ビタミンDは日光を浴びることで生成されます。
そのため、ビタミンD不足を解消するには日光浴が必要不可欠です。
ではどのくらいの時間、日光を浴びればよいのでしょうか?
この記事ではビタミンDと日光の関係について、以下の項目を中心に解説します。
- ビタミンDの働き
- 日光浴とビタミンDの関係
- 適度な日光浴の時間の長さ
- 日光浴の危険性
またビタミンDが妊活において、重要な栄養素であることについても紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。
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ビタミンDの働き
ビタミンDは腸からのカルシウムの吸収率を高める働きがあります。
ビタミンDが不足している状態では、カルシウムが十分吸収されず、体内はカルシウム不足に陥ります。
カルシウムは骨の原料です。
カルシウムが腸から豊富に吸収され、血液中のカルシウム濃度が高まれば、血液中のカルシウムが骨に取り込まれて骨密度が増加します。
またビタミンDには免疫力を高める機能もあります。
具体的には、ビタミンDには体内に侵入してきた細菌やウィルスを食べて破壊する「マクロファージ」を活性化させる機能や、免疫機能が過剰になり正常な細胞まで破壊してしまう状態を抑制する機能などがあります。
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ビタミンDに日光は必要なのか
私たちの皮膚は日光を浴びることでビタミンDを生成できます。
ここでは、ビタミンD生成の仕組みについて解説します。
日光浴によるビタミンD生成の仕組み
日光(太陽光)に含まれる紫外線がビタミンDの生成に関わります。
紫外線は、波長の長さによってUV-A、UV-B、UV-Cの3つに分けられます。
UV-Cはオゾン層に吸収されるため、地表に届くのはUV-AとUV-Bです。
UV-Aは波長が長く、窓やガラスも透過するため屋内にも届き、「生活紫外線」という呼ばれ方もします。
UV-BはUV-Aに比べると波長が短く、屋内で浴びることはありませんが、屋外での日焼けの原因となります。
ビタミンDの生成に関わるのはUV-Bで、皮膚がUV-Bを浴びると、皮膚に存在する7-デヒドロコレステロールという物質を材料にしてビタミンDが生成されます。
UV-Bは屋内では浴びられないため、ビタミンDの生成のためには屋外での日光浴が必要です。
必要な日照時間
ビタミンD生成に必要な日照時間は、季節や地域の紫外線の強さによって違います。
また、UV-Bは皮膚の細胞のDNAを傷つけ、皮膚がんの原因になるため、皮膚への悪影響を及ぼさない範囲での日光浴が重要です。
10㎍(マイクログラム)のビタミンD生成に必要な時間、および皮膚に悪影響が出はじめる時間を札幌、つくば、那覇の3地点で検討した研究報告があります。
晴天日に顔と両手の甲を露出させたという前提で時間が算出されています。
それによれば、夏季(7月の12時)で那覇は5分、つくばは6分、札幌では8分で10㎍のビタミンDが生成されますが、皮膚への悪影響は那覇で16分、つくばで20分、札幌では25分で出はじめるという結果でした。
冬期(12月の12時)では、10㎍のビタミンDが生成されるのに那覇で14分、つくばで41分、札幌では139分かかり、皮膚への悪影響は那覇で42分、つくばで98分、札幌で300分以上かかるという結果でした。
一日のうちでは昼の12時頃、季節でいうと6月から8月にかけて紫外線がもっとも強く、同じ12時で比べれば、北の札幌より緯度が低い南の那覇の方が紫外線は強いです。
沖縄は北海道と比べて年間で2倍程度紫外線量が多くなっています。
また、10㎍のビタミンDが生成されるのに夏季では那覇と札幌で3分ほどしか差がなく、この時期は地域を限定せずに10分程度の日光浴が望ましいといえます。
しかし冬季では、那覇と札幌で約120分の差が出ますので適切な日光浴の時間は地域によって変わると考えたほうがよいでしょう。
必要な量
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書によれば、成人でのビタミンDの食事摂取の必要量として示されているのは10㎍/日です。
これはアメリカ・カナダの食事摂取基準で示されている推奨量の15 ㎍/日から5㎍/日を引いた値として提示されています。
5㎍/日という数字は冬季の札幌で、晴天日ではない場合の日光浴によるビタミンDの生成量として算出されたものです。
アメリカ・カナダでの食事摂取基準の数字は日光浴による皮膚でのビタミンD生成を考慮していないため、この引き算をしたということです。
食事からのビタミンD摂取の必要量として示された数字は10㎍/日でしたが、実際の日本人の調査データではなかなか食事から1日あたり10㎍を摂取できていない現状がうかがわれます。
一例をあげれば、令和元年国民健康・栄養調査では、日本人の食事からのビタミンDの平均摂取量は6.9㎍/日でした。
この実態をふまえ、実現可能性も加味して、食事からのビタミンD摂取の目安量としては、18歳以上の男女で8.5㎍/日と設定されました。
18歳以上の男女で8.5㎍/日という目安量は高齢者(65歳以上)においても変わらず、妊婦、授乳婦であっても変わりません。
