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はじめに:足の親指が激痛!それは体からの「SOS」かもしれない

「風が吹くだけで痛い」と言われる痛風。ある日突然、足の親指の付け根が赤く腫れ上がり、激痛に襲われる……そんなイメージをお持ちではないでしょうか。
しかし、痛風の本当の恐ろしさは、あの激痛そのものではありません。
痛風発作は、体の中で静かに進行している「高尿酸血症」という病気が引き起こす、いわば「氷山の一角」に過ぎないのです。
高尿酸血症は、単に関節が痛くなるだけでなく、高血圧、脂質異常症、糖尿病といった「生活習慣病」と密接に関わり、放置すれば腎臓病や心筋梗塞、脳卒中といった命に関わる病気のリスクを劇的に高めます。
この記事では、尿酸値が高くなるメカニズムから、生活習慣病との危険な関係、そして今日から始められる具体的な食事・生活改善策までを徹底解説します。
健康診断の結果が気になり始めた方、将来の健康寿命を延ばしたい方は、ぜひ最後までお読みください。
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「尿酸値が高い」とはどういうこと?高尿酸血症の基礎知識

尿酸の正体と「7.0mg/dL」の壁
そもそも「尿酸」とは何でしょうか。
尿酸は、細胞の核に含まれる「プリン体」という物質が体内で分解されてできる燃えカス(老廃物)です。
プリン体は食事から摂取されるだけでなく、新陳代謝によって体内でも生成されています。
通常、尿酸は血液に溶け込み、腎臓でろ過されて尿と一緒に排泄されます。
体内で作られる量と排泄される量のバランスが保たれていれば問題ありません。
しかし、このバランスが崩れ、血液中の尿酸濃度が高くなると「高尿酸血症」と診断されます。
その基準値は、「尿酸値 7.0mg/dL」を超えることです。
これは、血液中に溶けきれなくなった尿酸が結晶化し始める限界の数値です。
なぜ尿酸が増えるのか?3つのタイプ
高尿酸血症には、原因によって大きく3つのタイプがあります。
- 尿酸産生過剰型 : 体内で尿酸が作られすぎてしまうタイプ。過食、アルコールの過剰摂取、激しい運動などが原因となります。
- 尿酸排泄低下型 : 腎臓から尿酸をうまく排泄できなくなるタイプ。日本人の高尿酸血症患者の約6割がこのタイプと言われています。肥満やインスリン抵抗性(糖尿病予備軍)などが関与します。
- 混合型 : 上記2つの両方の原因を持つタイプ。
生活習慣病になっているかもしれないと気になる方も多いのではないでしょうか。生活習慣病になってしまう原因がわかれば、予防ができます。本記事では生活習慣病の原因について以下の点を中心にご紹介します。 生活習慣病の原因とは 生活習[…]
激痛の正体「痛風発作」のメカニズム
剥がれ落ちた結晶が引き起こす炎症
尿酸値が高い状態(7.0mg/dL以上)が続くと、溶けきれなくなった尿酸は針状の「尿酸塩結晶」となって、関節(特に関節液が溜まりやすい場所)に沈着します。
何らかのきっかけ(激しい運動、急激な尿酸値の変動、ストレスなど)でこの結晶が剥がれ落ちると、白血球がそれを異物とみなして攻撃し、激しい炎症を起こします。
これが「痛風発作」です。
発作の好発部位は、足の親指の付け根(第一中足趾節関節)です。
その他、足の甲、足首、膝、手首などにも起こります。
痛みが引いても「治った」わけではない
痛風発作は、通常1週間〜10日程度で嘘のように痛みが引きます。
しかし、これは炎症が治まっただけで、体内の尿酸結晶がなくなったわけではありません。
「痛くないから」と放置して治療を中断すると、関節の中で結晶はさらに増え続け、発作の頻度が増したり、関節が変形したり、「痛風結節」というコブができたりします。
【最重要】高尿酸血症と「生活習慣病」の危険なリンク

