食物繊維は便通改善の効果がある栄養素です。
水溶性食物繊維は栄養素の吸収に、不溶性栄養素は便の嵩に関係しています。
食物繊維の水溶性・不溶性はそれぞれどのような効果があるのでしょうか。
本記事では水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の違いや食物繊維とダイエットの関係についてご紹介していきます
- 水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の違いについて
- 1日にどのくらい食物繊維を摂取すると良いのか
- 食物繊維とダイエットについて
今回の食物繊維に関する情報が、皆さまの健康増進やダイエットについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ、最後までお読みください。
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食物繊維とは
食物繊維とは、私たちの体内にある消化酵素では消化することができない栄養素のことです。
食物繊維にはお腹の調子を整えたり、便通を良くするイメージがある方が多いです。
しかし、他にも身体に良い作用が秘められています。
- 便の嵩(かさ)を増やして便通を良くしてくれる
- 食後の血糖値の急上昇を緩やかにして体重増加や糖尿病を防ぐ
- 腸内細菌を活発にして免疫や消化を助ける
上記のように、食物繊維には便通改善以外にも多くの健康効果を期待できます。
食物繊維は、炭水化物やタンパク質などの五大栄養素に次いで「第六の栄養素」といわれています。食物繊維はおなかの調子を整え、便秘の解消に効果的です。では、食物繊維とは具体的にどのような栄養素なのでしょうか。本記事では食物繊維につ[…]
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水溶性食物繊維・不溶性食物繊維の特徴
食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があります。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のそれぞれの特徴を把握して、自分に身体に必要な食物繊維を摂取してみてください。
水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は、水に溶けることでドロドロのジェル状に変化します。
ドロドロのジェル状になった食物繊維は小腸、大腸内に張りついて糖質やコレステロールなどの栄養素の吸収をゆっくりにする作用があります。
また、体外に排出する作用もあるため、高血圧、糖尿病や脂質異常症の予防に効果があります。
水溶性食物繊維を多く含む食品の例は以下の通りです。
- ワカメや昆布、めかぶなどの海藻類
- 切り干し大根やゴボウなどの野菜類
水溶性食物繊維を効率的に取るには、お味噌汁に入っているだし昆布を一緒に食べたり、わかめ味噌汁がオススメです。
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維は、水に溶けずに、水分を吸収して便の嵩を増やす作用があります。
不溶性食物繊維の摂取によって便の嵩が増えます。
すると大腸を内部から圧迫され、蠕動運動(ぜんどううんどう)と呼ばれる腸の動きが活発になり排便が促されます。
また、不溶性食物繊維が腸内の毒素など様々な物質を吸収して、便と一緒に体外へ排出する作用もあります。
不溶性食物繊維を多く含む食品の例は以下の通りです。
- ライ麦や玄米などの穀類
- 小豆や大豆などの豆類
普段の食事を少し工夫するだけで不溶性食物繊維を多くとることができます。
主食の白米を精製度の低い玄米に変えてみましょう。
もしくは、毎日の食事に納豆を1パック追加することで手軽に不溶性食物繊維の摂取量を増やすことができます。
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水溶性食物繊維の多い食品ランキング|ベスト10
