アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症と並び「三大認知症」の一つに挙げられるレビー小体型認知症(DLB)。リアルな幻影が見える「幻視」や、手が震えたり転びやすくなったりする「パーキンソニズム」、睡眠中の大声や暴れなどの「レム睡眠行動障害」といった多様な症状が特徴です。
「どのような治療法があるのか」「自宅でどう支えればよいのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、レビー小体型認知症の最新の治療方法(薬物療法・非薬物療法)をはじめ、症状別の主な治療薬、薬を使う際の重要な注意点、自宅での環境づくりのポイント、治療費を抑える公的制度まで分かりやすく解説します。
- 治療の目的:薬物療法と非薬物療法を組み合わせて症状の緩和と生活の質(QOL)の維持を目指す
- 薬物療法:認知機能障害、幻視・BPSD、パーキンソニズム、睡眠障害、自律神経症状など、症状ごとに優先順位をつけて調整
- 【超重要】薬剤過敏性:薬への非常に過敏な反応に対する少用量からの慎重な投与および市販薬服用の際の主治医への相談
- 自宅の環境整備:パーキンソニズムによる転倒防止と、影や物の配置による幻視対策(室内を明るくシンプルに)
- 経済的支援:医療費負担を1割に軽減する自立支援医療(精神通院医療)や介護保険サービスの積極的な活用
スポンサーリンク
レビー小体型認知症の基本と治療の考え方
レビー小体型認知症は、脳の神経細胞に「レビー小体」と呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まることで発症します。
現在の医療では、脳内のレビー小体そのものを完全に除去する根本治療法はまだ確立されていません。そのため、治療の主な目的は「つらい症状を和らげ、進行を穏やかにしながら、本人と家族が穏やかに生活できる期間を長くすること」となります。
治療アプローチは、大きく分けて薬物療法と非薬物療法(リハビリテーションなど)の2つがあります。
スポンサーリンク
【症状別】レビー小体型認知症の主な治療薬
レビー小体型認知症は症状が多岐にわたるため、本人が最も困っている症状や生活に支障をきたしている症状から優先的に治療を行います。

1. 認知機能障害の治療薬
認知機能の低下や記憶障害、理解力の低下に対しては、認知症治療薬が使用されます。
ドネペジル塩酸塩(商品名:アリセプトなど)
日本では、レビー小体型認知症における認知機能障害に対して正式に保険適用が認められている代表的な薬剤です。脳内の神経伝達物質(アセチルコリン)の分解を防ぎ、認知機能の維持・改善を図ります。
2. 幻視・妄想・行動心理症状(BPSD)の治療薬
実際には存在しないものがハッキリ見える「幻視」や、抑うつ、不安、興奮などの症状に対する治療薬です。
抑肝散(よくかんさん)
幻視やイライラ、焦躁感を抑えるために頻用される漢方薬です。西洋薬に比べて副作用が比較的少ないため、第一選択薬として使われることが多くあります。
非定型抗精神病薬(クエチアピン、アピプラゾールなど)
抑肝散だけでは幻視や妄想、興奮が治まらない場合に検討されます。ただし、後述する「薬剤過敏性」に十分配慮し、極小量から慎重に投与されます。
3. パーキンソニズム(運動障害)の治療薬
手足の震え、筋肉のこわばり、歩行障害(小刻み歩行)、動きの緩慢さなど、パーキンソン病に似た症状に対する治療薬です。
L-ドパ製剤(商品名:メネシット、ネオドパストンなど)
脳内で不足しているドパミンを補うことで、体の動きをスムーズにします。ただし、投与量を増やしすぎると幻視や精神症状が悪化することがあるため、バランスを見極めた調整が行われます。
