※本記事は、富山県公式予算資料、厚生労働省の事務連絡、各補助金公募要領等の一次情報に基づき構成されています。
「健達ねっと」による情報提供であり、特定の制度利用を推奨するものではありません。
詳細な申請要件は必ず各自治体の公式サイトをご確認ください。
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序論:富山県が目指す「経済の好循環加速化」と医療福祉の役割

富山県政が掲げる基本方針「富山県経済の好循環加速化パッケージ」において、医療・介護分野の維持は最優先事項の一つです。
令和7年度、日本は「2025年問題」の分水嶺を越え、医療需要が爆発的に増加する一方で、それを支える現役世代が急減しています。
富山県は全国2位の持ち家率(76.6%)を誇る堅実な地域ですが、一方で介護離職が起きれば、高い労働参加率という強みが失われます。
今回の支援パッケージは、単なるコスト補填ではなく、 「賃上げ」と「生産性向上」をセットで進め、持続可能なケアシステムへ脱皮させるための戦略的投資 です。
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医療分野:賃上げと物価高騰の「二階建て」支援構造
富山県が令和7年度11月補正予算で計上した「医療分野における賃上げ・物価上昇に対する支援事業」は、総額約4億1,800万円規模にのぼります。
本事業の最大の特徴は、支援金が「賃金支援分」と「物価支援分」の二階建てになっている点です。
有床診療所への重点配分:地域医療のベッドを守る
有床診療所(19床以下)は、24時間の体制維持に伴う光熱費と人件費の負担が極めて大きいため、手厚い支援が設定されています。
【表1】有床診療所に対する支援単価(1床あたり)
| 区分 | 単価 | 備考 |
|---|---|---|
| 賃金支援分 | 172,000円 | 職員のベースアップ原資 |
| 物価支援分 | 213,000円 | 高騰する光熱費・食材費への補填 |
| 合計 | 385,000円 | 19床の場合、約731万円の支援 |
19床のフル稼働施設であれば、年間利益に匹敵する規模の公費が注入されることになり、経営存続の強力な下支えとなります。
無床診療所・歯科診療所への定額支援
外来を中心とする診療所に対しては、以下の定額支援が行われます。
【表2】無床診療所・歯科診療所に対する支援単価
| 施設類型 | 賃金支援分 | 物価支援分 | 合計支援額 |
|---|---|---|---|
| 医科無床診療所 | 1,150,000円 | 2,170,000円 | 3,320,000円 |
| 歯科診療所 | 1,150,000円 | 2,170,000円 | 3,320,000円 |
注目すべきは、物価支援分が賃金支援分の約2倍に設定されている点です。
高度医療機器や歯科ユニットが消費する膨大な電気代の高騰を直撃している実態が反映されています。
保険薬局に対する「規模別傾斜配分」の戦略
大手チェーンと地域密着型薬局の体力差を考慮し、店舗数に応じた配分が導入されています。
【表3】保険薬局に対する法人規模別支援額(1店舗あたり)
| 運営法人規模(店舗数) | 賃金支援分 | 物価支援分 | 合計支援額 |
|---|---|---|---|
| 5店舗以下 | 1,145,000円 | 285,000円 | 1,430,000円 |
| 20店舗以上 | 170,000円 | 250,000円 | 420,000円 |
小規模薬局への支援額は大手法人の約3.4倍です。
これにより、中山間地域を含む県内全域での医薬品アクセスを死守しようとする県の強い意志が読み取れます。
介護・障害福祉分野:「サービス継続」と「BCP」の強化
介護分野では、災害や感染症拡大時においてもサービスを中断させないための実効性が問われています。
高齢者施設等に対するサービス継続支援事業
令和7年度補正により予算が3億5,720万円まで拡充された本事業は、以下の3構成となっています。
- 設備・備品購入支援: 補助率 実質 10/10。