水溶性食物繊維の豊富な食品ベスト10をランキング形式でまとめました。
含有量(g/100g) | |
らっきょう | 18.6 |
スーパー大麦 | 8.3 |
押し麦 | 4.3 |
えんばく/オートミール | 3.2 |
ごぼう | 2.3 |
豆みそ | 2.2 |
レモン | 2 |
アボカド | 1.7 |
ごま | 1.6 |
大豆 | 1.5 |
出典:文部科学省【日本食品標準成分表2020年版(八訂)】
出典:【栄養成分表示 | (一財)日本食品分析センター】
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食物繊維の摂取目安量について
食物繊維は、消化酵素で分解されにくく、ほとんどが体外へ排出されてしまいます。
かつては「食べ物のカス」といわれ、軽視されていた時代もありました。
現在では、五大栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質、無機質、ビタミン)に次ぐ「第6の栄養素」として注目されています。
食物繊維は、整腸作用や、その他にも健康に良いさまざまな効果がある、重要な栄養素です。
しかし健康に欠かせない栄養素であるにも関わらず、現在ほとんどの日本人の食生活において、不足している食品成分なのです。
健康のためにも、積極的に食物繊維を摂ることがすすめられています。
食物繊維の摂取基準
厚生労働省は成人(18~29歳)の食物繊維の1日の目標摂取量※1を以下のようにしています。
- 成人男性:21g
- 成人女性:18g
出典:厚生労働省【日本人の食事摂取基準(2020年版)】
目標摂取量に対し実際の成人(20~29歳)の摂取量は以下のようになっています。
- 成人男性:17.5g
- 成人女性:14.6g
出典:厚生労働省【令和元年国民健康・栄養調査報告】
目標摂取量に対して、成人男性で3.5g、成人女性で3.4g不足している状態です。
食物繊維は、体になくてはならない栄養素というわけではありません。
しかし、「第6の栄養素」といわれるように、腸内環境の改善や生活習慣病の予防などに大変重要な働きをしています。
現在の平均摂取量と目標量の差から明らかなように、食物繊維の不足を積極的な摂取で補う必要があります。
食物繊維の摂取の目安
食物繊維には便通をよくする働きがあります。
食物繊維の健康的な摂取状況について、「1日1回、規則的な排便があること」が1つの目安になります。
この状態での人の排便量は、1日におよそ150gほどです。
この便量に見合った食物繊維を食事から摂取することが重要です。
まずは、1日当たりプラス3~4gの食物繊維摂取を目標にすることがすすめられます。
※1:生活習慣病の発症予防を目的として、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量。
食物繊維が多く含まれる食品
食物繊維は、穀類やイモ類、野菜、きのこ類、海藻類に多く含まれています。
穀類では、白米よりも玄米のほうが食物繊維が豊富です。
野菜では、ごぼうに特に食物繊維が豊富に含まれています。
きのこ類は、食物繊維以外にもミネラルやビタミンを多く含み、低カロリーであるということも嬉しい点です。
納豆は水溶性、不溶性の食物繊維をバランスよく豊富に含んでいるので、日々の食事に取り入れやすい食品としておすすめです。
キウイやブルーベリーなどの果物も食物繊維を多く含んでいます。
果物をデザートとして、いつもの食事に1品加えるだけでも手軽に食物繊維を摂ることができます。
また、普段の食事でも、食べ方や調理方法をひと工夫することで効率的に食物繊維を摂取することができます。
例えば、切干し大根はゆでた大根の2倍以上の食物繊維を含んでいます。
少しでも食物繊維の摂取量を増やせるよう、日常の食事の献立でも、食材や食品を意識することが重要です。
食物繊維を摂取できるおすすめの方法
不足している食物繊維量を補う献立メニューの考え方を以下にご紹介します。
主食の種類を変える