ここが本記事の核となる部分です。
尿酸値が高い人は、痛風だけでなく、他の生活習慣病を合併している確率が非常に高いことが分かっています。
肥満(メタボリックシンドローム)との関係
内臓脂肪が蓄積すると、脂肪細胞から遊離脂肪酸が放出され、肝臓でのプリン体合成を促進(尿酸産生過剰)します。
同時に、インスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性)ことで、腎臓での尿酸排泄機能が低下します。
つまり、肥満は「尿酸を作りやすく、出しにくい体」を作ってしまうのです。
高血圧・糖尿病・脂質異常症を合併しやすい理由
- 高血圧 : 尿酸自体が血管を傷つけたり、血圧を上げるホルモンを刺激したりする可能性があります。高尿酸血症の人の高血圧合併率は高いとされています。
- 脂質異常症(高中性脂肪血症) : 中性脂肪が高い食事やアルコールの摂取は、尿酸値を上げる要因と共通しています。
- 糖尿病 : インスリン抵抗性は尿酸値を上げると同時に、血糖値の上昇も招きます。
これらが重なると「動脈硬化」が急速に進行し、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる疾患のリスクとなります。
ある研究では、痛風患者の心血管疾患のリスクは健康な人に比べて高いことが示唆されています。
沈黙の臓器「腎臓」へのダメージ(CKD)
尿酸は腎臓から排泄されますが、尿酸が多すぎると腎臓自体に負担をかけます。
尿酸結晶が腎臓に沈着すると「痛風腎」となり、腎機能が低下します。
また、慢性腎臓病(CKD)になると尿酸を排泄できなくなり、さらに尿酸値が上がるという悪循環(・スパイラル)に陥ります。
最終的には人工透析が必要になるケースもあります。
尿酸値を下げる「食事」の鉄則
尿酸値をコントロールするためには、薬だけでなく食事療法が不可欠です。
プリン体が多い食品・少ない食品リスト
「プリン体=悪」と思われがちですが、プリン体は旨味成分でもあり、細胞の代謝に必要な物質です。
完全にゼロにするのではなく、「摂りすぎない」ことが重要です。
1日の摂取目安量は400mgです。
- レバー類(鶏レバー、豚レバーなど)
- 魚卵(白子、あんこうの肝など)
- 干物(マイワシの干物など)
- カツオ、イワシ、アジなどの青魚
- 卵
- 乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト)
- 穀類(ご飯、パン、麺類)
- 野菜、海藻類
特に乳製品(カゼイン)には、尿酸の排泄を促す作用があるため、積極的に摂りたい食品です。
「ビールならNG、焼酎ならOK」は本当?アルコールの真実
「ビールはプリン体が多いからダメだけど、焼酎やウイスキーならプリン体ゼロだから大丈夫」と思っていませんか?
確かにビールにはプリン体が多く含まれていますが、実はアルコールそのものに尿酸値を上げる作用があります。
- アルコールが分解される際に尿酸が作られる。
- アルコールの代謝で生まれる乳酸が、腎臓からの尿酸排泄を邪魔する。
- 利尿作用で脱水になり、尿酸値が濃縮される。
したがって、お酒の種類に関わらず、飲み過ぎはNGです。
日本痛風・尿酸核酸学会のガイドラインでは、1日のアルコール摂取目安量を「日本酒1合、ビール500ml、ウイスキーダブル1杯(60ml)」程度としています。
尿をアルカリ性に傾ける食材とは
尿が酸性(酸性尿)だと、尿酸が溶けにくく結晶化しやすくなり、尿路結石の原因になります。
尿をアルカリ性に近づける食品を摂ることで、尿酸を尿に溶かして排泄しやすくしましょう。
- 海藻類(わかめ、昆布、ひじき)
- 野菜(ほうれん草、人参、キャベツなど)
- キノコ類
- 芋類
- 大豆製品
薬に頼る前に!今日からできる「生活習慣」改善アクション
1日2リットルの水分補給が必要な理由
尿酸を体外へスムーズに出すためには、尿の量を増やすことが最もシンプルで効果的な方法です。
1日あたり2リットル以上の尿量を確保するために、水やお茶をこまめに飲みましょう。
ただし、ジュースや清涼飲料水は「果糖」が尿酸値を上げる原因になるため、水かお茶がベストです。
激しい運動は逆効果?推奨される有酸素運動
「運動不足解消のために筋トレを頑張ろう!」というのは素晴らしいことですが、無酸素運動(激しい筋トレやダッシュなど)は、新陳代謝を急激に活発にし、尿酸値を一時的に上昇させるため注意が必要です。
尿酸値を下げるためには、ウォーキング、軽いジョギング、水泳、サイクリングなどの「有酸素運動」が推奨されます。
肥満解消にもつながり、一石二鳥です。
ストレスと尿酸値の意外な関係
ストレスを感じると、自律神経やホルモンのバランスが崩れ、尿酸値が上がることがわかっています。
「A型行動パターン(精力的、競争心が強い、せっかち)」の人は尿酸値が高くなりやすいという研究もあります。
十分な睡眠をとり、リラックスする時間を持つことも立派な治療の一つです。
治療の進め方と薬の服用について
薬物療法の開始基準
生活習慣の改善だけでは尿酸値が下がらない場合、薬物療法が検討されます。
一般的に、尿酸値が7.0mg/dLを超えたら生活指導の対象となり、8.0mg/dL〜9.0mg/dL以上で薬物療法が検討されます(合併症の有無による)。
薬には、尿酸の生成を抑える薬と、排泄を促す薬があり、タイプに合わせて処方されます。
治療中に発作が起きたらどうする?
尿酸値を下げる薬を飲み始めると、急激に尿酸濃度が変化することで、結晶が剥がれ落ちて逆に痛風発作が起きることがあります(動員発作)。
しかし、ここで薬を自己判断で止めてはいけません。
医師の指示に従い、発作止めの薬(コルヒチンやNSAIDs)を併用しながら、焦らず治療を継続することが大切です。
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まとめ:尿酸値コントロールは「全身の健康」を守る鍵
「痛風は贅沢病」などと言われたのは昔の話です。
現代においては、飽食、運動不足、ストレス社会を生きる私たち全員がリスクを抱えています。
高尿酸血症の治療のゴールは、痛風発作を止めることだけではありません。
その背後にある動脈硬化、腎障害、心血管疾患といった重篤な病気を予防し、健康寿命を延ばすことにあります。
- 適正体重を維持する
- アルコールを控えめにする
- 水分をたっぷりとる
- 野菜や海藻を食べる
- 軽い運動を続ける
これらの習慣は、尿酸値だけでなく、血圧や血糖値、コレステロールの改善にもつながります。
足の痛みがなくても、健康診断で「尿酸値高め」と言われたら、それは体からの重要なサインです。
放置せず、今日から生活習慣を見直してみませんか?
- [*1] 日本痛風・核酸代謝学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」
- [*2] Ichida K, et al. Decreased extra-renal urate excretion is a common cause of hyperuricemia. Nat Commun. 2012
- [*3] Tsouli SG, et al. Pathogenesis, detection and treatment of hyperuricemia in patients with metabolic syndrome: an update. Curr Vasc Pharmacol. 2010
- [*4] Clarson LE, et al. Gout and the risk of vascular disease: A systematic review of observational studies.
- [*5] Choi HK, et al. Purine-rich foods, dairy and protein intake, and the risk of gout in men. N Engl J Med. 2004
- [*6] 健達ねっと「痛風の予防方法とは?食事や運動などの生活習慣の改善点を紹介」







