪くなる場合もあります。
食べ物を諦めきれず、家中を荒らす可能性があるからです。
あるいは、食べ物を隠されていることに感づき、本人が逆上するケースもあります。
どうしても本人が食べ物探しを止めない場合は、あえて目につく場所に食べ物を置いておくことも1つの方法です。
食べ物は、小さなおにぎりや、低カロリーのお菓子などの軽食がおすすめです。
とりあえず食べ物が見つかれば、本人も安心し症状が落ち着くこともあります。
状況に応じて、臨機応変に対応してください。
軽食を渡す
なにか食べ物を探しているときは、軽食を渡してみて下さい。
小さなおにぎりや果物、あるいは温かい飲み物といったものがおすすめです。
認知症による過食は、「食事をもらえない」という不安感のあらわれとも言われています。
なにか食べ物を手にすることで、不安がやわらぎ、過食が落ち着くこともあります。
このとき、大切なのは、「望んだときにすぐ食べ物を口にできる」という安心感を与えることです。
たとえば、食後に食べ物を欲しがったとします。
「さっき食べたでしょう」と諫めても、本人は食事したことを覚えていません。
そのため「騙されている」「自分だけ食事をもらえない」と思い込み、かえって食べ物への執着が強くなる可能性があります。
反対に、「いま準備しているから、これでも食べてて」と軽食を渡されると、本人は「食事がない」ことを納得しやすくなります。
また、食べ物をすぐ手にできることは、大きな安心感につながります。
日ごろから軽食を準備しておき、食べ物を欲しがったときにすぐに渡せるようにしておくことをおすすめします。
私たち「健達ねっと」を運営するメディカル・ケア・サービス(MCS)のグループホームでは、過食や食事への強い執着に対し、薬に頼りすぎないケアを実践しています。
代わりに「お腹が空きましたね、すぐに準備しますね」と訴えそのものを受け止め(肯定し)、安心感を与える対応を徹底。
結果として、スタッフへの信頼感が生まれ、食事に関する強い訴えがなくなったケースがあります。
>愛の家グループホーム 葛飾奥戸(東京都)の事例
以前は毎日涙を流されていた方が、得意だった料理の下ごしらえや盛り付けを担うことで、「自分は役に立っている」という自信を回復。
結果として生活リズムが整い、穏やかに過ごせるようになりました。
>愛の家グループホーム 鈴鹿(三重県)の事例
摂取カロリーを考えて食事回数を増やす
1食を数回に分けて出すことも、有効な手段です。
たとえば朝食の量をあらかじめ減らしておき、朝食と昼食の間に、軽い食事を挟むとよいでしょう。
認知症の方は「空腹そのもの」を我慢できないのではなく、「食べたいという気持ち」を我慢するのが困難です。
少量ずつでもこまめに食べることで、「食べたい」という気持ちを常に満たすことができます。
あらかじめ1日に必要な総摂取カロリーや栄養を把握しておくと、1回あたりの食事量を適正にしやすくなります。
単純に食事の回数を増やすだけでは、かえって「食べすぎ」につながります。
かならず、1日の摂取カロリーを計算し、その中で食べる回数や量を調整することが重要です。
また、認知症の方の食事全般については、認知症の人の食事で起こるトラブルとは?で詳しく解説しています。食事介助のポイントについても参考にしてください。
本人の気をそらす
「食べること」から気をそらすのも、過食を防止するうえでは大切です。
とくに食後にゆっくり過ごしていると、食べ物に関心が向きやすいといわれています。
食事のあとは、食べ物から興味をそらすような工夫をしてみて下さい。
たとえば、軽いレクリエーションやゲームといったものが有効です。
あるいは、簡単な家事や作業をお願いすると、本人の達成感にもつながるのでよい気晴らしになります。
認知症の方への日々の対応方法については、認知症の方に対する対応は?で詳しく解説しています。介護者の心身の負担を軽減するための情報もご覧いただけます。
実際の介護現場では、単に食事を制限するのではなく、ご本人の「食べたい」という意欲を尊重しながら、健康を守る工夫を行っています。ご家庭でも取り入れやすいプロのアイデアをご紹介します。
1. カロリーを抑えて「カサ」を増すこと
こんにゃく、キノコ類、海藻、もやしなど、低カロリーで噛みごたえのある食材を細かく刻んで料理に混ぜ込みます。
見た目のボリュームを減らさずに満腹感を得やすくなります。
2. 水分で満足感を補うこと
食事の前に、温かいお茶やスープを提供します。
水分でお腹が落ち着くだけでなく、嚥下(飲み込み)をスムーズにする効果も期待できます。
3. 「五感」を刺激すること
認知症の方は、視覚的な情報に影響されやすい傾向があります。
小さめの器に盛り付けて「山盛り」に見せたり、彩りの良い野菜を添えたりすることで、視覚的な満足感を高めることができます。
食を通じたコミュニケーション「回想法」の活用
