「食物残渣って何だろう?」
「食物残渣の原因や対処法、未然に防ぐ方法などについて知りたい」
最近口の中に食べ物の残りカスが目立つ、咀嚼が大変だと感じている、といった方の中には、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
食物残渣は、特に高齢者にとって身近な問題で、放置しておくと病気に繋がったり健康を損なう可能性があります。
本記事では、要支援と要介護について以下の点を中心に詳しく解説します。
- 食物残渣の概要
- 食物残渣の原因
- 食物残渣によるリスクや病気
要支援や要介護について知りたい方はご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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食物残渣とは?
はじめに、食物残渣についてご紹介します。
食物残渣とは、主に食後に口腔内や消化管内に残る食べ物のカスや消化されていない食物のことを指します。
特に歯と歯の間や頬の内側など、目に見えにくい部分に溜まりやすいのが特徴で、自覚しにくい場合が多いといった問題があります。
食物残渣は、十分に除去できないと、虫歯や歯周病、口臭の原因となるだけでなく、誤嚥性肺炎といった全身的な疾患を引き起こす可能性もあります。
また、食物残渣は、主に高齢者や口腔機能が低下している方に多く見られますが、若年層でも食事やケアの仕方によっては残渣が増えるケースがあるため注意が必要です。
まずは食物残渣とは何かを正しく理解し、その原因や対策を知ることが重要です。
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食物残渣が起こるのは、口の中だけじゃない
食物残渣と聞くと、歯や頬の間など、どうしても口の中だけの症状を想像しがちですが、実際には胃や腸など消化管内に未消化の食べ物が留まっているケースも含まれます。
特に、繊維質の多い食材や噛み応えのある食べ物を十分に咀嚼せずに飲み込んでしまうと、胃や腸に負担をかけ、消化/吸収がスムーズに行われにくい状態を招きやすいのです。
さらに、消化器官内に食物残渣が残り続けてしまうと、栄養の吸収効率が下がるだけでなく、腸内環境の悪化につながる恐れもあります。
腸内細菌のバランスが乱れると便秘や下痢を引き起こすリスクが高まり、長期的には免疫機能の低下を招くことも考えられるでしょう。
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食物残渣の原因
次に、食物残渣の原因について、以下の4つをご紹介します。
- 咀嚼力や嚥下力の低下
- 唾液量の減少
- 舌や頬の筋力の低下
- 麻痺や口腔の障害
原因を正しく理解することは、適切なケアや予防策をする上で欠かせません。
特に高齢者の方は、自分の日々の状態に当てはまるものがないか、確認しておくことをおすすめします。
①咀嚼力や嚥下力の低下
食物残渣の原因の1つ目は「咀嚼力や嚥下力(食べ物を飲み込む力)の低下」です。
咀嚼力が弱くなると、食べ物を十分に細かく砕くことが難しくなり、結果的に口の中に残る食べカスが増えていきます。
入れ歯が合っていなかったり、抜けた歯を放置したままにしていたりすると、噛む機能がさらに低下して食物残渣が溜まりやすくなってしまいます。
また、嚥下力が低下することで食物をスムーズに飲み込めず、口腔内や喉の奥に食べカスが残り、誤嚥を起こすリスクも高まります。
食物残渣は、加齢以外にも、歯並びや顎関節症、ストレスによる早食いなど多様な原因が考えられるため、自身の生活習慣や口腔状態を見直すことが重要です。
②唾液量の減少
2つ目は「唾液量の減少」です。
唾液は、食物を湿らせることで飲み込みやすくするだけでなく、口腔内の自浄作用や殺菌作用を担うなど、様々な役割を果たしています。
唾液量が減少すると、食べ物が塊のまま口に残りやすくなるほか、口腔内のpH回復が遅れるため、細菌が増殖しやすい環境が生まれてしまいます。
このような状態が続くと、虫歯や歯周病、口臭の悪化といったトラブルに直結してしまいます。
唾液の減少は加齢やストレス、薬の副作用などさまざまな要因で起こりますが、こまめな水分補給やガムを噛むなど、唾液分泌を促す工夫を取り入れることで簡単に改善できます。
③舌や頬の筋力の低下
3つ目は「舌や頬の筋力の低下」です。
歯の間だけでなく、舌や頬の内側に食物残渣が付着してしまうことも少なくありません。
舌や頬の筋力が低下すると、食べ物を歯列へ送り込む力が弱まるため、食べカスが散乱しやすくなり、特に頬の側面に張り付いたまま残るケースが増えてきます。
こうした状態が続くと、食後の口腔ケアが不十分な場合に細菌の温床となり、虫歯や口臭をはじめとする様々な問題を引き起こしやすくなります。
高齢者はもちろん、長期入院や介護を要する方、または神経/筋疾患のある方は、舌や頬の可動域が狭まるリスクが高いのが現状です。
日常的に舌の運動や口腔体操を取り入れる、歯科医や言語聴覚士から口腔リハビリの指導を受けるなど、早めの対策が重要になるでしょう。
④麻痺や口腔の障害
4つ目は「麻痺や口腔の障害」です。
脳血管疾患による片麻痺や外科手術後の後遺症など、神経や筋肉の機能が一部失われることで、口腔内の食べカスを適切にコントロールできなくなることがあります。
