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アルツハイマー型認知症の進行速度は?3つの段階と緩やかにする方法

ご自身の親御さんについて、このような不安を感じていませんか?

  • 最近、同じことを何度も聞かれるようになったけど、これは認知症の始まり…?
  • もしアルツハイマー型認知症だったら、これからどれくらいの速さで進んでしまうのだろう…
  • 進行したら、家族の生活はどう変わってしまうのか、先のことが見えず怖い…
  • 何かできることがあるなら、少しでも進行を穏やかにしてあげたい

大切なご家族の変化に、これからどうなってしまうのだろうと、大きな不安を感じていらっしゃることでしょう。
先の見えない状況は、ご本人だけでなく、支えるご家族にとっても非常につらいものです。

しかし、アルツハイマー型認知症の進行について正しく理解することで、その不安は大きく和らぎます。
この記事では、アルツハイマー型認知症の進行速度の目安から、進行が急に早まる原因、そして家族が実践できる進行を穏やかにする方法まで、網羅的に解説します。

この記事を読むことで分かることは、以下の通りです。

  • アルツハイマー型認知症が進行する平均的な期間と3つの段階
  • 症状が「一気に進む」と感じる場合の5つの具体的な原因
  • 科学的根拠に基づいた、進行を穏やかにするための具体的な方法
  • 多くの方が抱える進行速度に関する疑問への答え

この記事を読み終える頃には、将来への見通しが立ち、漠然とした不安が「今できること」への前向きな行動に変わっているはずです。
まずは、アルツハイマー型認知症の基礎知識をまとめた記事もご覧いただくと、より理解が深まります。

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アルツハイマー型認知症の進行速度

アルツハイマー型認知症の進行速度は、発症年齢や健康状態、生活環境などによって大きく異なるため一概にはいえません。
しかし、一般的な進行の段階と、個人差が生まれる理由を知ることで、今後の見通しを立てるのに役立ちます。

アルツハイマー型認知症の進行は3段階

アルツハイマー型認知症は、症状の程度によって一般的に「初期(軽度)」「中期(中度)」「末期(重度)」の3つの段階を経て進行します。
それぞれの段階で現れる症状や日常生活への影響は異なります。

進行段階主な症状(中核症状・BPSD)日常生活への影響
初期(軽度)・最近の出来事を忘れる
・同じ話を繰り返す
・物の置き忘れが増える
・日付や曜日が分からなくなる
複雑な作業(料理の段取り、金銭管理など)に時間がかかったり、ミスが増えたりする。
中期(中度)・少し前のことも忘れる
・時間や場所が分からなくなる
・徘徊や妄想が出ることがある
ひとりでの外出が難しくなる。着替えや入浴、トイレなどで一部介助が必要になることがある。
末期(重度)・家族の顔が分からなくなる
・言葉での意思疎通が困難になる
・身体機能が低下する(歩行困難など)
食事、排泄、入浴など、日常生活のほぼ全てにおいて全面的な介助が必要となる。

各段階の詳しい症状や進行パターンについては、認知症の進行段階について詳しく解説した記事もご参照ください。
これらの段階を理解することが、その時々に合わせた適切なケアにつながります。

進行速度は人それぞれ、その中で個人差が大きい理由

アルツハイマー型認知症の進行速度に大きな個人差があるのは、複数の要因が複雑に絡み合っているためです。
どのような要因が進行速度に影響を与えるのかを知っておきましょう。

主な要因として、以下の点が挙げられます。

  • 発症年齢:若年性アルツハイマー型認知症(65歳未満で発症)は、高齢発症型に比べて進行が早い傾向があるといわれています(参考:厚生労働省「若年性認知症支援ガイドブック」)。
  • 遺伝的要因:特定の遺伝子(アポリポプロテインE遺伝子など)は、発症リスクや進行速度に関連する可能性があります。
  • 持病の有無:高血圧や糖尿病、心臓病などの生活習慣病を合併していると、脳の血流が悪化し、進行を早めることがあります。
  • 生活習慣:食事、運動、睡眠などの生活習慣が脳の健康状態に影響を与えます。
  • 周囲のサポート体制:家族や地域社会との関わり方、適切な医療・介護サービスの利用状況も進行に影響します。

これらの要因が複合的に作用するため、進行速度は一人ひとり異なります。
認知症が急激に悪化したように感じる場合の詳しい原因については、認知症の進行速度に関する専門記事で詳しく解説しています。

