【最新】認知症の「幻覚」はなぜ起こる?種類・原因・効果的な対処法と受診の目安を解説

  • 「誰もいないはずの部屋を指さして『知らない人が立っている』と言う」
  • 「夜中に小さな虫がたくさん這っていると怖がる」

など、ご家族の認知症に伴う「幻覚」の症状に驚き、どう対応すればよいか悩んでいませんか?

認知症による幻覚は、本人が嘘をついているのではなく、脳の神経細胞の障害や視覚・認知機能の低下により、本人には「本当にはっきりと見えたり聞こえたりしている」状態です。

そのため、周囲が「そんなものはいない!」と強く否定すると、本人は強い恐怖や不安を感じ、症状が悪化してしまうことがあります。

本記事では、認知症の幻覚のメカニズムから、「錯覚」との違い、幻覚の種類(幻視・幻聴など)、起こりやすい認知症のタイプ、ご家族がすぐ実践できる具体的な対処法と環境づくり、受診すべき診療科まで分かりやすく解説します。

目次

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認知症の症状とは?中核症状と周辺症状(BPSD)

認知症の症状は、大きく「中核症状」と「周辺症状(BPSD:行動・心理症状)」の2つに分類されます。

1. 中核症状

脳の神経細胞が壊れることで直接引き起こされる障害です。

  • 記憶障害:新しい出来事を覚えられない、体験全体を忘れる。
  • 見当識障害:日付、時間、現在地、人間関係が分からなくなる。
  • 理解・判断力の低下:複雑な状況変化に対応できない。
  • 実行機能障害:料理や買い物の手順を計画・実行できない。
  • 失語・失行・失認:言葉が出ない、道具が使えない、物の認識ができない。

2. 周辺症状(BPSD)

中核症状をベースに、本人の性格、体調、心理状態、周囲の接し方や生活環境などが複雑に影響し合って現れる精神・行動面の症状です。

「幻覚」をはじめ、「抑うつ」「不安」「徘徊」「妄想」「暴言・暴力」「睡眠障害」などがBPSDに該当します。

周辺症状は適切なケアや環境調整によって症状を大幅に軽減できる点が特徴です。

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認知症の「幻覚」とは?「錯覚」との決定的な違い

「幻覚」とは、実際には存在しない対象を、あたかも本当に存在するように感知してしまう症状です。

日常会話では似た言葉として「錯覚」も使われますが、医学的には明確な違いがあります。

幻覚と錯覚の違い一覧

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区分状態の定義具体的な例
幻覚(げんかく)実在しないものを、五感(視覚・聴覚等)で実感して感知する。何もない壁や床を指して「知らない子供が座っている」と訴える(幻視)。
錯覚(さっかく)実在する対象を、脳の認識エラーにより誤って捉えてしまう。ハンガーにかかった黒い服を「不審な男」に見間違える。

認知症の方の生活空間では、見誤り(錯覚)がきっかけとなって幻覚に発展ケースも多いため、この2つの違いを理解しておくことが大切です。

幻覚の4つの分類と具体的な症状例

幻覚は、影響を受ける五感(感覚器官)のタイプによって主に4つに分類されます。

1. 幻視(げんし)

認知症で最も頻繁に見られる幻覚のタイプです。

  • 具体的な症状:「部屋の隅に子供が立っている」「布団の上を小さな虫がたくさん這っている」「すでに亡くなったはずの家族がそこに座っている」など。
  • 特徴:形や色が具体的で生々しく、本人は「本物がそこにいる」と確信しています。

2. 幻聴(げんちょう)

周囲には聞こえない音が本人にだけ聞こえる症状です。

  • 具体的な症状:誰も喋っていないのに「お前はダメな奴だという悪口が聞こえる」「遠くで娘が助けを呼ぶ声がする」など。
  • 特徴:不安感や被害妄想と結びつきやすく、本人が警戒心を強める原因になります。

3. 幻臭(げんしゅう)・幻味(げんみ)

実際にはない匂いや味を感じる症状です。

  • 具体的な症状:周囲は何も感じないのに「焦げ臭い匂いがする」「料理に異物や毒が入っていて苦い味がする」など。
  • 特徴:食事の拒否(拒食)や「毒を盛られた」という被害妄想につながりやすい傾向があります。

4. 体感幻覚(たいかんげんかく)

自分の身体の内部や表面に異常を感じる症状です。

  • 具体的な症状:「皮膚の下を虫が這い回っている」「お腹の中にヘビがいる」など。
  • 特徴:衣服を何度も脱ごうとしたり、体を強く掻きむしったりする動作を伴うことがあります。