18歳未満、とくに小児では成人と比べた体格差を考慮して、8.5㎍/日より少ない量が目安量として設定されています。
1歳未満の男女(乳児)は5.0㎍/日が目安量となっています。
一方、18歳未満でも成人以上の数字が設定されていることもあり、15~17歳の男性では9.0㎍/日、12~14歳の女性で9.5㎍/日と目安量が設定されています。
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ビタミンD不足による症状
ビタミンD不足によりカルシウムの腸からの吸収量が足りないと、血液中のカルシウム濃度の低下を防ぐために、骨の中のカルシウムが血液中に溶け出し、骨密度が減少します。
高齢者では骨粗鬆症や骨折のリスクが高まります。
乳幼児のビタミンD不足は、カルシウム不足からのけいれんにつながります。
また、骨の強度が低下して曲がりやすくなる「骨軟化症」の原因にもなります。
乳幼児や成長期の子どもの場合「くる病」と呼びます。
骨軟化症(くる病)では、骨の強度の低下により、姿勢を維持するために筋肉や関節に負担がかかることで、骨、背中、関節などの痛みにつながります。
日光の浴びすぎは危険
紫外線は皮膚がんの原因以外にも健康への有害性を有しています。
例えば、皮膚のシミやしわは加齢による生理的な変化であるだけではなく、紫外線による慢性傷害によって生じる結果でもあります。
そのため、適切な紫外線対策をして防ぐことが大切です。
また、紫外線の眼への悪影響も知られており、紫外線角膜炎、翼状片(よくじょうへん)、白内障はいずれも紫外線が関係していると考えられる眼の病気です。
必要なビタミンDを体内で獲得するには日光浴を活用することが効果的ではありますが、紫外線の有害性を踏まえれば日光の浴びすぎは危険です。
他のビタミンの機能
ビタミンD以外のビタミンの種類と効果についても解説します。
ビタミンは大きく2つに分かれます。
油に溶けやすい脂溶性ビタミンと、水に溶けやすい水溶性ビタミンの2つです。
ちなみに、ビタミンDは脂溶性ビタミンに分類されます。
脂溶性ビタミン
脂溶性ビタミンはビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの4種類です。
それぞれの主な働きと含まれている食品は以下のとおりです。
種類 | 主な働き | 含まれている食品 |
ビタミンA | ・成長や、生殖機能の維持に役立つ ・夜盲症や視力低下を防ぐなど、視覚を維持する | うなぎ・レバー・乳製品など |
ビタミンD | ・骨の形成を促す | マグロ・鮭・干ししいたけなど |
ビタミンE | ・抗酸化作用があり 、細胞の老化を防ぐ | アーモンド・ピーナッツ・カボチャなど |
ビタミンK | ・血液を凝固させる | 納豆・ブロッコリー・海苔など |
水溶性ビタミン
水溶性ビタミンは9種類あります。
それぞれの主な働きと含まれている食品は以下の通りです。
種類 | 主な働き | 含まれている食品 |
ビタミンB1 | ・糖質の代謝をスムーズにし、神経機能を維持する | 豚肉・玄米・大豆など |
ビタミンB2 | ・皮脂の分泌を適正に保つ | レバー・魚介類・焼きのりなど |
ビタミンB6 | ・アミノ酸の代謝を促し、タンパク質の利用効率を高める | にんにく・ピスタチオ・マグロなど |
ビタミンB12 | ・赤血球の生成を促進し、神経細胞の維持を促す | のり・しじみ・レバーなど |
ビタミンC | ・鉄分の吸収や、コラーゲンの生成を促進する | アセロラ・レモン・ピーマンなど |
葉酸 | ・血液の生成に関与し、貧血を予防する | ブロッコリー・レバー・枝豆など |
ナイアシン | ・糖質の代謝で重要な働きをする | レバー・鶏肉・落花生など |
パントテン酸 | ・糖質・脂質・タンパク質の代謝で重要な働きをする | レバー・卵・牛乳など |
ビオチン | ・皮膚や粘膜を維持する | レバー・大豆・しいたけなど |
ビタミンDは妊活にも重要
ビタミンDは不妊治療においても重要な栄養素です。
体外受精の治療をしている女性を対象に、血中ビタミン濃度と妊娠率の関係を調べた研究では、血中ビタミン濃度が十分な場合に妊娠率が高まるという結果が報告されています。
また、40歳以上の女性では血中ビタミンD濃度が高いほど卵巣予備能検査での数値が良いという研究報告があります。
卵巣予備能検査は、卵巣に残された卵子の数を推定し、妊娠のチャンスがどの程度残されているかを予測するものです。
ビタミンDの不妊治療における重要性は女性だけに限られず、ビタミンDを十分に摂取できていることが男性の精子の運動能力、受精能力を高めるという結果が報告されています。
ビタミンDと日光の関係まとめ
これまで、日光浴とビタミンDの関係、適度な日光浴の時間の長さなどを中心にお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- ビタミンDにはカルシウムの腸からの吸収率を高める働きや免疫力を高める働きがある
- 私たちの皮膚は屋外で紫外線のUV-Bを浴びることでビタミンDが生成される
- 夏季であれば10分程度の日光浴が望ましいが、冬季で適度な日光浴の時間の長さは地域によって変わる
- 紫外線は皮膚がんの原因になるほか、眼の病気にも関係している
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。