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認知症の進行が「一気に進む」と感じる5つの原因

アルツハイマー型認知症は、基本的には年単位でゆっくりと進行する病気です。
しかし、ご家族から見て「一気に症状が進んだ」と感じることがあります。

その背景には、認知症そのものの進行とは別に、症状を急激に悪化させる原因が隠れていることが少なくありません。

急激な環境の変化(入院・引っ越しなど)

認知症の方は、環境の変化に適応することが苦手です。
入院や施設への入所、引っ越しといった大きな環境の変化は、本人にとって強いストレスとなり、混乱や不安を引き起こします。
この精神的な負担が、一時的に症状を悪化させる「せん妄」という状態を招き、認知症が急に進行したように見えることがあるのです。

厚生労働省発行の「被災した認知症の人と家族の支援マニュアル」によると、「被災による環境の変化や心理的不安そのものでもせん妄は生じます。
温かく、安心できる環境設定が望まれる」とされています。

【実際の改善事例】環境変化への適応をサポートした結果

愛の家グループホームでの実例をご紹介します。
3年間引きこもり状態だった80代男性の方が、環境変化に戸惑い歩行も困難な状態でした。
しかし、職員が本人のペースに合わせて段階的な環境適応支援を行った結果、四つんばい移動から押し車での歩行まで回復し、笑顔も取り戻せました。

この事例から分かるのは、環境変化による一時的な機能低下は、適切なサポートにより回復の可能性があるということです。
ご家族の場合も、以下の点を意識することが大切です。

  • 新しい環境に慣れるまで、十分な時間をかける
  • 本人が安心できる馴染みのある物を持参する
  • 急がず、本人のペースに合わせた関わりを心がける
  • 小さな「できること」を見つけて褒める

入院が認知症に与える影響について詳しくは、認知症と入院の関係を解説した記事をご覧ください。
また、環境変化への向き合い方については、環境変化と認知症ケアについて考察した記事も勉強になります。

身体的な病気やケガ

認知症の方は、身体の不調をうまく言葉で伝えられないことがあります。
そのため、感染症(特に尿路感染症や肺炎)・脱水・便秘・骨折による痛みといった身体的な問題が、認知機能の急激な低下を引き起こす原因となります。
いつもと様子が違うと感じたら、まずは身体的な問題がないかを確認することが重要です。

認知症の方が特に注意すべき身体的な病気として「誤嚥性肺炎」があります。
認知症の進行により嚥下機能が低下し、食べ物や唾液が気管に入ることで肺炎を起こしやすくなります。

日本老年医学会の症例解説によると、「レビー小体型認知症では、記憶の障害に加えて、パーキンソニズムがみられ、嚥下障害もアルツハイマー型認知症に比べて早期にみられることが多い」とされています。
また、日本老年医学会では、「誤嚥による発熱を予防するためには、口腔ケアや適切な食形態の工夫、摂食・嚥下リハビリテーションが重要といわれています。
加えて、意識レベルの低下を防ぐことがポイントであり、そのためにも抗精神病薬や睡眠薬の使用を最小限にする」としています。

適切な予防策により多くのリスクは軽減可能です。

心理的なストレス

ご家族の対応が、意図せず本人にとって大きなストレスとなり、BPSD(行動・心理症状)を悪化させてしまうことがあります。
失敗を強く叱責したり、本人の言動を頭ごなしに否定したりすると、本人は不安や混乱、怒りを感じ、症状が強く出てしまうことがあります。

NGな対応例推奨される対応例
「さっきも言ったでしょ!」と間違いを指摘する「そうだったわね」と一度受け止め、さりげなく話題を変える
「それは違う!」と話を真っ向から否定する「そういう考えもあるのね」と傾聴し、本人の気持ちに寄り添う
安全のために行動を過度に制限する安全な範囲で、本人が自分でできることを見守り、支援する

本人の気持ちに寄り添い、安心できるような関わりを心がけることが、症状の安定につながります。

薬の影響

高齢になると複数の持病を抱え、多くの薬を服用(ポリファーマシー)していることが少なくありません。
薬の副作用や、新しい薬の追加・変更が、認知機能を低下させ、症状が悪化したように見えることがあります。

特に、睡眠薬や抗不安薬、風邪薬の一部などは、高齢者で副作用が出やすいといわれています。
薬を飲み始めてから様子が変わったと感じた場合は、かかりつけ医や薬剤師に相談することが重要です。

生活の中の刺激不足

人との交流や日中の活動は、脳にとって重要な刺激です。
社会的につながりを失い、自宅でひとりで過ごす時間が増えると、脳への刺激が減少し、認知機能の低下を招きやすくなります。

