認知症は嚥下障害を引き起こす?症状・認知症別の特徴・3つの原因・リハビリ法まで徹底解説

食べ物や飲み物をスムーズに飲み込めず、むせたり喉につかえたりする「嚥下障害(えんげしょうがい)」。

嚥下障害は単に加齢による筋肉の衰えだけでなく、認知症の進行に伴って生じやすい代表的な合併症状・BPSDの一つです。放置すると誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)や窒息、栄養失調などを引き起こすリスクが高まるため、適切な理解と早期のアプローチが重要となります。

「認知症と嚥下障害にはどのような関係があるのか?」「アルツハイマー型とレビー小体型で症状はどう違うのか?」「自宅でできる嚥下リハビリや予防法は?」といった疑問をお持ちの方に向けて、本記事では認知症ごとの嚥下障害の特徴をはじめ、具体的な症状、発症原因、正しい嚥下の流れ、リハビリ法まで分かりやすく解説します。

目次

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認知症と嚥下障害の関係とは?

嚥下(えんげ)とは、食べ物を目や匂いで認識し、口に入れて噛み砕き、喉から食道・胃へと送り込む一連の動作全般を指します。このどこかの段階に不具合が生じる状態が「嚥下障害」です。

認知症になると、「脳からの指示がうまくいかない(神経伝達の障害)」「食べ物だと正しく認識できない(認知機能障害)」「飲み込む筋肉がスムーズに動かない(運動機能障害)」といった理由から、高い頻度で嚥下障害を伴うようになります。

認知症で嚥下障害が起こる主なプロセス
  1. 食事を「食べ物」と正しく認識できず、口に入れない・口の中で止まる
  2. 飲み込むタイミング(嚥下反射)が遅れ、気管に入りそうになる
  3. 口や喉の筋肉の協調運動が失われ、スムーズに喉奥へ送れない

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認知症の種類別に見る「嚥下障害」の特徴

認知症の原因となる疾患タイプによって、あらわれる嚥下障害のパターンや時期が異なります。

1. アルツハイマー型認知症(認知の障害が中心)

アルツハイマー型認知症では、初期〜中期の段階では身体的な運動機能が比較的保たれています。そのため、「飲み込む筋肉そのもの」より「食べ物を認識・処理する脳の機能」に障害が生じるのが特徴です。

主な症状

  • 目の前の料理を「食べ物」と認識できず、手をつつけない(認知期の障害)
  • 食べ物を口に入れたまま噛まず、いつまでも口の中に溜め込んでしまう
  • 口に入っているのに飲み込む動作(ゴクン)へ移れない

病気が高度に進行した末期段階になると、全般的な脳機能の低下に伴い、飲み込む運動機能自体も低下してむせや誤嚥が顕著になります。

2. レビー小体型認知症(運動・自律神経の障害が中心)

レビー小体型認知症は、パーキンソン症状(手足の震え、筋肉のこわばり、動作の緩慢)や自律神経障害を伴いやすい認知症です。そのため、病気の初期〜中期段階から物理的な「飲み込む動作の障害」があらわれやすいのが特徴です。

主な症状

  • 喉の筋力低下や動きの遅れにより、飲み込もうとしても喉を通らずにむせ込んでしまう
  • 唾液や水分の誤嚥(気管への流れ込み)が多く見られる
  • 喉に食べ物が残りやすく、つかえ感が生じる

3. 脳血管性認知症(脳卒中部位による影響)

脳梗塞や脳出血の部位によって症状が異なりますが、嚥下を司る脳幹や延髄、延髄へつながる神経経路(錐体路など)が障害されると、発症直後から片麻痺や球麻痺に伴う激しい嚥下障害(むせ・誤嚥)が生じることがあります。

見逃さないで!嚥下障害の代表的な症状7選

日常の食事風景の中で以下のようなサインが見られたら、嚥下障害が始まっている可能性があります。

嚥下障害の主なサイン
  • ① 食事中や食後に頻繁に「むせる」
  • ② 突然「咳き込む」
  • ③ 喉につかえ感があり、飲み込みづらそうにする
  • ④ 食べ物や水分が口からこぼれ落ちる
  • ⑤ 食事中や食後に「ガラガラ声(湿性声音)」になったり痰が増える
  • ⑥ 食事に異常に時間がかかるようになる(疲れ果てる)
  • ⑦ 体重が急激に減少する・熱を繰り返す(誤嚥性肺炎の疑い)

