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「花いちもんめ。」日本初のアルツハイマー映画の金字塔

  • 公開/放送日:1985年10月10日

あらすじ

高名な考古学者として活躍してきた鷹野冬吉は、アルツハイマー型認知症と診断される。

妻の菊代が献身的に介護を続けていたが、その菊代が心臓発作で急逝してしまう。

長男夫婦の家に引き取られた冬吉だが、認知症の症状は次第に進行し、徘徊や失禁などの問題行動が増えていく。

嫁の桂子は懸命に義父の介護にあたるが、家族の間には次第に亀裂が生じ始める。

介護の負担と家族の絆、そして人間の尊厳をめぐる葛藤の中で、家族それぞれが冬吉との関わり方を模索していく。

特徴・見どころ

1985年という時代に、日本社会がこれから直面する「高齢化」という現実を、真正面からスクリーンに描き出し、「老人問題」映画というジャンルを確立した記念碑的作品。
それが、この『花いちもんめ。』です。

本作は、単なるヒット作に留まらず、当時の日本社会に大きな衝撃と議論を巻き起こしました。
その圧倒的なクオリティとテーマの重要性は高く評価され、第9回日本アカデミー賞では最優秀作品賞、最優秀脚本賞、そして主演の千秋実さんが最優秀主演男優賞を受賞するという快挙を成し遂げています。
日本の映画史において、そして介護と家族の問題を考える上で、決して避けては通れない金字塔と言える作品です。

「痴呆」と呼ばれた時代に、アルツハイマー病を描いた衝撃

本作が公開された1980年代半ば、アルツハイマー型認知症は、まだ社会的な認知度が非常に低く、「痴呆」という言葉のもとで、漠然とした「老いによる物忘れ」や「奇行」としてしか認識されていませんでした。
それは多くの場合、家庭内の問題として隠され、公に語られることはタブー視されがちなテーマでした。

本作は、そのタブーに真っ向から切り込みました。
主人公は、かつては厳格で尊敬を集める存在だったはずの父親・鷹野菊太郎。
彼が、アルツハイマー型認知症によって、徐々に記憶を失い、愛する家族の顔さえ分からなくなっていく。
徘徊し、失禁し、まるで子供のように無邪気に振る舞うかと思えば、突然激高する。
こうした認知症の症状を、一切美化することなく、生々しい現実として容赦なく描き出します。

この菊太郎を演じた名優・千秋実さんの演技は、まさに「鬼気迫る」という言葉がふさわしく、観る者の胸を鷲掴みにします。
一人の人間の尊厳が、病によって失われていく過程の恐ろしさと、それでもなお垣間見える人間味の深さ。
この演技があったからこそ、本作は単なる社会派作品を超え、深い人間ドラマとして観る者の心に刻まれました。

家族の葛藤、特に「嫁」の視点から描く介護のリアル

本作のもう一つの、そして最大の功績は、「介護する家族」の苦悩と葛藤を、痛切なまでにリアルに描いた点です。
特に焦点が当てられるのが、十朱幸代さん演じる嫁・治子の姿です。

義父である菊太郎を、彼女は献身的に介護します。
しかし、終わりが見えない介護生活。
自分の時間、人生、そして精神が、日々すり減っていく現実。
義父への敬意や愛情と、介護から逃げ出したいという本音の間で、彼女の心は引き裂かれます。
「いい嫁」であろうとする自分と、限界に達し、ついには義父に対して厳しい言葉をぶつけてしまう自分。
この治子の葛藤は、当時の、そして現代にも通じる多くの「介護を担う女性(特に嫁)」の共感を呼び、その悲痛な叫びは社会現象となりました。

菊太郎の認知症の症状が進行するにつれ、家族関係は音を立てて軋み始めます。
介護の負担を巡る夫婦の亀裂、経済的な問題、そして「誰が、いつまで、どうやって面倒を見るのか」という、答えの出ない問い。
「花いちもんめ」という、一見すると無邪気な子供の遊びのタイトルが、実は「誰かが選ばれ、誰かが犠牲になる」という家族の介護の本質を、皮肉に突きつけているかのようです。

日本の高齢化社会が抱えるであろう問題を、これほどまでに先駆的に、そして痛切に提起した作品は稀有です。
公開から数十年が経過し、超高齢社会となった今だからこそ、本作が投げかけた問いは、さらに重く、深く、私たち一人ひとりに響き渡ります。

作品詳細

監督 伊藤俊也
脚本家 松田寛夫
主要キャスト
上映時間 122分
放送局/制作 東映
日本

監修者 メディカル・ケア・サービス

  • 認知症高齢者対応のグループホーム運営
  • 自立支援ケア
  • 学研グループと融合したメディア
  • 出版事業
  • 社名: メディカル・ケア・サービス株式会社
  • 設立: 1999年11月24日
  • 代表取締役社長: 山本 教雄
  • 本社: 〒330-6029埼玉県さいたま市中央区新都心11-2ランド·アクシス·タワー29F
  • グループホーム展開
  • 介護付有料老人ホーム展開
  • 小規模多機能型居宅介護
  • その他介護事業所運営
  • 食事管理
  • 栄養提供
  • 福祉用具販売

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