ターミナルケア(終末期医療・ケア)とは、病気の回復が見込めない終末期において、延命治療を行わずに心身の苦痛を和らげ、自分らしい最期を迎えるための医療・介護ケアです。

※関連記事:看取りケアとは?ターミナルケアとの違いや介護施設・自宅での流れを解説
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ターミナルケアの基礎知識
終末期の定義: がんの末期、老衰、不可逆的な器官不全などにより、現代医療では回復の込みがなく、余命が数週間〜数ヶ月と判断された時期を指します。
ケアの目的: 病気の治癒や延命ではなく、残された時間を心穏やかに、苦痛なく自分らしく過ごすこと(QOL=生活の質の向上)を目指します。

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ターミナルケアで提供される3つのケア
身体的ケア
終末期に生じるさまざまな身体症状を和らげます。
- 症状緩和: 疼痛(痛み)、全身の倦怠感、呼吸困難、悪心・嘔吐、不眠などに対する適切な投薬・医療処置
- 日常生活支援: 清拭、洗髪、体位変換(褥瘡・床ずれ予防)、口腔ケア、排泄介助などの身体ケア
精神的ケア
死への恐怖や不安、孤立感、遺される家族への想いなど、揺れ動く感情に寄り添います。
- 本人の言葉に耳を傾ける「傾聴」や感情の受容
- 好きな音楽を流す、家族の写真や大切にしているものを身近に置くなど、落ち着ける住環境の調整
社会的・経済的ケア
医療費や今後の生活、家族の負担に関する不安を解消します。
- 医療ソーシャルワーカー(MSW)やケアマネジャーによる相談支援
- 高額療養費制度、傷病手当金、公的福祉制度の申請手続きサポート
類似するケア(緩和ケア・ホスピスケア・看取りケア)との違い
| ケアの名称 | 対象時期・段階 | 主な実施場所 | 医療ケア・治療の扱い |
|---|---|---|---|
| ターミナルケア | 回復の見込みがない「終末期」(余命数ヶ月〜数週間) | 病院、介護施設、自宅 | 延命治療は行わず、苦痛緩和と生活支援を重視 |
| 緩和ケア | 診断初期から終末期までの全期間 | 病院(一般病棟・外来・緩和ケア病棟) | がん等の抗がん剤治療や手術など積極的治療と並行して実施可能 |
| ホスピスケア | 治癒不可能な終末期(主にがん・AIDS等) | ホスピス(緩和ケア病棟)、専用施設 | 延命目的の治療は行わず、専門チームによる全人的ケア |
| 看取りケア | 老衰や病気の終末期 | 介護施設(特養・グループホーム等)、自宅 | 医療処置よりも自然な死に寄り添う介護・生活介助が中心 |
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ターミナルケアを受けられる場所と特徴
ターミナルケアを行う場所は主に「病院」「介護施設」「自宅」の3つがあり、それぞれ特徴が異なります。
病院(緩和ケア病棟・療養病床など)
メリット: 医師・看護師が24時間常駐しており、急変時や強い痛みに対して迅速な医療対応(医療用麻薬の調整等)が可能。家族の介護負担が最も少ない。
デメリット: 面会時間や生活上の制限がある。入院費用(個室代等含む)がかかる。
介護施設(特別養護老人ホーム・老健・介護医療院など)
メリット: 生活の場として家庭的な雰囲気の中で過ごせる。介護のプロによる日常介助が受けられ、家族の負担が抑えられる。
デメリット: 施設により医療ケアの対応範囲に限界がある(夜間に看護師が不在の施設もある)。
自宅(在宅ターミナルケア)
メリット: 住み慣れた環境で家族と自由に時間を過ごせる。面会制限がなくリラックスできる。
デメリット: 家族の介護負担(食事・排泄・見守り・急変時の不安)が大きくなる。

※関連記事:特別養護老人ホーム(特養)とは?入所基準や費用・サービス内容を徹底解説
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終始前に話し合っておくべき「人生会議(ACP)」の重要ポイント
終末期に入ると、意識障害や認知機能の低下により、本人自身が治療方針の意思表示を行えなくなるケースが多々あります。事前に関係者と話し合いを行う「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」が重要です。
ターミナルケアを開始する時期と意思決定者の指定
治癒を目指す治療から緩和・ターミナルケアへ切り替えるタイミングや、自身で判断できなくなった際に代わりに意思決定を行う「代理人(家族など)」を事前に定めておきます。
希望するケアの場所
最期をどこで迎えたいか(自宅、病院、施設)について、ご家族の介護体制や経済状況も含めて現実的に話し合います。
延命治療に関する意向
食事が摂れなくなった際の人工栄養(胃ろう・経管栄養・高カロリー輸液)、心肺停止時の心肺蘇生術(胸骨圧迫・人工呼吸器装着)を行うか否かについて、明確な意思を残しておきます。
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自宅でターミナルケアを行う際の成功のポイント
自宅でのターミナルケアを成功させるためには、介護するご家族の負担軽減とバックアップ体制の構築が不可欠です。
- 在宅医療チームとの連携: 訪問診療医(在宅医)や訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)と連絡体制を整える
- 24時間連絡・往診体制の確保: 「夜間に痛みが強くなった」「急変した」際にすぐ対応できるよう、24時間対応可能な訪問看護・訪問診療を契約する
- 介護サービスの活用によるレスパイト(休息): 訪問介護(ヘルパー)やショートステイ(短期入所)を組み込み、ご家族が倒れないよう休息時間を確保する
ターミナルケアにかかる費用と評価制度(加算)
ターミナルケアにかかる費用には健康保険や介護保険が適用され、自己負担割合(1〜3割)に応じた金額を支払います。
主な評価制度(加算)の違い
ターミナルケア加算(医療・看護中心): 訪問看護ステーションや一部の介護施設において、医師の指示のもとで頻回な看護観察や医療的ケア(たん吸引や点滴管理など)を提供し、死亡日および直近の14日間にターミナルケアを行った場合に算定されます。
看取り介護加算(介護・生活中心): 特別養護老人ホーム、グループホーム、特定施設などの介護施設において、医師や看護師と連携した介護スタッフが中心となり、終末期の看取り体制を構築・実施した際に算定されます。
費用軽減制度
病院や在宅医療でかかる医療費が高額になった場合は、「高額療養費制度」を利用することで月額の自己負担上限額を抑えることが可能です。事前にお住まいの自治体や健康保険組合へ「限度額適用認定証」を申請・取得しておくと、窓口での支払いを抑えられます。
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ターミナルケアの現状と課題
厚生労働省の「人口動態調査」によると、かつて1960年代には約8割が「自宅」で亡くなっていましたが、医療の進歩とともに病院死が増加し、2000年代以降は「病院」での死亡が全体の約7割〜8割を占める状態が続いています。
しかし近年、本人の「住み慣れた家や地域で最期を迎えたい」という意向や、国の在宅医療・介護推進施策により、在宅や介護施設での看取り・ターミナルケアの割合が少しずつ増加傾向にあります。
一方で、過度な延命治療を望まない意思があっても家族間で共有されておらず、救急搬送時に搬送先で思わぬ延命措置が取られてしまうケースも存在します。国民一人ひとりが人生の最終段階における医療・ケアについて平時から考え、周囲と共有していく啓発活動が今後の大きな課題となっています。
患者本人にとって何が最善の幸せかを考え、身体的・精神的な痛みを和らげながら家族とともに穏やかな時間を共有することこそがターミナルケアの本質です。万が一の時に本人の望む選択ができるよう、元気なうちから家族や医療・介護関係者とともに意思を話し合っておくことが大切です。


