ビタミンB1は、食事から摂った糖質をエネルギーに変え、脳や神経の機能を健やかに保つために欠かせない必須栄養素です。
別名「疲労回復ビタミン」とも呼ばれ、不足すると倦怠感や食欲不振、進行すると「脚気」などの重篤な不調を引き起こす可能性があります。
本記事では、ビタミンB1の具体的な効果や疲労回復のメカニズム、多く含む食材、効率的な調理のコツ、不足しやすい人の特徴まで詳しく解説します。
- ビタミンB1の役割と歴史(鈴木梅太郎博士とオリザニン)
- ビタミンB1の2大効果(疲労回復・神経機能の維持)
- ビタミンB1が多く含まれる食品一覧(動物性・植物性)
- ビタミンB1不足がもたらす不調(脚気・ウェルニッケ脳症)
- 1日の推奨摂取量と無駄なく吸収を高める調理のコツ
日常の疲労感を軽減し、健やかな毎日を送るための参考にしてください。

スポンサーリンク
ビタミンB1とは?役割と発見の歴史
ビタミンB1は、水に溶けやすい「水溶性ビタミン」に分類される栄養素で、化学名を「チアミン」と呼びます。
体内で炭水化物(糖質)をエネルギーに変換する際の酵素を助ける「補酵素」として決定的な役割を果たします。

1. ビタミンB1の基本的な働き
- 糖質エネルギー代謝の補酵素:白米やパン、麺類、甘いものなどに含まれるブドウ糖を効率よく分解し、動かすためのエネルギーに変える。
- 脳・神経系の伝達サポート:脳の唯一の直接的エネルギー源であるブドウ糖の利用を支え、自律神経や手足の末梢神経の動きを正常に保つ。
- アルコール代謝の補助:体内でアルコールを分解・代謝する際にも多量に消費される。
2. 世界で初めて発見されたビタミン
ビタミンB1は、あらゆるビタミンの中で最初に発見された栄養素です。
1910(明治43)年、東京帝国大学の鈴木梅太郎博士が、当時日本で「国民病」として恐れられていた「脚気(かっけ)」の予防成分として、米ぬかの中から抽出・発見しました。
鈴木博士はこの成分を「オリザニン」と命名しました。その後、世界的なビタミン研究の進展にともない「ビタミンB1(チアミン)」と改称され、栄養学の歴史に大きな一歩を記すこととなりました。
スポンサーリンク
ビタミンB1の2大効果・メリット
ビタミンB1が身体にもたらす主要な効果は「疲労回復」と「神経系の維持」です。
1. 疲労回復・スタミナ維持効果
食事から摂取した糖質は、体内で「糖質 → ブドウ糖 → ピルビン酸 → アセチルCoA」という段階を経て、最終的な日常のエネルギーへと変換されます。
ビタミンB1は、このうち「ピルビン酸」から「アセチルCoA」への変換を強力にサポートします。
- ビタミンB1が十分にある場合:糖質がスムーズにエネルギーに変わるため、バテにくく、身体が軽く感じられます。
- ビタミンB1が不十分な場合:代謝が「ピルビン酸」の段階でストップし、エネルギーが生み出せなくなります。行き場を失ったピルビン酸は疲労物質である「乳酸」へと変わり、全身のだるさや重い疲労感の原因となります。
ビタミンB1を適切に摂ることで、疲労物質の蓄積を防ぎ、素早い体力の回復が期待できます。
2. 脳や末梢神経の機能を正常に保つ効果
脳が活動するためのエネルギー源は、主として「ブドウ糖」です。ブドウ糖をエネルギーに変えるにはビタミンB1が欠かせません。
ビタミンB1が不足すると脳がエネルギー欠乏を起こし、以下のような感情・認知機能の低下が起こりやすくなります。
- イライラや情緒不安定
- 集中力・記憶力の低下
- 思考力や意欲の衰え
さらに、脳からの指令を全身に伝える末梢神経のエネルギーも不足するため、手足のシビレ、感覚麻痺、筋力低下といった神経障害の防止にも深く関わっています。
ビタミンB1が多く含まれている食べ物一覧
ビタミンB1は、動物性食品では「豚肉」に突出して多く含まれています。植物性食品では「未精製の穀類(胚芽)」や「豆類・種実類」に豊富です。
1. 動物性食品(100gあたりのビタミンB1含有量)
| 食品名 | 部位・状態 | ビタミンB1含有量(mg) |
|---|---|---|
| 豚ヒレ肉 | 生 | 1.32 mg |
| 豚もも肉 | 生 | 0.96 mg |
| 豚ロース肉 | 生 | 0.80 mg |
| 豚肩ロース肉 | 生 | 0.75 mg |
| ウナギの蒲焼き | 調理済み | 0.75 mg |
| かつお節 | 削り節 | 0.55 mg |
| 鶏レバー | 生 | 0.38 mg |
| 豚レバー | 生 | 0.34 mg |