認知症の方にとって、食事は単なる栄養補給以上の意味を持ちます。
昔慣れ親しんだ味や、料理を作っていた頃の記憶は、認知症の方の心を安定させる大きな力になります。
例えば、過食の症状が見られる背景には「寂しさ」や「役割の喪失感」がある場合も少なくありません。
そのような時、「昔よく作っていた料理の話をする」「簡単な調理を手伝ってもらう」といった関わりが、食欲のコントロールにつながることがあります。
私たちMCSは、食を通じた認知症ケアの一環として、管理栄養士監修のレシピ集『ハルと思い出めぐりごはん』を出版しています。
回想法を活用した「懐かしいレシピ」は、ご本人との会話の糸口としても役立ちます。
過食以外の認知症による食べ方の異常

認知症の方は、過食以外にも、さまざまな摂食障害を起こしやすくなります。
拒食・小食
過食と反対に、物をあまり食べなくなる障害です。
認知症になると食べない?寝てばかりや食事拒否についてで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
栄養状態の悪化・体力の低下につながるため、注意が必要です。
異食
本来は食べられないものを、食べてしまう障害です。
石鹸や洗剤などを口にすることもあるため、危険な物は遠ざけるようにします。
口唇傾向
唇に触れるものを条件反射でなめてしまう行動です。
異食と異なるのは、「食べられない」と認識すると口から吐き出す点です。
ただし、誤って危険物を口にするおそれもあるため、異食同様に注意して下さい。
認知症は嚥下障害を引き起こす?では、認知症の種類ごとの嚥下障害の特徴やリハビリ方法について詳しく解説しています。
誤嚥
飲み込んだものが誤って気管に入ってしまう障害です。
誤嚥は、脳と筋肉の連携に支障をきたすと起こりやすくなります。
つまり認知症患者には、発症リスクの高い障害といえます。
気管に入った食べ物が肺に到達すると、誤嚥性肺炎を起こすリスクがあります。
誤嚥性肺炎そのものは治療が可能ですが、繰り返すことで、命にかかわるリスクが高くなります。
実際に、誤嚥性肺炎は、認知症患者の死亡原因の上位に数えられます。
誤嚥を防ぐための具体的な方法については、誤嚥を防いで美味しく食べ続ける方法7選もご参照ください。
そのため、誤嚥は、とくに注意すべき摂食障害の1つです。
たとえば汁物にはとろみをつけたり、固形物はすりつぶしたりして、飲み込みやすい食事を心がけて下さい。
「冷蔵庫を勝手に開けてしまう」「何度注意しても食べてしまう」
こうした症状に24時間向き合い続けることは、ご家族にとって並大抵の苦労ではありません。
もし、ご自宅でのケアに限界を感じたら、認知症ケアの専門施設である「グループホーム」を検討してみませんか?
規則正しい生活と、専門スタッフによるケア(自立支援)によって、「うつ症状が改善し笑顔が戻った」「家族関係が修復できた」という事例がたくさんあります。
MCSのグループホームの実績:
食欲の変化は認知症進行のサイン?
ご家族にとって、異常な過食を目の当たりにすると「この状態が一生続くのではないか」と不安になるかもしれません。
しかし、認知症の進行に伴い、食欲の状態も変化していくことが一般的です。
- 初期~中期: ストレスや満腹中枢の機能低下により、過食や執着が起こりやすい時期です。
- 後期~末期: 活動量の低下や嚥下機能(飲み込む力)の衰えにより、次第に食が細く(拒食傾向に)なっていく傾向があります。
過食は「エネルギーがあり余っている状態」とも言えます。
いずれ訪れる食欲低下の時期に備え、今は「食べられること」を前向きに捉えつつ、肥満や誤嚥などのリスク管理を行うことが大切です。
「将来の見通しが立たず不安」「変化に対応しきれない」と感じたときは、ケアマネジャーや医師、あるいは介護施設などの専門家に早めに相談することで、ご家族の負担を大きく減らすことができます。
認知症による過食のまとめ

ここまで、認知症による過食について症状や対処法についてお伝えしてきました。
- 認知症による過食は、一過性であることが多いこと
- 認知症で過食になりやすいのは、満腹感を感じにくく食事をしたことを忘れてしまうからであること
- 過食症状には、「食べ物を隠す」「こまめに食べさせる」などの対応策があること
- 過食以外にも「誤嚥」「異食」「拒食」などに注意すべきこと
日々の生活習慣を見直すことで、認知症の予防につながる可能性があります。
これらの記事では、認知症予防に効果的な食べ物や運動習慣について詳しく解説しています。
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※サプリメントは健康補助食品であり、疾病の治療・予防を目的とするものではありません。
気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。