4. 睡眠障害(レム睡眠行動障害)の治療薬
夢の内容に合わせて大声をだしたり、暴れて手足を動かしたりする「レム睡眠行動障害」に対する治療薬です。
クロナゼパム(商品名:リボトリール、ランドセンなど)
夜間の異常行動や筋肉の緊張を抑え、質の良い睡眠を促します。
抑肝散・メラトニン受容体作動薬
高齢者の場合、ふらつきや転倒のリスクを考慮して、より安全性の高い薬剤が選ばれるケースもあります。
5. 自律神経障害の治療薬
立ちくらみ(起立性低血圧)、頑固な便秘、多汗、尿トラブルなどに対する治療薬です。
ドロキシドパ(商品名:ドプス)やメトリジン:起立性低血圧によるめまい・立ちくらみを改善します。
整腸剤・下剤:便秘を解消することで、認知症状やBPSDの悪化を防ぎます。
【超重要】レビー小体型認知症の治療における注意点:薬剤過敏性
レビー小体型認知症の治療で最も注意しなければならないのが薬剤過敏性(やくざいかびんせい)です。
薬の副作用が強く出やすい
レビー小体型認知症の方は、一般の認知症の方に比べて薬の効果や副作用が過敏に出やすい体質を持っています。特に、統合失調症などに使われる「抗精神病薬」や一部の風邪薬、抗ヒスタミン薬などを服用すると、以下のような重篤な症状を引き起こす危険性があります。
- 急激なパーキンソニズムの悪化(体が固まって動けなくなる状態)
- 意識障害や強い眠気
- 幻視や妄想の悪化
- 高熱や血圧の急変動(悪性症候群)
服用時の重要ルール
- 「少量から開始」の鉄則:一般的な規定量の1/4〜1/2などのごく少量からの慎重な使用開始
- 独断による市販薬(一般用医薬品)服用の禁止:症状悪化の危険がある風邪薬・アレルギー薬・睡眠改善薬などの服用前の医師・薬剤師への相談
- 服薬管理のサポート:飲み忘れや重複服用を防ぐための家族・介護者による服薬カレンダー・配薬ボックスの活用
スポンサーリンク
進行を遅らせ生活を豊かにする「非薬物療法(リハビリ)」
薬を使わずに脳や身体に刺激を与え、症状の進行抑制や精神の安定を図るのが非薬物療法です。本人の好みや状態に合わせて楽しく続けられるものを選ぶことが成功のポイントです。
1. 運動療法(身体リハビリ)
座ったままできる体操、散歩(ウォーキング)、ストレッチなどを無理のない範囲で行います。
身体を動かすことで筋肉量を維持し、転倒防止につながるほか、脳への血流促進や生活リズムの改善効果が期待できます。
2. 回想法
昔の写真集や思い出の品(アルバム、使い慣れた道具など)を見ながら、楽しかった過去の記憶や経験について語り合います。
心のリラックスをもたらし、自尊心や表情の豊かさを取り戻す効果があります。つらい思い出ではなく、ポジティブな記憶を中心に聴くことが大切です。
3. 認知機能訓練(脳トレ)
計算問題、パズル、トランプ、塗り絵、しりとりなど、楽しく頭を使うアクティビティです。
難しすぎる課題はストレスや自信喪失につながるため、「少し考えれば解ける」難易度のものを選びましょう。
4. 音楽療法・作業療法
好きな音楽を聴く、歌を歌う、簡単な楽器を鳴らすといった音楽刺激は、脳を活性化させ精神を安定させます。また、園芸や手芸、料理などの作業療法も達成感や生きがいにつながります。
スポンサーリンク
自宅でできる!レビー小体型認知症の方のための環境整備
レビー小体型認知症の二大特徴である「パーキンソニズム(転倒リスク)」と「幻視」は、自宅の環境を工夫するだけで大きく改善・予防できます。
1. 転倒防止対策(パーキンソニズムへの配慮)
すり足になりやすく、バランスを崩しやすいため、室内での転倒事故を防ぐ環境を作りましょう。
- 段差の解消:部屋の境目の段差へのスロープ設置
