ご自宅でペットを飼われている高齢者の方にとって、ペットは単なる動物ではなく、かけがえのない大切な家族です。
介護施設への入居を検討する際、「今のペットと最後まで一緒に過ごしたい」と願う方は少なくありません。
また、施設で動物と触れ合う「アニマルセラピー」が、高齢者の心身に良い影響を与えることも注目されています。
本記事では、ペットと一緒に入居できる介護施設の現状をはじめ、アニマルセラピーのメリット・デメリット、適している動物などについて詳しく解説します。
ご自身やご家族の施設探しの参考としてお役立てください。
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ペットは大切な「家族」(コンパニオンアニマル)
現代において、ペットは「人間の所有物」ではなく、より親密で家族としての結びつきが強い「コンパニオンアニマル(伴侶動物)」として認識されています。
少子高齢化や核家族化が進む中、生活を豊かにし、心の支えとなってくれるコンパニオンアニマルの存在はますます大きくなっています。
特に犬や猫は、古くから人間のパートナーとして共存してきた歴史があり、現代でも高齢者の生活に欠かせない存在となっています。
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ペットと一緒に介護施設へ入居できる?
全体から見ればまだ数は少ないものの、ペットと一緒に同室で生活できる介護施設(有料老人ホームなど)は存在し、少しずつ増加傾向にあります。
ペットと入居できる施設が求められる背景には、以下のような理由があります。
- 入居者ご本人が、長年連れ添った自宅のペットを施設に連れてきたいと希望するケース
- 身寄りがない、または子どもや孫が遠方に住んでおり、ペットを預ける先がないケース
- 飼い主が急な体調不良で入院・入所となり、残されたペットの行き場がなくなるケース
長年一緒に暮らしてきたペットと離れ離れになることは、高齢者にとって大きな喪失感となり、生活の質(QOL)の低下や認知機能の低下を招く恐れがあります。
飼い主の高齢化が進む現在、ペットと同居可能な介護施設の需要は今後さらに高まっていくと予想されています。
アニマルセラピーとは?期待できる効果
介護施設に入居する際、ご自身のペットを連れていけない場合でも、施設側が「アニマルセラピー」を取り入れていることがあります。
アニマルセラピーとは、動物との触れ合いを通じて心身機能の維持・改善を図る取り組みの総称です。
主に「動物介在療法(AAT)」「動物介在活動(AAA)」「動物介在教育(AAE)」の3つに分類され、介護施設では医療従事者や専門家が関わる動物介在療法(AAT)や、ボランティアによる動物介在活動(AAA)が行われます。
アニマルセラピーには、以下のような効果が期待されています。

精神疾患・ストレスの改善
うつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの精神疾患に対して、動物と触れ合うことで笑顔が増え、活動意欲が高まる効果が報告されています。
動物の温もりを感じることで心が癒され、治療やリハビリに対して前向きになるきっかけとなります。
認知症の症状緩和
認知症の方にとっても、アニマルセラピーは有効です。
社会的刺激が少なくなりがちな施設生活において、動物との触れ合いは感情を刺激し、「自発的な会話が増える」「表情が穏やかになる」「日常生活の自立度が向上する」といった良い変化がみられるという調査結果があります。
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アニマルセラピーの注意点・デメリット
メリットが多いアニマルセラピーですが、実施にあたっては以下の点に注意する必要があります。
怪我や感染症のリスク
訓練を受けたセラピードッグであっても、野生の動物であることに変わりはありません。
入居者の予期せぬ大きな声や行動に驚き、咄嗟に噛みついたり引っ掻いたりする危険性はゼロではありません。
また、動物の唾液が傷口に触れることで感染症を引き起こすリスクもあります。
高齢者は免疫力が低下していることが多いため、触れ合う前後の手洗いや消毒、動物アレルギーを持つ方への配慮が不可欠です。
動物側へのストレス
人間側の癒しだけでなく、動物たちにかかるストレスにも配慮しなければなりません。
長時間の活動による疲労、過度な抱っこ(身体的拘束)、おやつの与えすぎなどは、動物の健康を害する原因となります。
適度な休憩や散歩の時間を確保し、お互いにとって心地よい環境を作ることが大切です。
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アニマルセラピーに適した動物・適さない動物
アニマルセラピーには、どのような動物でも向いているわけではありません。人に懐きやすく、穏やかな性格の動物が適しています。
適している動物(犬・猫)
- 犬: 古くから人間と生活してきた犬は、しつけが入りやすく、人とのコミュニケーションに長けています。人間の感情を汲み取り、寄り添う姿勢はセラピーに非常に適しています。
- 猫: 猫を撫でると、人間の脳内で「オキシトシン(幸せホルモン)」が多量に分泌されることがわかっています。オキシトシンにはストレス緩和や免疫力向上の効果があります。また、膝の上に乗せやすいサイズ感も高齢者向きです。
注意が必要な動物(小動物・爬虫類)
- 小動物(うさぎ・モルモットなど): 触れ合い活動に用いられることもありますが、本来臆病な性質のため、恐怖を感じるとパニックを起こして噛みつくことがあります。フェレットなどの活発すぎる動物も、高齢者向けのセラピーには不向きな場合があります。
- 爬虫類(カメ・イグアナなど): しつけが難しく、感情の交流が図りにくいため、癒しを目的とするアニマルセラピーには適していません。また、衛生面(サルモネラ菌など)のリスクや、見た目に恐怖を感じる方が多い点も考慮する必要があります。
関連記事:認知症とストレスの関係とは?悪化を防ぐストレスケアの方法
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アニマルセラピーの実際の効果(検証データ)
アニマルセラピーが実際にどのような効果をもたらすのか、過去に行われた効果検証データ(2006年・日本動物病院福祉協会元会長 水谷渉氏による調査)をご紹介します。
高齢者施設において、動物が「いる時」と「いない時」の入居者の動作回数を比較した結果、以下のような顕著な違いが確認されました。
- 笑顔の回数: 動物がいる時はいない時の約5倍(4.45回 対 0.88回)
- 短い会話の回数: 動物がいる時はいない時の約2倍(4.18回 対 2.00回)
- アイコンタクトの回数: 動物がいる時はいない時の約9倍(2.86回 対 0.31回)
また、介護施設職員へのアンケートでも、「自分や他のスタッフとの会話が増えた(72%)」「入居者同士の会話が増えた(56%)」「笑顔が増えた(58%)」と、ポジティブな回答が多数寄せられています。
アニマルセラピーは、入居者だけでなく施設全体の雰囲気を明るくし、職員にとっても有意義な活動であることが実証されています。
まとめ
本記事では、介護施設のペット事情やアニマルセラピーについて解説しました。要点は以下の通りです。
- ペットと一緒に同室で入居できる介護施設はまだ少ないものの、需要の高まりとともに増加傾向にある
- アニマルセラピーには、ストレスの軽減、精神的な安定、認知症症状の緩和といったメリットがある
- 実施する際は、動物との接触による怪我や感染症、また動物側のストレスにも十分に配慮する必要がある
- セラピーには人間と感情を通わせやすい犬や猫が適しており、実際に笑顔や会話が増えるというデータが実証されている
高齢期においても、動物との温かい触れ合いは心身の健康を支える大きな力となります。
施設選びの際は、ペットとの同居可否やアニマルセラピーの導入状況も確認項目のひとつとして検討してみてください。