各症状の詳細

むせる・咳き込む:水分や食べ物が誤って気管に入りそうになった際、防衛反応として喉の外へ排出しようと起こります。

飲み込みづらい・喉につかえる:喉の筋力や反射が低下し、食道へ送り込む力が弱まることで胸元につかえを感じます。

食べ物が口からこぼれる:口唇(唇)や頬の筋肉が衰え、口をしっかり閉じられなくなるためこぼれ出します。

痰(たん)が増える:微量の食べ物や唾液が気管に流れ込み(不顕性誤嚥)、気管支の分泌物が増えることで痰が多くなります。誤嚥性肺炎の重要な初期症状です。

食べるのに時間がかかる:一口あたりの処理に時間がかかり、途中で疲れて食事を中断してしまうため、栄養不足につながります。

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嚥下障害を引き起こす3つの原因

嚥下機能の低下には、大きく分けると3つの原因が存在します。

嚥下障害の3大原因
  1. 器質的原因(口から胃までの構造上の問題)
  2. 機能的原因(神経や筋肉の働き・加齢による衰え)
  3. 心理的原因(うつ状態や認知低下による食欲・意識の低下)

1. 器質的原因(構造上の障害)

口、舌、喉、食道などの「形や構造」に問題がある場合です。
口内炎、歯周病・虫歯による咀嚼困難、腫瘍(咽頭がん・食道がんなど)、炎症や術後の後遺症などが当てはまります。

2. 機能的原因(神経・筋肉の障害)

構造に異常はないものの、飲み込みに関わる筋肉や神経の動きが正常に働かない場合です。
認知症による脳機能低下のほか、脳卒中の後遺症、パーキンソン病、加齢に伴う喉の筋力低下(オーラルフレイル・サルコペニア)がこれにあたります。

3. 心理的原因(精神・意欲の障害)

うつ状態や環境の変化、認知症に伴う無為・無関心などによって「食べたい」という意欲そのものが著しく減退し、結果として口や喉を動かさなくなることで嚥下障害が進行します。

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知っておきたい「正しい嚥下の流れ(3つの時期)」

食べ物が口に入ってから胃に届くまで、人間は無意識に以下のプロセス(期)を連携させて行っています。

嚥下の3つの時期
  • 口腔期(こうくうき):口の中で噛み砕き、喉の奥へ送り込む時期
  • 咽頭期(いんとうき): 喉から食道へと一瞬で送り届ける時期(誤嚥予防の要)
  • 食道期(しょくどうき):食道の蠕動運動で胃へと運ぶ時期

口腔期:口を閉じて舌を上顎に押し付け、圧力を高めて食べ物の固まり(食塊)を喉へ送ります。

咽頭期:喉に食べ物が触れると、反射的に気管の蓋(喉頭蓋)が閉じて呼吸が一時停止し、食道の入口が開きます。誤嚥を防ぐ最も精密なコントロールが求められる時期です。

食道期:食道の筋肉が波打つ運動(蠕動運動)と重力により、食べ物を胃へと流し込みます。

認知症や加齢では、特に「口腔期」の送り込みや「咽頭期」の気管の閉鎖タイミングが遅れることで、誤嚥が発生しやすくなります。

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嚥下障害を予防・改善するリハビリテーション

嚥下機能の低下が見られても、根気強くリハビリやトレーニングを重ねることで、飲み込みの力を維持・回復させることができます。

リハビリは、食べ物を使わない「間接訓練」と、実際の食事を用いる「直接訓練」に分かれます。

嚥下リハビリの種類
  • 間接訓練:安全に行える口・舌・お腹の体操や発声トレーニング
  • 直接訓練:食事の形態調整(とろみ付加)や飲み込み方の工夫

1. 自宅で安全にできる「間接訓練(基礎トレーニング)」

食品を使わないため、喉詰まりや誤嚥のリスクなく、自宅で安全に取り組めます。

① 口唇・舌・頬の体操
やり方:口を大きく「パ・タ・カ・ラ」とハッキリ発声しながら動かす(パタカ体操)。舌を前後左右に出したり、頬を膨らませたり凹ませたりする。
効果:食べ物をこぼさずしっかり噛み、喉奥へ送る筋肉を鍛えます。

② 発声トレーニング
やり方:「あー」「おー」と声を意識して長く出す、あるいは好きな歌を口ずさむ。
効果:声帯や喉の開閉筋が鍛えられ、咽頭期の誤嚥防止機能を高めます。

③ 呼吸筋の強化(腹式呼吸)
やり方:お腹に手を当て、鼻から息を吸ってお腹を膨らませ、口から「ふーっ」と勢いよく息を吐き出す。
効果:万が一誤嚥しそうになった際、勢いよく「コンコン!」と外へ吐き出す(咳き込む)ための肺活量と胸筋を鍛えます。