- 手すりの設置:玄関、廊下、トイレ、お風呂場などへの手すり配置
- コード類やマットの整理:足をひっかけやすい電化製品のコードや滑りやすい敷物の撤去・固定
2. 幻視・見誤りを減らす環境づくり(影と錯覚の防止)
「部屋の隅に知らない人が立っている」「壁に虫が走っている」といった幻視は、部屋の明るさや視覚的なノイズが原因で起こりやすくなります。
- 室内の常時明瞭化:足元灯や間接照明の設置による夜間の影の発生および見誤りの防止
- 部屋の簡素化:ハンガーの衣類や柄物の模様による誤認を防ぐクローゼットへの収納およびシンプルなインテリアの意識
- 鏡や窓ガラスの反射対策:夜間の窓ガラスへの映り込みを防ぐ確実なカーテンの取扱い
スポンサーリンク
治療・介護費用を抑える公的制度・補助金まとめ
認知症の治療や介護が長期間に及ぶと、経済的な負担が増大します。利用できる公的制度を上手に活用しましょう。
1. 自立支援医療(精神通院医療)
認知症の通院治療や投薬にかかる医療費の自己負担割合が、原則3割から1割に軽減される制度です(世帯所得に応じて月額上限額が設定されます)。指定医療機関での通院や薬局での調剤が対象となります。
2. 介護保険サービス
要介護・要支援認定を受けることで、デイサービス、訪問介護、ショートステイ、福祉用具(手すりやスロープ)のレンタル・購入補助、住宅改修費の補助などを1〜3割の自己負担で利用できます。
3. 精神障害者保健福祉手帳 / 身体障害者手帳
症状の程度に応じて手帳の交付を受けると、税制上の優遇措置(所得税・住民税の控除)や公共交通機関の割引、自治体独自の医療費助成などが受けられます。
4. 傷病手当金・障害年金
- 傷病手当金:現役世代(40代・50代など)での発症および休職時における健康保険からの給付
- 障害年金:日常・社会生活への著しい制限発生時における65歳未満を対象とした障害基礎年金・障害厚生年金の受給可能性
5. 住宅ローンの支払い免除(団体信用生命保険)
住宅ローン返済中に発症し、重度の精神障害状態や就労不可となった場合、加入している団体信用生命保険(団信)の特約条項を満たすことでローンの残高が免除されるケースがあります。
最期まで自分らしく生きるための「ACP(人生会議)」
レビー小体型認知症の治療において、近年非常に重視されているのがACP(アドバンス・ケア・プランニング:通称「人生会議」)です。
病気が進行すると、将来的に自分の意思を家族や医療従事者に伝えることが難しくなる時期が訪れます。そのため、認知機能が保たれている早期段階から、「今後どのような治療やケアを受けたいか」「延命治療についての希望」「どこでどのように過ごしたいか」を、本人・家族・医療介護スタッフで繰り返し話し合い、共有しておくことが大切です。
あらかじめ本人の意思を確認しておくことは、将来、重大な決断を迫られるご家族の心理的負担を和らげることにもつながります。
スポンサーリンク
まとめ:正しく理解し、多職種と協力して支えよう
レビー小体型認知症の治療とケアのポイントをおさらいしましょう。
- 治療は症状緩和が中心:薬物療法と非薬物療法のバランスの良い組み合わせ
- 薬物療法は「過敏性」に注意:主治医の指示のもとでの少用量からの慎重な実施
- 自宅環境の整備:明瞭かつシンプルな部屋づくりによる幻視防止および手すり等による転倒防止
- 制度の活用:自立支援医療や介護保険サービス利用による費用・負担の抑制
レビー小体型認知症は日によって症状の波(動揺)が激しいため、ご家族だけで抱え込まず、主治医やケアマネジャー、専門の医療機関と連携しながらチームで支えていくことが大切です。
- 健達ねっとレビー小体型認知症関連記事一覧【要リンク】

