食物繊維は人間の身体において必要なものであるということはご存じだと思います。
しかし、とりすぎても体に悪影響があるということをご存じでしょうか。
本記事では食物繊維のとりすぎについて、以下の点を中心にご紹介します。
- 食物繊維にはどんな効果がある?
- 食物繊維をとりすぎるとお腹を壊す?
- 食物繊維は1日にどれくらい摂ればいい?
食物繊維のとりすぎについて理解を深めるためにも、参考にしていただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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食物繊維とは
食物繊維は小腸で消化吸収されず、大腸までたどり着きます。
栄養として体内に吸収されませんが、健康維持のために重要な役割を果たす栄養素とされています。
食物繊維の種類
食物繊維には「水溶性」と「不溶性」の2種類があり、水溶性食物繊維は水に溶け、不溶性食物繊維は水に溶けない特徴があります。
水溶性食物繊維は昆布やわかめなどの海藻類に豊富に含まれています。
不溶性食物繊維は、ごぼうや人参などの根菜類や、全粒粉や玄米などの脱穀されていない穀類に多く含まれています。
食物繊維の働き
食物繊維の主な働きは、お腹の調子を整えることです。
便の排出を促し、腸内環境を良好に整えます。
また、食物繊維には糖質や脂質の吸収を抑える働きもあります。
食物繊維が豊富に含まれる食事をした後は血糖値や中性脂肪値が急激に上昇しにくくなるため、食べすぎや糖尿病の予防に効果が期待できます。
そのほかに、過剰に摂取することで体に悪影響を与えるコレステロールやナトリウムなどを体外に排出する働きもあります。
この働きにより、血中コレステロール値の上昇を抑え、高血圧の予防に効果が期待できます。
食物繊維は体内で消化されないので、糖質やタンパク質、ビタミン類のように、体に直接栄養を与える働きはありません。
それでも食物線維は体の健康維持に欠かせない成分であることから、第6の栄養素とも呼ばれています。
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食物繊維をとりすぎるとどうなる?
食物繊維の年代別、性別ごとの摂取目標量は以下の通りです。
*目標量(g/日) | ||
男性 | 女性 | |
3~5歳 | 8以上 | 8以上 |
6~7歳 | 10以上 | 10以上 |
8~9歳 | 11以上 | 11以上 |
10~11歳 | 13以上 | 13以上 |
12~14歳 | 17以上 | 17以上 |
15~17歳 | 19以上 | 18以上 |
18~64歳 | 21以上 | 18以上 |
65歳以上 | 20以上 | 17以上 |
妊婦 | – | 18以上 |
授乳婦 | – | 18以上 |
*18.9(g/日)×〔性別及び年齢区分ごとの参照体重(kg)÷58.3(kg)〕0.75 として計算。
※小数点の値を「以上」としています。
食物繊維の摂取は、成人1日あたり17~21g以上が目標値とされているのがわかります。
この目標値を下回ると、便秘などの不調があらわれる可能性があります。
しかし、食物繊維を目標値よりも多くとりすぎても、身体に不調をもたらすことがあります。
その代表的な症状が、消化器官の不調です。
食物繊維のとりすぎによる消化器官の不調とは、いったいどんなことなのでしょうか。
具体的にみていきましょう。
栄養素の吸収を阻害
食物繊維は、適量の摂取であれば問題ありません。
しかし、食物繊維をとりすぎると小腸での栄養吸収が妨げられることがあります。
特に水溶性食物繊維のとりすぎには注意が必要です。
水溶性食物繊維のとりすぎとは、例えば食物繊維のサプリメントを用量を超えて摂取するような、通常の食事ではありえない量を一度に摂取することです。
このような場合、食物繊維の利点である血糖値と中性脂肪値の上昇を穏やかにする働きが十分に機能しなくなってしまいます。
特に便秘を解消したい人やダイエット中の人は、食物繊維を過剰にとりすぎる傾向があるので注意が必要です。
下痢・便秘症状
食物繊維には便通をよくする効果があります。
しかし食物繊維をとりすぎると、かえって便通が乱れることがあります。
食物繊維のとりすぎで気を付けたいのが、下痢です。
特に水溶性食物繊維は、水に溶けてゼリー状になると水分が多くなるため便がゆるくなります。
逆に、水に溶けない不溶性食物繊維をとりすぎると便秘になります。
不溶性食物繊維は腸内の水を抱え込んでふくらむため、便の量を多くする働きがあります。
便の量が多くなりすぎると、腸内で詰まり排泄されにくくなります。
また便が詰まると腸内を圧迫し、お腹が張るという不快な症状になることもあります。
そのため便秘気味の人が不溶性食物繊維をとりすぎると、便秘が悪化しやすくなることがあるので注意が必要です。
