疲労感が抜けない、イライラしやすいといった体調の不調は、糖質をエネルギーに変える「ビタミンB1」の不足が原因かもしれません。
ビタミンB1(チアミン)は、炭水化物(糖質)の代謝や神経機能の維持に不可欠な栄養素ですが、体内に溜め込んでおけないため現代人が特に不足しやすいビタミンのひとつです。
本記事では、ビタミンB1不足によって起こる身体症状や病気(脚気・ウェルニッケ脳症)、不足しやすい人の特徴、効率的にビタミンB1を補うための調理法や食事のポイントを詳しく解説します。
- ビタミンB1の基本的な働きと多く含まれる食べ物
- ビタミンB1不足が招く身体的・精神的な症状(脚気・ウェルニッケ脳症など)
- ビタミンB1不足に陥りやすい人の特徴と4つの主な原因
- 無駄なく吸収を高める調理法(アリシンの活用)と1日の推奨摂取量
日々の食生活を見直し、慢性的な疲労や体調不良を予防・改善するための参考にしてください。

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ビタミンB1(チアミン)とは?役割と多く含まれる食材
ビタミンB1は水に溶けやすい水溶性ビタミンのひとつで、化学名を「チアミン」と呼びます。体内でエネルギーを作り出すために欠かせない栄養素です。

1. ビタミンB1の主な働き
- 糖質を分解してエネルギーに変換する:食事から摂った炭水化物(白米、パン、麺類、甘いものなど)に含まれるブドウ糖をエネルギーに変える際の「補酵素」として働く。
- 神経機能を正常に保つ:脳の中枢神経や末梢神経の伝達機能を正常に維持し、手足の運動や皮膚の感覚をスムーズに保つ。
糖質を多く摂取してもビタミンB1が足りないとエネルギーへ変換されず、疲労物質として体内に蓄積されてしまいます。
2. ビタミンB1が多く含まれる食べ物
ビタミンB1は、動物性食品(豚肉や魚介類)のほか、未精製の穀類や大豆製品に多く含まれています。
| 食材カテゴリー | 主な食材 | 特徴・補足 |
|---|---|---|
| 肉類 | 豚ヒレ肉、豚ロース肉、豚赤身肉など | 豚肉はあらゆる食材の中でトップクラスの含有量 |
| 魚介類 | カツオ、ウナギ、タイ、サケ、タラコなど | スタミナ食材や赤身・白身魚に幅広く含まれる |
| 穀類(未精製) | 玄米、胚芽米、オートミール、全粒粉パン | 精白米(白米)に精製する過程で多くが失われる |
| 豆類・種実類 | 大豆、納豆、豆腐、ごま、アーモンド | 日常の小鉢やふりかけで手軽に補給可能 |
| その他 | にんにく、にら、ねぎ | アリシンが含まれ、ビタミンB1の吸収を高める |
疲労感がなかなか抜けないと感じている方は、意識して豚肉や玄米、豆類などを日々の献立に取り入れましょう。
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ビタミンB1が不足するとどうなる?初期症状から重篤な疾患まで
ビタミンB1が不足すると、糖質の代謝が滞ってエネルギー不足に陥るため、身体機能や神経系にさまざまな支障をきたします。
1. 初期症状(全身の不調)
不足の初期段階では、全身のエネルギー不足と末梢神経の不調により、以下のような症状が現れます。
- 慢性的な疲労感・だるさ
- 食欲不振・胃腸障害
- イライラ・集中力の低下・記憶力の減退
- 手足のシビレ・むくみ
- 動悸・息切れ
「寝ても疲れが取れない」「理由もなくイライラする」といった症状は、ビタミンB1不足の初期サインかもしれません。
2. 重症化リスク1:手足の末梢神経障害「脚気(かっけ)」
ビタミンB1不足が深刻化すると、末梢神経と心臓・循環器系に障害が起きる「脚気(ビタミンB1欠乏症)」を発症します。
- 症状:食欲不振、下肢のむくみ、手足のシビレや麻痺、歩行障害
- 膝蓋腱反射の消失:ひざの下(腱)を叩いても足が跳ね上がらない「膝蓋腱反射(しつがいけんはんしゃ)の低下・消失」で確認されることが多い