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幻覚が起こる3つの主な原因

なぜ認知症になると幻覚が引き起こされるのでしょうか。原因は大きく分けて3つあります。

【1. 脳の視覚・知覚ネットワークの障害(病気による直接的原因)】

脳の後頭葉(視覚情報を処理する部分)などの知覚や神経細胞が変性・萎縮し、目から入った情報を正しく映像として組み立てられなくなります。

【2. 視力・聴力の低下や環境要因(錯覚・誤認)】

加齢に伴う白内障や難聴、部屋の暗さや影、壁の薄い模様などが刺激となり、脳が誤った映像や音を補完してしまいます。

【3. 身体的不調・脱水・薬の副作用・せん妄】

便秘や発熱、脱水症状、服薬中の薬の副作用(抗コリン作用のある薬など)や、意識の混濁を伴う「せん妄」が引き金となって幻覚が現れることがあります。

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幻覚症状が起きやすい認知症の種類

幻覚(特に幻視)は、すべての認知症で均等に起こるわけではありません。疾患のタイプによって現れやすさが大きく異なります。

認知症タイプと幻覚の特徴比較

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認知症のタイプ幻覚の現れやすさ主な症状と特徴
レビー小体型認知症極めて高い(代表的症状)初期から非常に具体的で鮮明な「幻視」が現れる。手足の震え(パーキンソン症状)や調子の波(変動性)を伴う。
アルツハイマー型認知症中〜進行期に増加記憶障害が中心だが、進行に伴い見当識障害から物盗られ妄想や見間違い(錯覚)が幻覚へ発展する。
脳血管性認知症一時的・斑状に発生脳梗塞や脳出血の部位により症状が変わる。感情のコントロールが効かなくなる「感情失禁」を伴いやすい。
前頭側頭型認知症比較的に低い幻覚よりも、理性が働きにくくなる社会規範の欠如や同じ行動を繰り返す「常同行動」が目立つ。

特に「レビー小体型認知症」では、脳内に「αシノクレイン」という特殊なタンパク質(レビー小体)が蓄積し、後頭葉の視覚認知機能が低下するため、病気の初期段階からリアルな幻視が高頻度で発生します。

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幻覚症状が出た際の正しい対処法とNG行動

ご家族が「部屋に人がいる」と訴え始めたとき、周囲の対応によって本人の状態は大きく変わります。

1. 【NG行動】絶対に「そんなのいない!」と否定・論破しない

家族としては「誰もいないよ、しっかりして!」と現実を教えたくなりますが、否定されることは本人にとって「自分の見えている世界を理解してもらえない」という強い孤立感と恐怖を与えます。

興奮が高まり、怒りや暴言につながるため厳禁です。

2. 【基本姿勢】本人の不安な気持ちに共感し耳を傾ける

本人の言葉をさえぎらず、まずは「そこに男の人が見えているんだね」「怖かったね」と本人の感情(怖さ・不気味さ)を受け止めて安心させることが最優先です。

3. 具体的な工夫で安心感を与える

  • 追い払う仕草をする:「あ、本当ですね。あっちに行ってね、と追い払っておきましたよ」「部屋の鍵を閉めておきますね」と演技を交えて伝えることで、本人が安心することがあります。
  • 幻視がある場所に一緒に行ってみる:本人が怖がっている場所に一緒に行き、明るく灯りをつけたり、その場所に触れたりすることで自然と消える場合もあります。
  • 注意(気を)逸らす:好きな音楽を流す、お茶を淹れる、別の部屋へ移動するなど、意識を別の場所へ向けさせます。

部屋の環境・生活リズムの見直しで幻覚を予防する

お部屋の環境を少し整えるだけで、見間違いや幻覚の発生頻度を大幅に減らすことができます。

室内環境の改善チェックポイント

  • 1. 部屋を明るくし、影(シルエット)を作らない:薄暗い部屋は影や黒い物体が見間違いの原因になります。照明を明るいものに変えましょう。
  • 2. 鏡やガラス、黒い家具の配置を見直す:夜間の窓ガラスへの映り込みや鏡に映る自分の姿を「知らない不審者」と誤認することがあります。夜間はカーテンを閉め、鏡には布をかけるなどの対策が有効です。
  • 3. リアルな模様・置き物を減らす:壁紙の細かい模様や渦巻き柄、リアルな人形、ハンガーにかかった服は虫や人に見えやすいので整理整頓します。
  • 4. 規則正しい生活リズムを作る:夜間の不眠や日中の傾眠は「せん妄」や幻覚を引き起こします。朝は太陽の光を浴び、日中は適度に身体を動かしてメリハリをつけましょう。

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受診すべきタイミングと適切な診療科

幻覚が頻繁に起こる場合や、本人が恐怖で夜眠れない・興奮して暴れるような場合は、無理をせず医療機関を受診しましょう。

受診すべき診療科

  • 物忘れ外来(認知症外来 / メモリークリニック)
  • 脳神経内科(神経内科)
  • 精神科 / 神経科

※まずは、かかりつけ医や地域の「地域包括支援センター」へ相談し、専門医への紹介状を書いてもらうのもスムーズな方法です。

医療機関での治療アプローチ

医療機関では、原因疾患の鑑別(レビー小体型認知症や他の脳疾患などの特定)を行った上で、治療方針を決定します。

  • 非薬物療法・環境調整:まずは生活環境の見直しやご家族への対応アドバイスが中心となります。
  • 薬物療法の活用:幻覚による恐怖や興奮が強く、生活に大きな支障がある場合は、少量の抗精神病薬や抑肝散(漢方薬)などが検討されます。

※注意:特にレビー小体型認知症の患者様は、抗精神病薬に対する過敏症(過剰に反応して副作用が強く出やすい性質)があるため、薬を使用する際は専門医のもとで極めて慎重な投与・管理が必要です。

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まとめ:正しい理解と共感で本人の安心を守ろう

認知症による幻覚は、脳の不調によって本人の目に現実として映し出されている症状です。

  • 幻覚は本人の感覚としては「100%リアルな現実」である
  • 絶対に否定せず、まずは寄り添って不安を受け止める
  • 部屋を明るくし、影や模様などの見間違いの原因(環境)を取り除く
  • レビー小体型認知症などの可能性を考慮し、早めに「物忘れ外来」や「脳神経内科」へ相談する

症状の背景を正しく理解し、専門機関や介護サービスを上手に頼りながら、ご家族自身の心と体の健康も大切にしていきましょう。

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