定年退職や、デイサービスを休むようになったことなどをきっかけに、急に症状が進んだように感じられるケースもあります。
本人が楽しめる活動や役割を見つけ、社会とのつながりを維持できるようサポートすることが大切です。

アルツハイマー病の進行を緩やかにするために家族ができること

アルツハイマー型認知症の進行を完全に止めることは、現在の医療では困難です。
しかし、適切な治療や生活習慣の見直しによって、進行の速度を穏やかにし、本人らしい生活をより長く続けることは可能です。

MCSケアモデルに基づく実践的アプローチ

アルツハイマー型認知症の進行を緩やかにするために、全国287ホームで3,821名の実践データに基づく「MCSケアモデル」から、ご家族でも実践できる具体的なアプローチをご紹介します。
このケアモデルでは、85%以上の方に改善がみられており、特に以下の「6つの目指す状態」と「12の解決方法」が効果的とされています。

  • 水分摂取1,800ml/日の維持:脱水は認知機能の急激な悪化を招きます。こまめな水分補給を心がけましょう
  • たんぱく質80g/日の確保:筋力維持と脳機能維持に不可欠です。肉・魚・卵・乳製品を意識的に摂取しましょう
  • 規則正しい生活リズム:起床・就寝時間を一定にし、日中の活動量を確保することで認知機能の維持につながります

このような科学的根拠に基づいたケアを継続することで、進行の緩やかな維持が期待できます。

適切な医療・薬物治療を受ける

また、アルツハイマー型認知症の進行を抑えるためには、早期に専門医の診断を受け、適切な治療を開始することが何よりも重要です。
近年では、病気の進行そのものを抑制する効果が期待できる新しいタイプの薬(疾患修飾薬)も登場しています。

治療は薬物療法だけでなく、リハビリテーションや生活指導など、総合的に行われます。

医療治療に加えて、認知機能の維持をサポートする栄養成分の摂取も注目されています。
健達ねっとでは、認知機能に関する機能性表示食品を取り扱っており、多くのご家族にご活用いただいています。

これらの商品は機能性表示食品であり、医療治療の代替ではありません。
必ず医師の指導の下で、治療と併用することが大切です。

食事や運動など生活習慣を見直す

日々の生活習慣は、脳の健康と密接に関わっています。
バランスのよい食事と適度な運動は、アルツハイマー型認知症の進行を穏やかにする上で非常に効果的です。

WHO(世界保健機関)は2019年に発表したガイドラインで、地中海食について「認知機能正常または軽度認知障害の成人に対して認知機能低下や認知症のリスクを低減するために推奨してもよい」と評価しています(参考:厚生労働省:認知症の「予防」に資する取組事例集)。

項目具体的な内容
食事・魚(特に青魚)、野菜、果物、オリーブオイルなどを中心とした地中海食
・加工食品や糖質の多い食事は控える
・バランスのよい栄養摂取を心がける
運動・ウォーキングなどの有酸素運動(週に3回、30分程度)
・簡単な計算やしりとりをしながら運動する「コグニサイズ」
・無理なく続けられる範囲で筋力トレーニング

コグニサイズについては、国立長寿医療研究センターの研究で、「MCI(軽度認知障害)高齢者を対象に、コグニサイズを含め、筋力トレーニングやバランストレーニング、有酸素運動などからなる複合的運動プログラムを、週1回、40回実施した結果、記憶を含む認知機能の改善が確認された」という報告があります。

具体的な食事内容や運動方法については、認知症予防の食事と運動について詳しく解説した記事をご参照ください。
また、認知症によい食べ物・避けるべき食べ物については、認知症と食事の関係について解説した記事もご覧ください。

社会的交流と知的活動を維持する

人との会話や趣味などの知的活動は、脳を活性化させ、認知機能の維持につながります。
本人が楽しめること、興味を持てることを見つけ、社会とのつながりを保てるようにサポートすることが大切です。

以下のような活動がオススメです。

  • 友人や家族との会話を楽しむ
  • 地域のイベントや趣味のサークルに参加する
  • 簡単な計算ドリルやパズル、読書などに取り組む
  • 料理やガーデニングなど、手順を考えながら行う活動

認知症予防に効果的な趣味活動については、趣味と認知症予防の関係を詳しく解説した記事も参考にしてみてください。
大切なのは、本人が「楽しい」と感じながら続けられることです。

くらし図鑑

アルツハイマー病の進行速度に関するよくある質問

ここでは、アルツハイマー型認知症の進行速度に関して、多くの方が抱く疑問にお答えします。

80代になると進行は早くなる?

