親の介護において、保険証や鍵などの大切な物を頻繁に紛失してしまうことは、介護者にとって大きな悩みの種です。何度も保管場所を決めるように促しても、なかなか受け入れてもらえないケースも少なくありません。
このような状況に直面したとき、頭ごなしに注意するのではなく、親御さんの心理を理解し、適切なアプローチで対応することが大切です。なぜ、物をなくしてしまうことに対して、親御さんは私たちとは異なる反応を示すのでしょうか?
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物をなくしても気にしない親の心理とは?
なぜ、親御さんは物を頻繁に紛失してしまうにも関わらず、私たち家族が思うほど深刻に捉えていないのでしょうか? その背景には、高齢者特有の心理傾向が潜んでいる可能性があります。ここでは、物をなくしてもあまり気にしない親御さんの心理について掘り下げていきましょう。
自己奉仕バイアスによる防衛反応
「保管場所を決めればなくならない」と提案しても、「決めてもなくすのだから仕方ない」と親御さんが反論することがあります。この背景には、自己奉仕バイアスという心理的傾向が関係しています。
- 自分のミスを認めたくない
- 失敗を外部要因のせいにしやすい
- 責められたと感じると逆ギレしやすい
自己奉仕バイアスが強く働くと、親御さんは「自分は悪くない」「仕方がない」と考え、物をなくすという問題を改善しようとする意識が薄れてしまうのです。
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「責められている」と感じると反発する
親御さんの行動を変えようと強く促すと、「責められている」と感じ、反発してしまうことがあります。これは、長年の生活習慣や、自身の尊厳を守りたいというプライドが影響しており、強引に修正しようとすると、かえって関係が悪化する可能性があります。
「なくす問題」を改善するための対応策
物をなくすという問題は、日常生活に支障をきたすだけでなく、時には安全に関わる事態を引き起こす可能性もあります。しかし、頭ごなしに注意するだけでは、親御さんの反発を招き、改善には繋がりません。ここでは、親御さんの気持ちに寄り添いながら、物をなくすという問題を穏やかに改善していくための具体的な対応策をご紹介します。
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ナッジを活用して自然な流れに
「ナッジ」とは、相手に気づかせないように、または強制することなく、望ましい行動へと自然に促す心理テクニックです。親御さんが「自分が責められている」と感じないよう、言葉のかけ方を工夫し、自然な流れで行動を変えることが重要になります。
- 物を探し当てた際には「見つかってよかったね。これで安心だね」とポジティブな言葉で安心感を強調する。
- 紛失によって親御さんが不安な気持ちになっている場合は、「お母さんが安心できてよかった。何か困ったことがあったらいつでも言ってね」と気持ちに寄り添う言葉をかける。
- 親御さんが物をなくしたことを申し訳なく思っている様子であれば、「悪いねぇ、私も一緒に探せばよかったね」「次から気をつけましょうね」と共感を示す。
こうした言葉を使うことで、親御さんは「自分を否定されている」と感じにくくなり、徐々に保管場所を決めるなどの行動変化を受け入れやすくなる可能性があります。
「正しさ」の押しつけを避ける
「自分が正しくて親御さんが間違っている」という対立構造を作ってしまうと、親御さんはますます心を閉ざし、防衛的になります。「お母さんは自己奉仕バイアスに影響されているのかもしれない」と冷静に捉え、感情的にならず、客観的に状況を把握することが大切です。
親御さんの心理を理解し、頭ごなしに責めるのではなく、優しく寄り添う姿勢を持つことで、少しずつ「物をなくさないための工夫」を受け入れてもらえるようになるでしょう。
介護のことになると親子はなぜすれ違うのか
親が高齢になり、「介護」を考えるとどんどん出てくる家族のお悩み――――
親子だから、家族だからこそのすれ違い――――
もう、悩まなくていいんです!
介護をラクにする相手に伝わるコミュニケーション術が親に効く!
行動経済学と福祉社会学、看護の専門家がそれぞれの家族介護経験と専門知識、
ノーベル経済学賞を受賞した「ナッジ(※1)」を用いてみなさまを解決へ導きます。
本書では、8家族の事例を紹介し、それぞれの親が持つ「わかってはいるけど、できない心理(高齢者によく見られる認知バイアス)」が親子のすれ違いに関係していると解説しています。
この「認知バイアス(※2)」に対して、著者3名が自らの家族介護経験と専門知識、そして「ナッジ」を用いて解説しています。
※1:直訳すると「そっと後押しをする」「ひじでつつく」という意味の英語。
2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー博士が提唱した理論で、
「ついそうしたくなる心理」をくすぐって、直感的に望ましい行動をしたくなる仕掛けを指す。
※2:人の脳が持つ、自分に都合よく、解釈を歪めてしまう習性。
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