健康診断の項目の1つに、尿中の糖分やたんぱく質を調べる「尿検査」があります。
尿は、体の健康状態を示すバロメーターでもあります。
体から排出された尿で、目には見えない腎臓や尿路系の状態を把握することもできます。
本記事では健康診断の尿検査について以下の点を中心にご紹介します。
- 健康診断の尿検査でわかることは?
- 尿検査で異常が出た場合
- 尿検査で採尿するタイミングってあるの?
- 健康診断の尿検査の前日・当日の注意点
健康診断の尿検査について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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健康診断とは
健康診断とは生活習慣病をはじめとして、病気の早期発見を目的とした検査です。
全身の健康状態を検査するため、病気そのものを予防したり早期治療のきっかけにもなります。
健康診断は一般健診ともいわれ、企業や事業者は従業員に健康診断を受けさせる義務があります。
これは労働安全衛生法で決められており、事業者が従業員の健康管理を守る義務ともいえます。
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健康診断の尿検査でわかること
健康診断の多くの項目の中には「尿検査」が入っており、排出される尿の成分を分析して健康状態を調べます。
尿検査でどのようなことがわかるのか見ていきましょう。
尿蛋白
尿蛋白検査では、尿の中に含まれているたんぱく質を調べます。
通常は血中の栄養素などは腎臓の糸球体でろ過され、たんぱく質も再吸収されるので、尿の中に含まれることはありません。
もし尿蛋白が陽性の場合は、尿の「ろ過機能」やたんぱく質の再吸収が正常に行われていないことになります。
尿蛋白が陽性になる機能の障害は以下の3つが考えられます。
- 腎前性→腎臓よりも上に位置している臓器に異常があり、たんぱく質の再吸収が出来ない
- 腎性 →腎臓に異常がみられ、ろ過や再吸収のはたらきが不完全
- 腎後性→腎臓よりも下に位置する膀胱や前立腺の炎症があり、たんぱく質が混入している
しかし尿たんぱくが出たからと言って病気の可能性があるとは言い切れません。
発熱のときや運動をしたあと、生理のときなど一時的に尿蛋白が陽性になることがあります。
尿糖
尿糖検査は、尿の中に含まれる糖分を調べます。
何らかの原因で血液中の糖分が一定を超えると尿に混ざって排出されます。
通常、尿が作られるときは糖分が糸球体でろ過されたあと、近位尿細管で吸収されます。
そのため、尿に含まれる糖分はごく少量といわれています。
糖分は試験紙で簡単に検出することができるため、糖尿病のスクリーニング検査として用いられます。
健康な場合であっても、ストレスや甘いものを大量に食べたときは一時的に陽性(+)なることがあります。
尿潜血
人間ドックで尿潜血(にょうせんけつ)の検査が行われることがあります。
この検査では尿の中にヘモグロビン(赤血球の成分の1つ)が混ざっていないかを調べます。
尿試験紙法は血尿を調べるスクリーニング検査で、反応がある場合は尿路のどこかで出血している可能性があります。
おもに腎臓や尿路系の炎症や腫瘍などがある場合に見られる症状です。
血尿の程度によって試験紙の色調も変わりますので、それをもとに追加の検査や治療の判断をします。
尿沈渣
上記の尿たんぱく、尿糖、尿潜血が陽性だった場合に、尿沈渣(にょうちんさ)という検査をします。
尿が腎臓で作られたあと、尿路や膀胱を通っているあいだに混入したものを調べ、病気の部位や種類を割り出します。
方法は尿を遠心分離させ混入している沈殿物がどのような物質なのかを顕微鏡で調べます。
もし赤血球が混入していればその形や量を調べ、変形の有無も確認します。
変形した赤血球が検出された場合は、尿をろ過する腎臓のフィルター機能に異常があると考えられます。
尿比重
尿比重は「尿の中の水分」と「水分以外の溶質」の重量を算出したものです。
尿には水と老廃物(尿素、ナトリウム、窒素など)が含まれており、その割合のことです。
健康なときは尿の比重が1.010〜1.030の範囲で変動して、水よりやや高い状態です。
たとえば、たくさん水を飲んだ時は、不要な水分が通常よりも多く排出され尿比重が1.010以下の薄い尿が排出されます。
反対に水分摂取が不足してしまうと、尿が濃縮され比重が高い尿が排出されます。
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健康診断の尿検査の結果の見方と基準値
では健康診断の結果の見方と基準値について以下にまとめていきます。
尿蛋白
【基準値:陰性(ー)】
正常の場合は尿の中にたんぱく質が検出されることはありません。
陽性(+)の場合は腎機能に何らかの異常が考えられます。
陽性が出たときは、急性腎炎、前立腺や膀胱の腫瘍、尿路系疾患、ネフローゼ症候群の可能性があります。
尿糖
【基準値:陰性(ー)】
尿中に一定以上の糖分が含まれている状態のときは「陽性(+)」になります。
陽性のときは、糖尿病や腎機能が異常を起こしている可能性があります。
この尿糖検査では、糖尿病や甲状腺機能亢進症、腎機能障害などの有無を知ることができます。
ただ病気とは関係なくても妊娠期間中やステロイド薬の服用でも陽性反応がでる場合があります。
尿潜血
【基準値:陰性(ー)】
尿の中に赤血球が混入しているときは「陽性(+)」という結果になります。
陽性の場合は、膀胱炎や尿管結石、膀胱がんなどの尿路系の疾患の可能性があります。