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食物繊維を摂りすぎたときの対処法
食物繊維の過剰摂取で起こりやすいのが、便秘・下痢などの便通トラブルです。
便通トラブルの原因は、食物繊維によって腸内環境が悪化することです。
食物繊維の中でも不溶性食物繊維を摂りすぎたときに起こるのが便秘です。
不溶性食物繊維は便のカサを増やし、かつ腸を刺激することで便通を促します。
しかし過剰摂取すると便が大きく・固くなるため、かえって詰まりやすくなります。
一方、水溶性食物繊維の摂りすぎで起こりやすいのが下痢です。
水溶性食物繊維は便に水分を与えることで柔らかくする作用があります。
つまり水溶性食物繊維を摂り過ぎると、便がゆるくなりすぎてしまい、結果として下痢に至るわけです。
食物繊維の摂りすぎによって便秘・下痢が起こった場合は、それぞれに適した対処法を摂りましょう。
たとえば便秘は、腸内で便が固くなるために起こります。
スムーズに排出するには、便に水分を与えて柔らかくする必要があります。
便を柔らかくするのに役立つのが水溶性食物繊維です。
また、適度な油分は便の滑りをよくするため、便秘解消に役立ちます。
下痢をしている場合は、まずこまめな水分補給をこころがけてください。
下痢になると体内から水分が大量に失われます。
そのため水分補給を怠ると、脱水症状を起こすことが少なくありません。
また、下痢をしているときは胃腸が弱っていることが多いです。
刺激物や冷たい飲食物の摂取は控え、温かく消化のよい食事を摂ってください。
あわせて、よく噛むことも大切です。
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食物繊維を摂りすぎると〇〇になる?
食物繊維を摂りすぎると、肥満・おならの原因になるといわれています。
なぜ、食物繊維が肥満やおならを招くのでしょうか。
原因を解説します。
食物繊維を摂ると太る理由
実は、食物繊維の摂りすぎで太るというのは誤解です。
食物繊維のカロリーは1gあたり2kcal前後です。
他の食品などと比べると低カロリーであるため、食物繊維をたくさん食べたところで、カロリーオーバーになることはほとんどありません。
では、なぜ食物繊維で太るといわれているのでしょうか。
理由の1つとして、お腹が張ることが挙げられます。
食物繊維は水分を含むとふくらむ性質があります。
胃・腸内で食物繊維がふくらむと、お腹が張りやすくなります。
簡単にいえばお腹が出てしまうため、太ったと誤解しやすいわけです。
また、食物繊維が便秘を招くのも、同じく太ったと誤解されやすい原因です。
便秘も同じくお腹が張る原因です。
そのため、しつこい便秘ほど太ったと感じやすくなるのです。
ちなみに、食物繊維で太るといわれるのにはもう1つ理由があります。
食物繊維の摂取は糖質の摂取につながりやすいためです。
食物繊維は果物・根菜・イモ類などに豊富です。
果物・根菜・イモ類は、糖質が高いものが少なくありません。
つまり食物繊維摂取のために果物などを食べると、同時に糖質も摂ることになります。
結果、糖質過多・カロリーオーバーになってしまうため、太るというわけです。
食物繊維を摂るとおならが出る理由
食物繊維を摂ると、おならが出やすくなることがあります。
食物繊維が体内で消化・吸収される過程では、少なからずガスが発生するためです。
食物繊維の摂取量が多いほど、発生するガスの量も増えます。
つまり食物繊維をたくさん食べると、そのぶんおならも増えやすいのです。
食物繊維が便秘を招く点も、おならが増える原因です。
便秘とは、便が腸内にとどまっている状態です。
腸内にとどまった便は、悪臭ガスを発生させます。
つまり、くさいおならが増えるわけです。
なお、おならが増えたとしても、食物繊維の摂取量をゼロにするのはおすすめできません。
食物繊維には腸内環境を整える効果があるためです。
もしおならが増えたと感じる場合は、食物繊維の量をすこしだけ減らすなどして、調節しましょう。
便秘気味の方は便秘を解消することも大切です。
便秘の解消には、便を軟らかくする水溶性食物繊維の摂取がおすすめです。
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食物繊維が含まれる食品
食物繊維は野菜や果物などに豊富に含まれていますが、肉や魚などの動物性食品にはほとんど含まれていません。
そのため野菜や果物をあまり食べないという人は、食物繊維の摂取量が不足しがちになります。
では食物繊維は、食品にどれだけ含まれているのでしょうか。
可食部100gあたりの食物繊維の含有量は以下の通りです
可食部100gあたり(g) | ||
水溶性食物繊維 | 不溶性食物繊維 | |
玄米(水稲めし) | 0.2 | 1.2 |
はいが精米 | 0.2 | 0.6 |
ライ麦パン | 2.0 | 3.6 |
