久しぶりに実家に帰ると、以前はきちんと片付いていた母の部屋が、信じられないほど散らかっていた。「どうしたの?」と問いかけると、母はきょとんとした顔で「これで大丈夫」と答えるばかり。その言葉の裏には、高齢者特有の心理「投影バイアス」が潜んでいるかもしれません。
本記事では、親の変化に戸惑う子どもたちが、その心理を理解し、より良い関係を築くためのヒントを探ります。
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久しぶりの訪問で気づいた母の変化
ある日、久しぶりに母の家を訪ねたら、かつて整然としていた部屋がすっかり散らかっていました。
「お母さん、どうしたの?部屋が散らかっているじゃない!」
「散らかってないよ!これで大丈夫だから!」
このやりとりに、子どもとしては戸惑いを感じるかもしれません。
しかし、ここには高齢者特有の心理「投影バイアス」が関係している可能性があります。
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親の心をのぞくと…「投影バイアス」の影響とは?
「投影バイアス」とは、過去の経験をもとに未来も同じようにうまくいくと考えてしまう心理的傾向のことです。
絹江も、「今までずっと大丈夫だったし、これからも問題ない」と思い込んでいる可能性があります。
この心理が強くなると、過去の成功体験に固執し、周囲のアドバイスを受け入れにくくなります。
例えば、子どもが「最近、片付けができていないよ」と指摘しても、それを「昔とは違うんだよ」といわれたように感じ、「余計なお世話だ」と反発することがあります。
高齢になると、記憶力や判断力が低下し、生活の変化に気づきにくくなることも。
にもかかわらず、「自分はまだ大丈夫だ」と思い込むことで、問題が深刻化することもあります。
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「怒りっぽくなった」と感じたときの対処法
年齢を重ねると、イライラしやすくなったり、些細なことで怒りっぽくなったりすることがあります。
これは、加齢による脳の変化や環境のストレスによるものですが、「投影バイアス」により、自分の変化に気づけないことも一因です。
そんなとき、正論をぶつけてしまうと逆効果になりやすいです。
例えば、以下のような会話を試してみましょう。
- NG例:「お母さん、部屋が汚いから片付けて!」
- OK例:「お母さん、最近困っていることない?何かあったら教えてね」
このように会話の流れをつくりながら、「部屋が散らかっていること」に本人が気づけるよう促すのがポイントです。
例えば、絹江が「最近、ハンコがよくなくなるんだよね」と言った場合、そこから「もしかしたら片付ける場所を決めた方がいいかもね」と自然に誘導できます。
「ナッジ」で無理なく行動を促す
このようなアプローチは「ナッジ(Nudge)」と呼ばれます。
ナッジとは、強制ではなく、本人の意思を尊重しながら自然に良い方向へ導く方法です。
例えば、「部屋を片付けなさい!」と命令すると反発されるかもしれませんが、
「最近、物がなくなりやすくなったって言ってたね。整理したら見つけやすくなるかもね」と伝えることで、本人が「やってみようかな」と思うきっかけになります。
ナッジのポイントは、本人に気づきを与えること。
上から目線で指摘するのではなく、相手の気持ちに寄り添いながら提案していくことで、スムーズに行動を変えられる可能性が高まります。
親の変化に寄り添うために大切なこと
親の変化に気づいたとき、つい「ちゃんとして!」と言いたくなることもありますが、「投影バイアス」を理解すると、より適切な対応ができます。
大切なのは、正論で押し付けるのではなく、会話の流れを作りながら本人が気づくように促すこと。
- 高齢者には「投影バイアス」が働きやすい:昔と同じと思い込んでいる可能性がある
- 正論ではなく、会話の流れを作ることが大切:まずは困りごとを聞き出す
- ナッジを活用し、本人が気づくように誘導:「命令」ではなく「提案」する
親の変化に戸惑ったときは、焦らず、優しく寄り添うことを意識してみてください。
介護のことになると親子はなぜすれ違うのか
親が高齢になり、「介護」を考えるとどんどん出てくる家族のお悩み――――
親子だから、家族だからこそのすれ違い――――
もう、悩まなくていいんです!
介護をラクにする相手に伝わるコミュニケーション術が親に効く!
行動経済学と福祉社会学、看護の専門家がそれぞれの家族介護経験と専門知識、
ノーベル経済学賞を受賞した「ナッジ(※1)」を用いてみなさまを解決へ導きます。
本書では、8家族の事例を紹介し、それぞれの親が持つ「わかってはいるけど、できない心理(高齢者によく見られる認知バイアス)」が親子のすれ違いに関係していると解説しています。
この「認知バイアス(※2)」に対して、著者3名が自らの家族介護経験と専門知識、そして「ナッジ」を用いて解説しています。
※1:直訳すると「そっと後押しをする」「ひじでつつく」という意味の英語。
2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー博士が提唱した理論で、
「ついそうしたくなる心理」をくすぐって、直感的に望ましい行動をしたくなる仕掛けを指す。
※2:人の脳が持つ、自分に都合よく、解釈を歪めてしまう習性。
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