介護認定調査で見えた親の変化

介護認定調査では、親の日常生活について細かく確認されます。

ある日の調査で、調査員が親に問いかけました。

このやりとりに、家族としては戸惑いを感じることもあるでしょう。

しかし、ここには高齢者特有の心理「現在バイアス」が関係している可能性があります。
若い頃には将来の健康リスクを考えて行動できた人でも、歳を重ねると「今の自分はまだ大丈夫」と現在の状態を過大評価しがちです。
そのため、介護認定調査の際に些細な質問にも過敏に反応し、感情的になることがあるのです。

親の心をのぞくと…「現在バイアス」の影響とは？

「現在バイアス」とは、今の自分の状態を過信し、将来のリスクを軽視してしまう心理傾向のことです。

調査員が「衣服の脱ぎ着はご自分でできますか？」と尋ねた際、親は声を荒げて反発しました。
「バカにして！そんなのっ！できるに決まってるだろ！」

若い頃には将来の健康リスクに備えて行動できた人でも、年齢を重ねると「まだ大丈夫」と思い込みがちになります。
この心理が強くなると、過去の成功体験に固執し、「これまでも問題なかったから、これからも大丈夫」と考えやすくなります。

例えば、家族が「最近、脱ぎ着が難しそうだね」と指摘しても、「そんなことない！」と強く否定してしまうことがあります。
しかし、実際には身体機能が低下していることに本人が気づいていない場合も多いのです。

現在バイアスが強くなると、周囲の助言や指摘を「自分の能力を疑われた」と感じ、感情的に反発してしまうことがあります。

その結果、「まだできる」と思い込むことで支援を拒否し、生活の中で小さな問題が見過ごされるケースも少なくありません。

高齢になると、些細なことでイライラしたり、感情的になりやすくなったりすることがあります。

これは、「現在バイアス」により、自分の変化に気づきにくくなることが一因です。

「まだできる」「問題ない」と過去の成功体験に固執し、自分の現状を過大評価してしまうのです。

例えば、家族が「最近、脱ぎ着が難しそうだね」と指摘すると、

「そんなことない！」と強く否定してしまうことがあります。

このような状況で、正論をぶつけると逆効果になることが少なくありません。

→ できていない部分を強調されると、「まだできるのに！」と感情的な反応を引き起こしやすくなります。

→ 状況に合わせた声かけにすることで、「手伝ってもらうこと」が自分のためだと自然に受け入れやすくなります。

高齢者が感情的になる背景には、「できなくなった自分を認めたくない」という気持ちが隠れていることがあります。

そのため、「困っている部分」に焦点を当てるのではなく、相手の気持ちに寄り添いながら負担感を引き出す声かけを心がけることで、相手も素直に受け入れやすくなります。

ナッジとは、強制せずに相手の意思を尊重しながら自然に良い行動へ導くアプローチです。
例えば、介護認定調査の際に「いつまで続くの？」と不安を抱く高齢者には、残り時間を伝

えることで安心感を与えることができます。

ゴールが見えないと、「いつまで続くんだ」と不安になりやすくなります。
その結果、現在バイアスが強まり、感情的になってしまうことも。
しかし、「あと10分」と伝えることでペース配分がしやすくなり、「もう少し頑張ろう」と

前向きに考えやすくなります。

このようにナッジを活用すれば、相手の負担を軽減しつつも自然に行動を促すことができるのです。

親の変化に気づいたとき、「しっかりして！」と正論で押し付けたくなる場面もあるかもしれません。
しかし、「現在バイアス」を理解することで、より適切な対応ができるようになります。

高齢者には「現在バイアス」が強く働きやすい：自分の状態を過信し、「まだできる」と思い込んでしまうことが多いです。
正論で押し付けず、会話の流れを作ることが大切：直接的な指摘ではなく、「最近、困っていることはない？」と問いかけてみましょう。
ナッジを活用して自然に気づきを促す：「最近、服の脱ぎ着が少し大変そうだけど、寒くなってきたし厚手の服は着やすいものがいいかもね」など、提案の形で伝えると受け入れられやすくなります。

親の変化に戸惑ったときこそ、焦らず寄り添うことが大切です。
指摘ではなく、本人が「そうかもしれない」と気づけるような声かけを心がけましょう。