糸引き納豆 | 2.3 | 4.4 |
きなこ(全粒大豆、黄大豆) | 2.7 | 15.4 |
いんげんまめ | 1.5 | 11.8 |
小豆(ゆで) | 0.8 | 11.0 |
日本かぼちゃ(ゆで) | 0.7 | 2.1 |
切り干しだいこん(乾) | 5.2 | 16.1 |
ごぼう(ゆで) | 2.7 | 3.4 |
ブロッコリー(ゆで) | 0.8 | 2.9 |
さつまいも(皮つき・蒸し) | 1.0 | 2.8 |
りんご(皮つき・生) | 0.5 | 1.4 |
バナナ(生) | 0.1 | 1.0 |
プルーン(乾) | 3.4 | 3.8 |
きくらげ(乾) | 0 | 57.4 |
しいたけ(生) | 0.4 | 5.1 |
出典:文部科学省【第2章日本食品標準成分表PDF(日本語版)】
この表からは、食物繊維は1つの食品にそれほど多く含まれていないことがわかります。
玄米ごはんで換算してみましょう。
玄米ごはん100gあたりに含まれる食物繊維の総量は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を合わせて1.4gです。
成人1日あたりの食物繊維の目標摂取量が17~21g以上なので、目標量を摂取するためには、玄米ごはんを1500g食べなければなりません。
適切な量の食物線維を摂取するために、1つの食品だけで目安量を摂るのは困難です。
そのため野菜や果物、穀類や豆類といったさまざまな種類の食品を、バランスよくとることが大切です。
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食物繊維が不足すると
食物繊維が不足すると、以下に示した生活習慣病の原因になることがあります。
- 便秘
- 肥満
- 肌荒れ
- 糖尿病
- 動脈硬化
- 高血圧
- 高脂血症
食物繊維は腸内環境を整えます。
そのため、必要な量を摂取しないと腸内環境が悪化してしまいます。
腸内環境の悪化をそのままにしていると、大腸に負担がかかり続けるため大きな病気に発展することもあります。
さらに、食後の血糖値の急激な上昇は、長年繰り返すと糖尿病や高脂血症などの原因になります。
しかし、食物繊維には血糖値の急激な上昇を抑える働きがあります。
また、高血圧や動脈硬化は塩分の摂りすぎが原因になることがあります。
食物繊維には塩分とかかわりのあるナトリウムを排出する働きがあるので、高血圧予防の効果があります。
そして食物繊維はカロリーが低いので、肥満防止に役立ちます。
そのため、肥満が原因になる多くの症状を防ぐことができます。
肥満は万病のもととよくいわれます。その通り、肥満は生活習慣病を引き起こすことが少なくありません。肥満によってリスクが高まる生活習慣病とは、どのようなものでしょうか。また、なぜ肥満が生活習慣病を引き起こすのでしょうか。[…]
食物繊維の摂取状況
日本人の多くは食物繊維の摂取量が不足しているといわれています。
どれだけ食物繊維が不足しているのか、1日の野菜の摂取量の平均値でみてみましょう。
以下の表は、1日の野菜の平均摂取量を性別・年代別にまとめたものです。
男性(g/日) | 女性(g/日) | |
20~29歳 | 233.0 | 212.1 |
30~39歳 | 258.9 | 223.2 |
40~49歳 | 253.0 | 241.2 |
50~59歳 | 278.2 | 260.7 |
60~69歳 | 304.3 | 309.8 |
70歳以上 | 322.9 | 300.2 |
総数 | 288.3 | 273.6 |
出典:厚生労働省【令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要 】
食物繊維を野菜からとるには、1日に350g以上の野菜を食べる必要があります。
しかし、どの年代をみても野菜の摂取量は目安量に達していません。
とくに若い世代ほど野菜の摂取量が不足していることが分かりますが、高齢者の野菜不足も深刻です。
健康であり続けるために、どの年代でも食物繊維の積極的な摂取が必要です。
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食物繊維のとりすぎまとめ
ここまで食物繊維のとりすぎについてお伝えしてきました。
食物繊維のとりすぎについての要点を以下にまとめます。
- 食物繊維はお腹の調子を整える働きのほかに、生活習慣病を予防する効果がある。
- 食物繊維をとりすぎることで、便秘や下痢になることがある
- 成人ひとり当たり、1日につき17〜21g以上の食物繊維の摂取が推奨されている。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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