食物繊維量(お茶碗1杯150g相当)
- 白米 :0.45g
- 玄米 :2.1g
1日の食物繊維(お茶碗2.5杯/日)を4.2g増やすことができます。
食物繊維を多く含む副菜を1品(2品/日)追加する
副菜の食物繊維量(1品分)の例
- ブロッコリー(60g) :2.6g
- 菜の花(50g) :2.1g
- オクラ(40g) :2.0g
- エリンギ(40g) :1.7g
- えのきだけ(40g) :1.6g
- アボガド(90g) :4.8g
- 乾燥ひじき(5g) :2.2g
主食を白米から玄米に変えただけで食物繊維の1日当たりの摂取量不足を解消できます。
食物繊維を多く含む野菜や果物を追加すればさらに摂取量をアップすることができます。
献立メニューを上手に工夫し食物繊維不足は解消しましょう。
食物繊維が豊富に含まれる食べ物について詳しく知りたい方は以下の記事も併せてご覧ください。
食物繊維の働き
食物繊維は、人の消化酵素では消化することができません。
五大栄養素といわれる、炭水化物、脂質、タンパク質、無機質、ビタミンは消化酵素によって消化されますが、食物繊維は大腸まで消化されずに届きます。
現代人にとって腸内環境は、ストレスや偏った食生活、飲酒等で悪化しやすい環境条件が揃っており、加齢によっても腸内環境は悪化していきます。
食物繊維は消化されずに大腸まで届き、腸内環境を整えながらさまざまな働きをしてくれるのです。
腸を整える
食物繊維の摂取はお腹の調子を整えます。
腸の調子は、腸内細菌の善玉菌と悪玉菌のバランスにより決まります。
ストレスや偏った食生活、飲酒、加齢などによる善玉菌の減少が、腸内環境の悪化を招くのです。
腸内環境を整え、良くするためには、善玉菌を増やし悪玉菌を減らして、腸内細菌のバランスを変えることが必要です。
腸内の善玉菌を増やす食品には、以下のような食品があります。
- 食物繊維を含む食品
- ビフィズス菌や乳酸菌を含む食品
・ヨーグルトをはじめとする乳酸菌飲料
・納豆や漬物などの発酵食品
食物繊維は、便の体積を増やす材料になり、腸を刺激してぜん動運動を活発にし、便通を促進します。
食物繊維の摂取は同時に、腸内環境を整える腸内細菌の善玉菌を増やし、お腹の調子を整えます。
血糖値の上昇を抑える
食物繊維は、血糖値の急激な上昇を抑制します。
水溶性食物繊維の働きにより、糖の吸収速度が穏やかになり、食後の血糖値の急激な上昇を防ぐことができます。
血中コレステロールを下げる
食物繊維には、血中のコレステロール濃度を下げる働きがあります。
水溶性食物繊維は、胃や腸内をゆっくり進みながら、コレステロールを吸着し、体外へ便と一緒に排出することにより、血中のコレステロール値を下げます。
生活習慣病の予防効果
食物繊維は生活習慣病を予防するための大事な栄養素です。
近年、食物繊維が糖尿病や動脈硬化などをはじめとする、生活習慣病の予防に効果があることが明らかになっています。
死因の多くを占める生活習慣病の予防に関わることから、食物繊維の重要性にさらに注目が集まっています。
食物繊維と生活習慣病の関係を以下に示します。
- 糖質や脂質の吸収を抑制することで脂質異常症、動脈硬化を予防
- 低カロリーで満腹感の得られやすい食品を摂取することで肥満を予防
- 食後の血糖値の急激な上昇を抑制することで糖尿病を予防
- 腸の有害物質の排出をすることで高血圧を予防
食物繊維と血糖値の関係について詳しく知りたい方は以下の記事も併せてご覧ください。
水溶性食物繊維や不溶性食物繊維が不足すると?
現代の日本人は食物繊維の摂取量が目標値に届いておらず、ほとんどの人が食物繊維不足に陥っています。
食物繊維不足が深刻になると、以下のような病気にかかるリスクが上がります。
- 便の嵩が減り便秘になる
- 便秘になると痔や大腸がんになる
- 急激な血糖値上昇によって糖尿病になる
食事に気を遣わずに外食やファストフードなどで、食事を取ることが多いと野菜やくだもの、豆類を食べることが少なく、食物繊維不足に陥りやすいです。
水溶性食物繊維や不溶性食物繊維を過剰摂取すると?