- 進行した場合:心拡大や心不全(脚気心)を引き起こし、最悪の場合は命を落とす危険性もあります。
現代では歴史上の病気と思われがちですが、偏食やインスタント食品中心の食事、清涼飲料水の大量摂取などが原因で若年層の脚気が再発するケースがあります。
3. 重症化リスク2:脳の中枢神経障害「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」
ビタミンB1不足によって脳の中枢神経に障害が生じると、非常に危険な「ウェルニッケ脳症」を発症します。
- 主な症状:眼球運動障害(眼の麻痺や痙攣)、歩行不調(フラつき)、意識障害・錯乱
- 発症リスク:アルコール依存症の方に多く見られるほか、妊娠初期の激しいつわり(妊娠悪阻)で栄養補給が困難になった妊婦が発症することもあります。
ウェルニッケ脳症が適切に治療されず重症化すると、後遺症として「コルサコフ症候群」へと移行します。深刻な記憶障害(近時記憶障害)、見当識障害(時間や場所がわからなくなる)、作話(辻褄を合わせるために嘘の話をつくる)などの精神症状が残り、元の生活に戻ることが難しくなります。

ビタミンB1不足になりやすい人の特徴
現代社会において、どのような人がビタミンB1不足に陥りやすいのでしょうか。
1. お菓子やジュース、清涼飲料水を多く摂る人
糖質(清涼飲料水に含まれる異性化糖、お菓子、パンなど)を多く摂ると、その分解代謝のために大量のビタミンB1が体内で消費されます。食事全体の栄養バランスが崩れている若年層で不足が目立ちます。
2. 糖質に偏った手軽な食事(カップ麺・ファーストフード)が多い人
忙しさからカップ麺やコンビニ弁当、ファーストフードなどのインスタント食品ばかり食べていると、ビタミンB1の摂取量が圧倒的に不足します。
3. 習慣的に大量のアルコール(酒)を飲む人
アルコールを肝臓で分解・代謝する際、体内のビタミンB1が大量に使用されます。また、大酒家は食事量が減ってビタミンB1の摂取量が落ちるほか、アルコールによって腸管でのビタミンB1吸収自体が阻害されるため、極めて欠乏しやすい状態になります。
4. 激しい運動を行うスポーツ選手や体力を使う人
運動量が多いアスリートや力仕事をする人は、エネルギー代謝が盛んなため、通常の人よりも多くのビタミンB1を消費・必要とします。
5. 胃切除後・人工透析を行っている患者や妊婦
- 胃切除後の患者:栄養素の消化・吸収機能が低下しやすいため不足します。
- 人工透析患者:水溶性ビタミンであるビタミンB1が透析液と一緒に体外へ流出してしまうため不全を起こしやすくなります。
- 妊婦(つわり時):重度のつわりで食事が摂れない場合、ビタミンB1が急速に消費され欠乏します。
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ビタミンB1が不足する原因と効率的な摂取方法・調理の工夫
なぜビタミンB1は不足しやすいのか、その理由と食事面での解決法を解説します。
ビタミンB1が不足しやすい4つの理由
- 水溶性のため体内に溜め込めない:汗や尿と一緒に毎日排泄されるため、まとめ食いができず日々の補給が必要。
- 加工・精製によって失われやすい:主食が玄米から精白米に変わったことで、米ぬかに含まれるビタミンB1を摂取する機会が大きく減った。
- 水に溶けやすく熱に弱い:調理段階で水に溶け出したり、加熱によって破壊したりして30〜50%が失われてしまう。
- 嗜好品(酒・タバコ・糖質)による消費:糖質やアルコールの過剰摂取により、必要以上の速度で体内消費が進む。
効率よく補うための調理法・食事の工夫
ビタミンB1は調理時の工夫によって無駄なく体内に取り込むことができます。
1. 「アリシン」を含む野菜と組み合わせて吸収率を劇的に高める
にんにく、ニラ、長ねぎ、玉ねぎなどに含まれるにおい成分「アリシン」は、ビタミンB1と結合すると「アリチアミン」という物質に変化します。