豚肉はどの部位を選んでもビタミンB1が非常に豊富で、特にヒレやもも肉などの赤身部位に多く凝縮されています。
2. 植物性食品(100gあたりのビタミンB1含有量)
| 食品名 | 状態 | ビタミンB1含有量(mg) |
|---|---|---|
| いりごま | 乾燥 | 0.49 mg |
| 胚芽米 | 炊飯前 | 0.18 mg |
| 玄米 | 炊飯前 | 0.16 mg |
| 全粒粉パン | 製パン | 0.17 mg |
| 大豆 | ゆで | 0.17 mg |
| あずき | ゆで | 0.15 mg |
| 木綿豆腐 | 生 | 0.09 mg |
出典:文部科学省『日本食品標準成分表』
白米(精白米)は精製の過程でビタミンB1を多く含む米ぬか・胚芽部分が除去されてしまうため、胚芽米や玄米、全粒粉製品を選ぶことで主食からの補給効率が高まります。
スポンサーリンク
ビタミンB1不足の症状と欠乏しやすい人の特徴
体内に蓄えにくいビタミンB1が不足すると、身体的・精神的な様々なトラブルが発生します。
1. ビタミンB1不足の初期症状
- 全身の強い倦怠感・だるさ
- 食欲不振・胃腸障害
- むくみ・動悸・息切れ
- 手足のシビレ・筋肉痛・肩こり
- イライラ・集中力の低下
2. 重篤な欠乏症(脚気・ウェルニッケ脳症)
ビタミンB1が著しく欠乏すると、命に関わる疾患を引き起こすリスクがあります。
- 脚気(かっけ):末梢神経障害による手足のシビレ・運動麻痺、膝蓋腱反射の低下に加え、心不全(脚気心)や全身の強いむくみを招く病気。
- ウェルニッケ・コルサコフ症候群:中枢神経の障害により、眼球運動障害(目が動かない)、歩行障害、意識障害を起こす。重症化すると記憶障害(近時記憶障害)や作話などの後遺症が残る。
3. ビタミンB1が不足しやすい人の特徴
日常の生活習慣や嗜好によって、ビタミンB1を急激に消費・欠乏させてしまうケースが多く見られます。
- 精白米、パン、清涼飲料水、甘いお菓子など糖質中心の食事が多い人(糖質代謝でビタミンB1が大量消費される)
- インスタント食品やファーストフードが多く、野菜や肉が不足している人
- 習慣的に大量のアルコールを摂取する人(アルコールの分解にビタミンB1が大量消費され、吸収も阻害される)
- 激しいスポーツを行う人・ハードな肉体労働をする人(エネルギー生成量が多いため要求量が上がる)
- 強いストレスを慢性的に受けている人

スポンサーリンク
1日あたりのビタミンB1摂取基準と平均摂取量
厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』に基づくビタミンB1の1日あたりの推奨摂取量です。
年齢・性別ごとのビタミンB1推奨量(mg/日)
| 年齢区分 | 男性(推奨量) | 女性(推奨量) |
|---|---|---|
| 1〜2歳 | 0.5 mg | 0.5 mg |
| 3〜5歳 | 0.7 mg | 0.7 mg |
| 6〜7歳 | 0.8 mg | 0.8 mg |
| 8〜9歳 | 1.0 mg | 0.9 mg |
| 10〜11歳 | 1.2 mg | 1.1 mg |
| 12〜14歳 | 1.4 mg | 1.3 mg |
| 15〜17歳 | 1.5 mg | 1.2 mg |
| 18〜49歳 | 1.4 mg | 1.1 mg |
| 50〜74歳 | 1.3 mg | 1.1 mg |
| 75歳以上 | 1.2 mg | 0.9 mg |
※妊婦・授乳婦は、各年代の推奨量に +0.2 mg/日 の付加が推奨されています。
出典:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』
日本人の現状:推奨量に届かない「潜在的不足」
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、成人のビタミンB1平均摂取量は1日あたり約0.9g〜0.95mg前後にとどまっており、成人男女ともに国の推奨量(1.1〜1.4mg)を満たせていません。
日常の食事から意識的に意識して摂る姿勢が求められます。
スポンサーリンク
ビタミンB1を無駄なく効率的に摂る調理・食事のコツ
ビタミンB1は「水に溶けやすく、熱にも一部弱い」という水溶性ビタミンの性質を持っています。調理法の工夫で残存率を大きく高められます。
1. 水に流さない調理法を選ぶ(蒸す・炒める・レンジ調理)