④ 姿勢保持と体幹トレーニング
やり方:食事時に猫背にならず、骨盤を立てて座る練習や、起き上がっている時間を増やす。
効果:姿勢が崩れると喉が圧迫されて誤嚥しやすくなるため、正しい姿勢を保つ体幹を鍛えます。

2. 食事を取り入れた「直接訓練(指導のもと実施)」

実際の食事を使って飲み込みを調整します。誤嚥のリスクを伴うため、医師、看護師、言語聴覚士(ST)などの専門職の指示・指導のもと行います。

食事形態の調整(とろみ・形態選定)

サラサラしたお水やお茶は喉を素早く通り過ぎて誤嚥しやすいため、市販の「とろみ調整剤」を使ってポタージュ状にします。また、ゼリーやペースト食など、まとまりやすくのど越しの良い食事形態を選択します。

複数回嚥下(うなずき嚥下・うなずき飲み)

一口食べるごとに「ゴクン、ゴクン」と2〜3回意識して飲み込み、喉の奥に食べ残しを作らないようにします。また、軽く顎(あご)を引いてうなずくような姿勢で飲み込むと、気管が狭まり食道が広がるため、誤嚥を防げます。

交互嚥下(こうごえんげ)

パサつく食べ物(パンやごはん)と、とろみ付きジュースやゼリーを交互に口へ運ぶことで、喉に残った食物をきれいに洗い流します。

食前3分で誤嚥を防ぐ!簡単な「嚥下体操」の進め方

誤嚥は「食事の最初の一口目」に起こりやすいため、食事を始める前に喉や口の筋肉をほぐす「嚥下体操」を行うと非常に効果的です。

食事前の簡単嚥下体操の流れ(約3分)
  1. 深呼吸:肩の力を抜き、お腹で深呼吸を2〜3回行う
  2. 首・肩のストレッチ:首を左右にゆっくり傾け、肩を上下に上下させて力を抜く(リラクゼーション)
  3. 口・舌の準備運動:口を大きく開けて「パ・タ・カ・ラ」と10回発声する。舌を前・左右に出す
  4. 喉の刺激:口をすぼめて冷たい空気を「すーっ」と吸い込み、喉を冷感刺激する
  5. 仕上げの深呼吸:もう一度鼻から吸って口から吐き、食事をスタートする

テーブルに座ったまま短時間でできるため、毎日の食事前のルーティン(習慣)にすることをおすすめします。

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自治体や地域による摂食嚥下支援の取り組み

高齢者の誤嚥性肺炎予防や食べる喜びを守るため、各自治体でも地域一体となった摂食嚥下支援(口腔ケア講座や訪問歯科指導)が推進されています。

  • 東京都大田区:誤嚥性肺炎防止を目的に「口から始める健康講座」を推進。歯科医師や歯科衛生士が自宅や施設を訪問し、要介護者への摂食嚥下評価・口腔ケア指導を実施
  • 東京都新宿区:食支援プロジェクト「新宿ごっくんプロジェクト」を展開。地域多職種(医師・歯科医師・管理栄養士等)が連携できる嚥下チェックツールを普及
  • 千葉県柏市:「口腔ケア健口講座」の開催や、在宅で受けられる訪問歯科診療体制の充実を推進

お住まいの地域の「地域包括支援センター」や「訪問歯科」に相談することで、専門家による訪問嚥下評価や指導を受けることができます。

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まとめ

認知症と嚥下障害についての要点をまとめます。

  • アルツハイマー型は「食べ物の認識障害(口に溜め込む等)」、レビー小体型は「喉の運動障害(むせ・誤嚥)」が強くあらわれやすい
  • 食事中のむせ、咳き込み、喉のつかえ、食べるのに時間がかかる、痰が増えるなどの症状は嚥下障害のサイン
  • 原因には器質的原因(構造異常)、機能的原因(筋力・神経麻痺)、心理的原因(意欲低下)がある
  • リハビリには、自宅で安全にできる「間接訓練(口・舌の体操や発声)」と、専門指導のもとで行う「直接訓練(とろみ調整や交互嚥下)」がある
  • 食事前の「嚥下体操(パタカ発声・首肩のストレッチ)」を日常化することで、一口目の誤嚥を大幅に防ぐことができる

「食べる」ということは、単なる栄養補給だけでなく、人生の大きな楽しみでもあります。

むせや違和感に気づいたら放置せず、主治医、言語聴覚士、地域包括支援センターなどの専門家に相談しながら、適切なリハビリと食事の工夫で「安全においしく食べる暮らし」を守っていきましょう。

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