「80代だから進行が早い」と一概にはいえませんが、高齢になると体力が低下し、他の病気を合併しやすくなるため、結果として症状が進行しやすくなる傾向はあります。
特に、転倒による骨折や感染症などをきっかけに、急激に身体機能が低下し、それに伴い認知機能も低下するケースは少なくありません。

年齢に関わらず、日頃からの健康管理と安全な環境づくりが重要です。
年齢と認知症発症の関係性について詳しくは、年齢と認知症発症率について詳しく解説した記事をご参照ください。

発症からの平均寿命はどれくらい?

アルツハイマー型認知症と診断されてからの平均的な生存期間(余命)については、複数の研究報告がありますが、個人差が非常に大きいのが実情です。
近年の医療や介護の進歩により、以前よりも長く穏やかに過ごされる方が増えています。

数字に一喜一憂せず、今を大切に過ごすためのケアに集中することが大切です。
認知症の最期や終末期について詳しく知りたい方は、認知症の最期について詳しく解説した記事もご覧ください。

最終的に寝たきりになるまでの期間は?

アルツハイマー型認知症が進行すると、歩行障害や嚥下障害など身体機能の低下が進み、最終的に寝たきりの状態になることがあります。
しかし、その期間には大きな個人差があり、必ずしも全ての人が寝たきりになるわけではありません。

適切なリハビリテーションや栄養管理、褥瘡(床ずれ)の予防など、早期からのケアによって、できる限り長く活動的な生活を送ることが可能です。
重度認知症の具体的な症状や必要なケアについて詳しくは、重度認知症の症状について詳しく解説した記事をご参照ください。

健達ねっとECサイト

認知症についてさらに学びたい方へ

健達ねっとでは、認知症に関する正しい知識の普及に努めており、以下のような取り組みを行っています。

  • 専門家インタビューシリーズ
    健康・医療分野の専門家との対談を通じて、最新の認知症研究や治療法について分かりやすく解説しています。
    認知症専門医による予防指南や、実際の治療現場での知見をお届けしています。
  • 認知症教育への取り組み
    全国の小中高校で「認知症教育の出前授業」を実施し、これまで29校3,423名の方に認知症の正しい理解を広める活動を行っています。
    家族向けの学習機会も提供しており、認知症を「怖いもの」ではなく「理解できるもの」として捉えられるよう支援しています。
  • 専門書籍の出版
    認知症専門医による『認知症になりにくい人・なりやすい人の習慣』や、管理栄養士監修の『ハルと思い出めぐりごはん』など、実践的な書籍も出版しています。

これらの取り組みを通じて、認知症に関する不安を少しでも軽減し、「安心した生活」を送っていただけるよう支援しています。

リズム習慣

まとめ

アルツハイマー型認知症の進行速度は個人差が大きいものの、適切な知識を持つことで、その進行を穏やかにすることは可能です。

この記事の重要なポイントを振り返ってみましょう。

  • 進行は3段階で進む
    初期・中期・末期の各段階を理解し、備えることが大切です。
  • 「一気に進む」には原因がある
    環境の変化や体調不良など、急な悪化には必ず理由があります。
    原因を知り、適切に対処することで、症状が落ち着くことも少なくありません。
  • 進行を穏やかにする方法はある
    適切な医療、生活習慣の見直し、社会参加の維持など、ご家族ができることは多くあります。

最も大切なのは、ひとりで抱え込まないことです。
認知症は、ご本人だけでなく、ご家族にとっても大きな挑戦です。

かかりつけ医や地域包括支援センター、専門の介護サービスなど、利用できるサポートはいろいろあります。
この記事が、あなたの不安を和らげ、前向きな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

認知症の原因や予防法について包括的に学びたい方は、認知症の原因と予防法について詳しく解説した記事もあわせてお読みください。

監修者 メディカル・ケア・サービス

  • 認知症高齢者対応のグループホーム運営
  • 自立支援ケア
  • 学研グループと融合したメディア
  • 出版事業
  • 社名: メディカル・ケア・サービス株式会社
  • 設立: 1999年11月24日
  • 代表取締役社長: 山本 教雄
  • 本社: 〒330-6029埼玉県さいたま市中央区新都心11-2ランド·アクシス·タワー29F
  • グループホーム展開
  • 介護付有料老人ホーム展開
  • 小規模多機能型居宅介護
  • その他介護事業所運営
  • 食事管理
  • 栄養提供
  • 福祉用具販売

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