茹でたり煮たりすると、食材に含まれるビタミンB1が煮汁の中に溶け出してしまいます。
- 茹でる・煮る:残存率 約55〜65%
- 蒸す・レンジ加熱:残存率 約70〜75%
- 焼く・炒める:残存率 約85%
ビタミンB1を無駄なく摂取するには、「油で素早く炒める」「電子レンジで加熱する」「蒸し料理にする」のが最適です。煮物にする場合は、汁ごと食べられるスープや鍋物にしましょう。
2. 「アリシン」を含む食材(ニンニク・ニラ・ネギ)と組み合わせる
ニンニク、ニラ、玉ねぎ、長ねぎなどに含まれるにおい成分「アリシン」は、ビタミンB1と結合すると「アリチアミン」という物質に変化します。
アリチアミンのメリット:水溶性から油に馴染みやすい性質へと変わり、腸管からの吸収率が格段にアップします。また熱に強くなり体内に長くとどまるため、疲労回復効果を持続させることができます。(例:レバニラ炒め、豚肉のニンニク醤油焼きなど)
ビタミンB1が手軽に摂れるおすすめレシピ
毎日の献立に取り入れやすいビタミンB1たっぷりのおすすめレシピです。
1. 豚しゃぶとたっぷり野菜のおろし和え
豚肉のビタミンB1と、タレに含まれる生姜・にんにく(アリシン)の組み合わせで疲労回復に最適な一品です。
材料(2人分):豚薄切り肉(ロースやモモ)200g、豆腐1/2丁、レタス・トマト・きゅうり適量、大根おろし・すりおろし生姜・にんにく少々、ポン酢・ごま油適量
作り方:
- 豆腐は水切りして1口大に切り、野菜もお好みの大きさにカットする。
- 鍋に湯を沸かし、豚肉をほぐしながらサッとくぐらせ、ザルにあげて水気を切る(冷水にさらさない方が柔らかく仕上がります)。
- お皿に野菜、豆腐、豚肉を盛り付け、大根おろし、生姜、にんにく、ポン酢、ごま油を合わせたタレをかけて完成。
2. 豚肉と夏野菜のレンジ和風蒸し
電子レンジを使用することでビタミンB1の流出を防ぎ、栄養を閉じ込める時短レシピです。
材料(2人分):豚しゃぶ用肉150g、ナス1本、ズッキーニ1/2本、パプリカ1/4個、めんつゆ大さじ1.5、マヨネーズ・すりごま少々
作り方:
- ナス、ズッキーニは薄い輪切り、パプリカは細切りにする。
- 耐熱皿に野菜と豚肉を交互に重ねて並べ、めんつゆを回しかける。
- ふんわりとラップをかけ、電子レンジ(600W)で約4〜5分加熱する。
- 仕上げにマヨネーズとすりごまを振って完成。
スポンサーリンク
全13種類のビタミンの主な効果一覧
ビタミンB1以外のビタミンが持つ主な効果をまとめました。
1. 脂溶性ビタミン(4種類)
- ビタミンA:視覚機能の維持、皮膚・粘膜のバリア機能維持(レバー、緑黄色野菜)
- ビタミンD:カルシウムの吸収促進、骨や歯の形成・強化(鮭、サンマ、きのこ類)
- ビタミンE:強力な抗酸化作用、血流改善、細胞の老化防止(アーモンド、かぼちゃ、油脂)
- ビタミンK:血液凝固の促進(止血)、骨へのカルシウム定着(納豆、ブロッコリー)
2. 水溶性ビタミン(9種類)
- ビタミンB1:糖質のエネルギー代謝、疲労回復、神経機能維持(豚肉、玄米)
- ビタミンB2:脂質代謝の促進、皮膚・粘膜・髪の再生(レバー、納豆、卵)
- ビタミンB6:タンパク質・アミノ酸の代謝、免疫維持、神経安定(マグロ、鶏肉、にんにく)
- ビタミンB12:赤血球の作製(造血)、神経細胞の機能維持(あさり、レバー、海苔)
- ビタミンC:コラーゲンの生成、抗酸化作用、鉄分の吸収促進(柑橘類、ブロッコリー)
- 葉酸:赤血球の形成、DNA合成、胎児の発育サポート(枝豆、ブロッコリー)
- ナイアシン:三大栄養素の代謝、皮膚粘膜の維持、アルコール分解(鶏胸肉、落花生)
- パントテン酸:エネルギー代謝、ストレス緩和ホルモンの合成補助(レバー、アボカド)
- ビオチン:皮膚や髪の健康維持、三大栄養素の代謝補助(卵黄、ナッツ類)
スポンサーリンク
まとめ
ビタミンB1についての重要ポイントをまとめます。
- ビタミンB1は糖質をエネルギーに変え、疲労回復と脳・神経機能の維持を支える必須ビタミン
- 豚肉、うなぎ、玄米、大豆などに豊富に含まれる
- 不足すると、疲れやすさ、食欲不振、イライラのほか、脚気やウェルニッケ脳症を引き起こす
- 糖質やアルコールの摂りすぎ、激しい運動をする人は特に消費量が多く不足しやすい
- 水に溶けやすいため「炒める・蒸す・レンジ加熱」の調理法や「ニンニク・ニラ(アリシン)」との組み合わせが効果的
日々の食事に豚肉や玄米、薬味野菜をうまく取り入れ、ビタミンB1を効率よく補給して元気に過ごしましょう。