健康やダイエットに良いからと食物繊維を過剰に摂取すると、身体に悪影響を及ぼす可能性があります。
水溶性食物繊維は水分を含んでジェル状になり、エネルギーの吸収を抑える効果があります。
しかし、水溶性食物繊維によるエネルギー吸収を抑える働きが過剰になると、ビタミンやミネラルなど身体に必要な栄養素の吸収が阻害される可能性があります。
また、不溶性食物繊維の過剰摂取では便の嵩が増えすぎて、腸内で便をうまく運ぶことができず、便秘になることがあります。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の過剰摂取はお腹の調子を乱すことがあるので、まずは目標量摂取を目指してみましょう。
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食物繊維をうまく摂取して便秘を解消しよう
食物繊維は便秘改善に役立つ成分です。
食物繊維で便秘を解消するためのポイントをご紹介します。
水溶性食物繊維と腸の関係
水溶性食物繊維が便秘改善に役立つのは、便を柔らかくする作用があるためです。
一般的に、便秘の方は腸内で便が硬くなっています。
理由は、腸内に長くとどまる内に、便の中から水分が抜けてしまうためです。
水溶性食物繊維は、硬くなった便に水分を与えることで、ゼリー状にします。
すると便がスムーズに排出されやすくなるため、結果として便秘解消が期待できるというわけです。
不溶性食物繊維と腸の関係
不溶性食物繊維が便秘解消に役立つのは、腸内で膨張する性質があるためです。
具体的には、不溶性食物繊維は水分を吸うことで腸内で膨らみます。
不溶性食物繊維が腸内で膨張すると、2つの効果が期待できます。
1つめは、便のカサが増えることです。
2つめは、腸が適度に刺激されることです。
水分を含んだ不溶性食物繊維は、腸内にたまった便を巻き込みながら大きくなります。
つまり、ずっと腸に溜まっていた便が排出されやすい状態になるのです。
便が大きくなると、腸が内側から適度に刺激されます。
適度な刺激は腸の動きを活発化させるため、便がスムーズに排出されやすくなります。
便秘解消に最適な食物繊維の摂り方
便秘解消を狙うには、適量の食物繊維を摂ることが大切です。
あわせて、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のバランスも大切にしましょう。
食物繊維をむやみに摂ると、かえって便通が乱れることがあるためです。
たとえば、不溶性食物繊維を摂りすぎると、かえって便秘が悪化することがあります。
理由は、不溶性食物繊維は水分に溶けにくい性質があるためです。
摂取しすぎると便が硬くなって、かえって腸内で詰まりやすくなるのです。
反対に水溶性食物繊維の摂りすぎは、下痢を引き起こすおそれがあります。
便通を正常に整えるには、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維をバランス良く摂ることが大切です。
具体的には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は1:2のバランスを保ちましょう。
便秘を解消するには、食物繊維と一緒に乳酸菌を摂ることも大切です。
乳酸菌は善玉菌の1種で、腸内環境を整える作用があります。
乳製品のエサは食物繊維です。
つまり食物繊維と一緒に摂ると、乳酸菌が活発化しやすくなるのです。
乳酸菌が豊富な食品は、ヨーグルトなどの発酵食品が代表的です。
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ダイエットと食物繊維
毎日の食事で食物繊維をしっかり取ることは、ダイエット成功の鍵となります。
食物繊維をしっかり取ることで、便が出るようになり身体に不要なものを身体の外に排出してくれます。
さらに、太ってしまう原因でもある急激な血糖値の上昇を抑えることができます。
日本人の食物繊維摂取量の平均は約15gであり、目標量より少ないのでいつもの食事に食物繊維食材を足す必要があります。
また、食べるのが面倒くさくてサプリメントで補うと、過剰摂取になってしまい必要栄養素が吸収できない可能性があるので注意が必要です。
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食物繊維の水溶性・不溶性まとめ
ここまで、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の違いや食物繊維の摂取量を中心にお伝えしてきました。
- 水溶性食物繊維はジェル状になり血糖値の上昇を緩やかにして、不溶性食物繊維は便の嵩を増やして腸の動きを活発にする
- 1日の食物繊維の目標摂取量は成人男性で21g以上、成人女性で18g以上
- 食物繊維の整腸作用や栄養をゆっくり吸収する作用によってダイエットのサポートになる
これらの情報が、皆様のダイエットや健康増進のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。