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健達ねっと>映画・ドラマ>介護>家族再生の物語「折り梅」~希望を咲かせる介護

家族再生の物語「折り梅」~希望を咲かせる介護

  • 公開/放送日:2002年3月16日

あらすじ

愛知県に住むパート勤めの主婦・巴は、夫の裕三、中学生の娘、小学生の息子との4人暮らし。
そこに夫の母・政子が同居することになる。

ほどなくして政子はアルツハイマー型認知症と診断され、日常生活に支障をきたし始める。
巴は仕事を続けながら義母の介護に奮闘するが、徐々に心身ともに疲弊していく。

しかし、政子の母が幼い頃に語った「梅は折られても皮から養分を吸って咲き続ける」という言葉の意味を思い出し、家族みんなで支え合うことの大切さに気づいていく。

特徴・見どころ

本作『折り梅』は、単なる一本の映画として消費されることなく、劇場公開後も「この映画を、一人でも多くの人に届けたい」という観客自身の熱意によって、全国各地で自主上映会が広まっていったという、稀有な歴史を持つ名作です。

それは、本作が描く物語が、スクリーンの中だけの話ではなく、私たち自身の、あるいは私たちのすぐ隣にある「現実」と地続きであったからに他なりません。
松井久子監督が実話をもとに描き出したのは、介護という重い現実と、それによって試され、再構築されていく家族の絆の物語です。

「嫁」の視点から描く、介護のリアルな葛藤

物語の中心となるのは、原田美枝子さん演じる主婦・政子です。
彼女は、夫の母親、つまり「義母」がアルツハイマー型認知症を発症したことをきっかけに、否応なく「介護」という現実に直面します。
本作が多くの共感を呼んだ最大の理由は、この「嫁」という立場から見た介護の日常を、一切の美化やごまかしなく、克明に描き出した点にあります。

一方、その義母・キヨを演じるのは、名優・吉行和子さん。
吉行さんは、認知症の進行によって、徐々に記憶や自分が誰であるかさえ失っていく姿を、驚くほど自然に、静かに演じています。

「認知症の演技」として誇張するのではなく、そこに「ただ居る」かのようなリアリティ。
だからこそ、介護する政子の焦燥感や疲労、そして愛情と憎しみの間で揺れ動く心の葛藤が、より一層際立つのです。

「いい嫁」「いい妻」「いい母」であろうと努めてきた女性が、終わりが見えない介護によって、精神的に追い詰められていく。
夫は「お前の母さんじゃないだろう」と、どこか他人事で協力的ではない。

社会から孤立していく政子の姿は、介護を経験した多くの人々の心を深く揺さぶりました。

なぜ、タイトルは「折り梅」なのか

これほどまでに過酷な現実を描きながら、本作が絶望的な物語で終わらないのは、タイトルの「折り梅」に象徴的な意味が込められているからです。
梅の花は、冬の厳しい寒さの中で、どの花よりも先に、凛として咲き誇ります。

本作における「折り梅」は、まさにその困難な状況でも希望を失わずに咲き続ける、人間の強さの象徴として描かれます。
認知症の義母が、ただ無心に折り続ける「折り梅」。

それは、介護に疲れた政子の目には、当初、意味のない行動に映ったかもしれません。
しかし、その行為に込められた思いや、家族がその「折り梅」を通して再び繋がっていく過程こそが、本作の温かい光となっています。

バラバラになりかけた家族が、義母の介護という現実を通して、お互いにどう向き合い、どう支え合っていくのか。
困難の先に、確かに存在する希望の形を、この「折り梅」は示唆しています。

「家族」から「社会」へ。支え合いの重要性

本作は、家族の絆の再生を描くと同時に、「介護は家族だけの責任なのか」という、鋭い社会的メッセージを投げかけます。
政子が孤立していったのは、家族の協力が得られなかったこと、そして社会的なサポート体制が十分でなかったことが大きな要因です。

本作は、介護環境の整備や、夫や子どもたちを含めた家族全員の協力、そして地域や専門機関のサポートが、いかに重要であるかを痛感させます。
自主上映会が全国に広がった背景には、この「介護を社会全体で支えるべきだ」というメッセージへの、強い賛同があったのです。

認知症の進行と、それに伴う家族の変化を、介護者の視点から丁寧に描いた本作。
今、介護に直面している方、将来に不安を感じている方、すべての人にとって、「一人ではない」という勇気を与えてくれる、必見の名作です。

作品詳細

監督 松井久子
脚本家 松井久子
原作 小菅もと子「忘れても、しあわせ」
主要キャスト
上映時間 111分
放送局/制作 パンドラ
日本

監修者 メディカル・ケア・サービス

  • 認知症高齢者対応のグループホーム運営
  • 自立支援ケア
  • 学研グループと融合したメディア
  • 出版事業
  • 社名: メディカル・ケア・サービス株式会社
  • 設立: 1999年11月24日
  • 代表取締役社長: 山本 教雄
  • 本社: 〒330-6029埼玉県さいたま市中央区新都心11-2ランド·アクシス·タワー29F
  • グループホーム展開
  • 介護付有料老人ホーム展開
  • 小規模多機能型居宅介護
  • その他介護事業所運営
  • 食事管理
  • 栄養提供
  • 福祉用具販売

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