自家発電機や衛生用品の備蓄等。 - 食材費高騰対策: 定員1人あたり 18,000円 。
利用者の食費負担増を抑制。 - 事業所規模別の定額補助: 通所・訪問系サービスへのきめ細やかな配分。
【表4】通所・訪問系サービスに対する継続支援額
| サービス種別 | 規模・区分要件 | 支援額 | 算定ロジック |
|---|---|---|---|
| 通所介護 | 利用者数 300人以下 | 200,000円 | 小規模事業所の基礎経費支援 |
| 601人以上 | 400,000円 | スケールメリットを勘案 | |
| 訪問介護 | 年間訪問 200回以下 | 300,000円 | 過疎地等の低稼働事業所を死守 |
| 2,001回以上 | 500,000円 | 多頻度稼働の移動コスト増に対応 | |
| 集合住宅併設型 | 200,000円 | 移動コストが低いため低額設定 |
訪問回数が極めて少ない事業所に30万円を配分する点は、富山県が「過疎地の命綱」を市場原理に任せず、公的に保護する姿勢の表れです。
障害福祉分野独自の賃上げ(月額6,000円)
処遇改善が遅れがちな障害福祉分野に対し、県は職員1人当たり月額6,000円相当(年額72,000円)の独自補助(予算3.89億円)を実施しています。
生産性向上戦略:補助率3/4の「介護テクノロジー」導入
富山県は、労働力不足を補う切り札としてICT・ロボット導入を強力に推進しており、「とやま介護テクノロジー普及・推進センター」を核とした伴走型支援を展開しています。
圧倒的な補助率と支援上限
国の標準(1/2)を大きく上回る「3/4(75%)」という補助率が最大の特徴です。
【表5】介護テクノロジー導入支援の補助上限額(令和7年度)
| 導入機器区分 | 補助上限額 | 備考 |
|---|---|---|
| 見守り支援システム | 30万円 / 台 | 法人上限1,000万円。 導入効果が最も高い。 |
| 介護ソフト | 100万〜250万円 | 職員数に応じた段階的設定。 |
| パッケージ型導入 | 1,000万円 / 事業所 | センサー+インカム+ソフトの連携導入。 |
申請の必須条件:セキュリティとデータ連携
補助金受給には以下の対応が不可欠です。
- Security Action宣言: サイバー攻撃対策(一つ星または二つ星の宣言)。
- LIFE(科学的介護)活用: データを活用したケアの実践。
- 生産性向上委員会の設置: PDCAサイクルを回す体制構築。
これらをクリアすることで、補助率が引き上げられるだけでなく、県内中小企業向けの「省力化・省人化モデル枠(上限1,000万円)」との併用も視野に入ります。
行政実務:年度をまたぐ「繰越明許費」の活用術
令和7年度予算の特筆すべき点は、多くの事業で「繰越明許費」が設定されていることです。
- 意義: 通常、単年度予算は3月末までに納品・支払を完了させる必要がありますが、ロボットの納期遅延や工事の遅れが生じるリスクがあります。
- 効果: 議会の議決により予算を令和8年度に繰り越せるため、事業者は年度末の多忙期に追われることなく、4月以降も確実に事業を完了させることができます。
結論:富山県の事業者がとるべき戦略的総括

令和7年度の富山県医療・介護支援パッケージは、以下の3軸で構成されています。
- 地域インフラの死守: 訪問介護や小規模薬局への手厚い傾斜配分により、撤退を防ぐ。
- 生産性と賃上げの完全連動: ICT化を要件とし、補助率を3/4に高めることで現場改革を促す。
- 実態即応型の財政運用: 繰越明許費などの仕組みを使い、現場の事務負担を軽減する。
富山県内の事業者は、これらの支援を単なる「ボーナス」として消費するのではなく、2040年の現役世代激減期を見据えた「経営体質の強化」への原資として活用してください。
- 富山県:令和7年度11月補正予算案 概要資料
- 富山県:介護テクノロジー定着支援事業補助金 申請の手引き
- 厚生労働省:介護保険最新情報 Vol.1448(医療・介護等支援パッケージ)
- 富山市:福祉・介護職員等処遇改善加算 事務連絡
- とやま介護テクノロジー普及・推進センター 実施事業一覧