アリチアミンのメリット:水溶性から脂溶性に近い性質へと変わり、腸管からの吸収率が飛躍的に高まる。また熱に強くなり、分解されにくく血中に長くとどまるため、効果的にビタミンB1を体内へ届けることができる。
(例:豚肉とニラの炒め物、豚しゃぶのにんにく醤油がけなど)
2. 調理工程での流出を防ぐ
- 米を研ぎすぎない:無洗米を活用するか、研ぐ回数を減らしてビタミンB1の流出を防ぐ。
- 主食を未精製のものに置き換える:白米に玄米やもち麦を混ぜる、全粒粉パンやライ麦パンを選ぶ。
- 汁ごと食べる料理にする:煮物やスープ、鍋物にすることで、スープに溶け出したビタミンB1も残さず摂取する。
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ビタミンB1の1日あたり推奨摂取量と過剰摂取のリスク
厚生労働省が定める『日本人の食事摂取基準(2025年版)』におけるビタミンB1の1日あたりの基準量は以下の通りです。
ビタミンB1の食事摂取基準(mg/日)
| 年齢区分 | 男性(推定必要量) | 男性(推奨量) | 女性(推定必要量) | 女性(推奨量) |
|---|---|---|---|---|
| 3〜5歳 | 0.6 mg | 0.7 mg | 0.5 mg | 0.6 mg |
| 8〜9歳 | 0.8 mg | 0.9 mg | 0.7 mg | 0.8 mg |
| 15〜17歳 | 1.3 mg | 1.5 mg | 1.0 mg | 1.2 mg |
| 18〜49歳 | 1.2 mg | 1.4 mg | 0.9 mg | 1.1 mg |
| 50〜74歳 | 1.1 mg | 1.3 mg | 0.9 mg | 1.1 mg |
| 75歳以上 | 1.0 mg | 1.2 mg | 0.8 mg | 0.9 mg |
※妊婦は+0.2mg/日、授乳婦は+0.3mg/日を推奨量に付加することが推奨されています。
出典:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』
エネルギー代謝が活発な成長期(15〜17歳)に最も多くのビタミンB1が必要とされることがわかります。
ビタミンB1を摂りすぎたらどうなる?(過剰摂取について)
基本的には、普段の食事からビタミンB1を多く摂りすぎても、体内の上限を超えた分は尿として排泄されるため、過剰摂取による過剰症や健康被害のリスクは極めて低いとされています。
そのため『日本人の食事摂取基準』でも耐容上限量は設定されていません。
ただし、サプリメントや高用量の医薬品などで日常的に極端な過剰摂取(1日当たり数千mg単位など)を継続した場合、頭痛、頻脈、かゆみ、皮膚の発疹などが現れる可能性が報告されています。サプリメントを利用する際は、表示されている1日の摂取目安量を厳守しましょう。

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まとめ
ビタミンB1(チアミン)の不調・不足について重要なポイントをまとめます。
- ビタミンB1は糖質をエネルギーに変え、神経系を正常に保つために欠かせない水溶性ビタミン
- 不足すると、初期症状として疲労感・だるさ・食欲不振・イライラ・むくみが現れる
- 深刻な欠乏状態が続くと「脚気」や「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」などの重篤な疾患を引き起こす
- インスタント食品の多用、糖質・清涼飲料水の摂りすぎ、大量飲酒をする人は不足しやすい
- 豚肉、玄米、大豆などを取り入れ、にんにくやニラ(アリシン)と一緒に調理することで吸収効率が大幅にアップする
ビタミンB1は体内に蓄積することができません。日々のバランスの良い食事とちょっとした調理の工夫で、毎日しっかりビタミンB1を補い、元気に動ける身体をつくりましょう。