ただし女性の生理期に検査をしたときは、陽性になってしまうため尿検査だけ日程をずらす方が良いでしょう。
尿沈渣
【基準値】/1視野内に見える個数
赤血球:3個以内
白血球:2個以内
上皮細胞:少数
円柱細胞:0
尿中の細胞や細菌を顕微鏡を用いて調べる検査です。
細胞成分には、赤血球や白血球、上皮細胞やそれらが円柱状に固まったものなどがあります。
「1視野」とは、顕微鏡を400倍にしたその範囲内にどれだけの数が見えるかを判定します。
尿の中に赤血球が多くみられる状態の場合は、腎機能や尿路系の疾患がある可能性があります。
健康な人でもごくわずかな赤血球が出現しますが、1視野に3個以上ある場合は血尿と判定されます。
赤血球が多くみられるときは急性糸球体腎炎や腎盂腎炎、尿道炎などの可能性があります。
白血球が多い場合は腎盂腎炎や膀胱炎など、炎症による疾患が疑われます。
上皮細胞は粘膜を生成している細胞です。
顕微鏡の視野で多く確認されるときは炎症で剝がれ落ちていると考えられ、膀胱炎や尿道炎の可能性があります。
円柱細胞は、通常の場合は複数の視野でも見られることはないため、1個でも認められると尿細管の異常が疑われます。
慢性腎炎やネフローゼ症候群、腎盂腎炎などが考えられます。
尿比重
【基準値:1.010~1.030】
通常は尿中の水分よりも、老廃物の方が重くなっています。
しかし尿の成分が薄くなり尿比重が1.010以下のときは、腎不全や尿崩症の可能性が考えられます。
尿が濃縮され比重が高い場合は、糖分やたんぱく質が漏れ出し、糖尿病や脱水、心不全、ネフローゼ症候群の可能性があります。
健康診断の尿検査で異常がでた場合
尿検査で異常値が出た場合、病気だけが原因だけでなく、その時の体の状態も影響します。
ストレスや激しい運動、ひどく疲れているときも陽性と検出されることがあるのです。
また食事も尿に大きく影響されますので、健康診断を受ける病院の指示にしたがって食事を摂ることが大切です。
「今回は疲れていたから陽性かも」などと、自己判断するのは禁物です。
毎年、尿検査で異常値がでる場合は、何らかの疾患の可能性も否定できません。
検査結果に「要再検査」と記載されていた場合は、医療機関に受診するようにしましょう。
健康診断の尿検査で採尿するタイミング
採尿するときは、出始めの尿ではなく「中間尿」を採取しましょう。
中間尿とは「排尿の途中の尿」のことで、尿道の雑菌や分泌物を混入させない方法です。
また生理期間中の場合は、排尿前にティッシュで軽くふき取り、尿の中に経血が混ざらないようにしましょう。
尿が出にくいときは、焦らずに水分を摂取してしばらく待つというのも有効です。
その場合は医療スタッフの方にも伝えておくとスムーズです。
採尿する量は、カップの場合は目盛りの50㏄ほどあれば問題ありません。
健康診断の尿検査の前日・当日の食事の注意点
尿検査をする前日は、とくに制限はなく自由に飲食が可能です。
ただし、ビタミンが含まれるドリンク剤やサプリメントなどは尿検査に影響が出てしまいます。
また当日も、検査前に糖分を含む飲み物やガムなどを食べると正常な数値が出なくなるため避けるようにしましょう。
健康診断の当日は、尿検査のほかに別の検査にも数値に影響が出るため「朝ごはんは食べない」ことがほとんどです。
生理中の場合の健康診断の尿検査
生理期間中でも尿検査を受けることはできますが、経血が混ざり「潜血」の診断をされることがあります。
原因が経血なのか、病気で出血しているのか判断が難しいため、再検査になることが予想されます。
健康診断当日に生理期間が重なる場合は、事前に健康診断自体の実施日を変更するか、尿検査だけを後日に変更してもらうのが好ましいでしょう。
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健康診断の尿検査で血尿だった場合
健康診断で「血尿」と診断された場合は「泌尿器科」への受診が良いでしょう。
泌尿器科では超音波検査を行い、腎臓や膀胱、前立腺の観察を行います。
超音波検査では、尿路結石や膀胱腫瘍、前立腺肥大などの疾患の有無を把握することができます。
膀胱に十分な尿が溜まっている状態であれば検査を実施することができ、痛みもなく簡単に行えます。
超音波検査で何らかの所見があった場合は、さらにCTやMRI、レントゲンや膀胱鏡、採血などの検査を行います。
血尿を起こす原因として代表的なのが「膀胱がん」です。
痛みなどの自覚症状がないのに血尿が出るのが特徴で、尿中のがん細胞の有無を検査します。
また膀胱鏡検査は電子スコープを挿入し、膀胱内の状態を視診しますが、痛みを伴うので麻酔を用いることもあります。
どのような病気も早期発見することで、体への負担も最小限に抑えることができます。
なにか違和感がある場合は早めに医療機関を受診することが大切です。
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健康診断の尿検査のまとめ
ここまで健康診断の尿検査についてお伝えしてきました。
健康診断の尿検査について要点をまとめると以下の通りです。
- 健康診断の尿検査でわかることは、尿蛋白や血尿、尿糖などを検出し腎臓や尿路系の疾患の可能性の有無
- 尿検査で異常が出た場合は医療機関に受診することがおすすめ
- 尿検査で採尿するタイミングは、出始めの尿ではなく中間尿を採取する
- 健康診断の尿検査の前日・当日の注意点は、ビタミンを含む飲み物や薬は控え、朝ごはんは摂らないようにする
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。