麻痺があると特定の側に食べ物が溜まりやすくなり、噛む回数や力、頬や舌の動きにも偏りが生じるため、口の中に残ったものを排出しづらくなるのです。
このようなケースでは、通常の歯みがきだけでは不十分で、口腔内をしっかり観察しながらライトなどを使って食べかすを直接確認し、取り除く作業が不可欠です。
特に誤嚥性肺炎のリスクが高まるため、歯科医や医師、介護スタッフなどと連携しながらこまめなケアをすることが、深刻な合併症を防ぐカギとなります。
高齢者や嚥下障害に関する口腔ケアに関しては、次の記事でも詳しく解説しています。
合わせてご覧ください。
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食物残渣が引き起こすリスクや病気
ここでは、食物残渣が引き起こすリスクや病気について、以下の4つをご紹介します。
- 細菌の繁殖
- 誤嚥性肺炎の発症
- 虫歯の発症
- 口臭の悪化
冒頭でもご紹介した通り、食物残渣を放置していると、単に口の中が不快になるだけでなく、細菌の増殖や全身への悪影響といった深刻なリスクが高まる恐れがあります。
まずは本章でご紹介するようなリスクや病気について正しく理解し、その危険性について把握した上で予防に取り組むことが重要です。
①細菌の繁殖
食物残渣が引き起こすリスクや病気の1つ目は「細菌の繁殖」です。
口腔内は、湿度や温度という面において、細菌にとって好条件がそろった環境といえます。
さらに、食物残渣という栄養源が存在すると、嫌気性菌を含む多様な細菌が爆発的に増殖しやすくなります。
特に歯と歯の間や歯周ポケットは酸素が少なく、細菌が活動しやすいため、放置することで歯茎の炎症や歯周病を悪化させる大きな原因となるのです。
細菌の増殖によって産生された酸は歯を溶かし、虫歯のリスクを高めます。
一度虫歯が進行してしまうと自然に治すことは困難であるため、歯科治療が必要になります。
②誤嚥性肺炎の発症
2つ目は「誤嚥性肺炎の発症」です。
誤嚥性肺炎は、本来食道を通るべき食べ物や唾液などが気道に入り込むことで起こる肺炎です。
特に、高齢者や嚥下障害のある方は、食後に口腔内に残った食べカスや唾液を誤って飲み込むリスクが高く、そこに細菌が混ざっていれば肺炎を発症する可能性が一気に高まってしまいます。
肺炎は重症化しやすいため、入院治療が必要になるなど、患者や介護者にとって大きな負担となります。
また、口腔内が清潔に保たれていないほど細菌の量も増え、気道に入り込む病原体が多くなるため、誤嚥性肺炎のリスクがさらに深刻化してしまいます。
こうした連鎖を防ぐには、噛む力/飲み込む力を鍛えるリハビリだけでなく、日頃の丁寧な口腔ケアが非常に重要となります。
③虫歯の発症
3つ目は「虫歯の発症」です。
虫歯は、口腔内の細菌が食物に含まれる糖質を分解する際に生じる酸によって歯が溶かされる病気です。
虫歯と聞くと、幼い子どもや歯磨きの習慣が無いような方に多いイメージがありますが、食物残渣によって引き起こされる可能性が高い病気と言えます。
食物残渣が多い環境では、細菌が酸を作りやすいだけでなく、酸が歯の表面に長時間とどまりやすいという悪条件が重なり、虫歯が進行しやすくなります。
初期の虫歯は痛みなどの自覚症状が少ないため、残渣が多い状態を放置すると、気づかないうちに歯の損傷が進む恐れがあるのです。
虫歯が神経や歯の根元にまで達すると、強い痛みや歯の機能低下を引き起こし、最悪の場合は抜歯に至るケースも考えられます。
④口臭の悪化
4つ目は「口臭の悪化」です。
誤嚥性肺炎や虫歯にならなくても、食物残渣はすぐに口臭の悪化を引き起こします。
口臭は、口腔内の細菌がタンパク質や食べかすを分解し、揮発性の硫黄化合物などの臭い成分を発生させることで起こります。
食物残渣が、歯や舌、頬の内側などに付着したまま残っていると、細菌が活発に繁殖し、不快な臭いを放ち続ける状況が長引きやすいのです。
また、唾液が減少している場合は自浄作用が低下し、口臭がさらに強くなることも珍しくありません。
口臭が強くなると、日常生活や人間関係に悪影響を及ぼす可能性があり、本人だけでなく周囲にも迷惑をかけてしまいます。
次の記事では、誤嚥性肺炎について詳しく解説しています。
合わせてご覧ください。
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食物残渣を解消するための対策
ここでは、食物残渣を解消するための対策について、以下の3つをご紹介します。
- しっかりと歯を磨く
- デンタルフロスなどを使用する
- 洗口液を使用する
普段の生活で食物残渣を感じる方は、ぜひ本章でご紹介する解消法を試してみてください。
①しっかりと歯を磨く
食物残渣を解消するための対策の1つ目は「しっかりと歯を磨くこと」です。
歯を磨くことは、食物残渣を取り除く最も基本的な手段でありながら、その影響力は非常に大きいと言え、咀嚼力や嚥下力によって食べ物がどうしても口の中に残ってしまうといった場合は、必ず丁寧に取り組むべきものです。
ただし、正しいブラッシングができていなかったり、急いで磨きすぎたりすると、歯の表面や歯間部、歯茎の境目などに磨き残しが生じやすくなります。
力加減が強すぎても弱すぎても不十分なため、歯ブラシの毛先がきちんと歯に当たるよう、角度と軽いタッチを意識することが歯磨きのコツです。
また、一日のうち最低でも朝と夜の2回は、しっかり時間をかけて磨く習慣をつけましょう。
②デンタルフロスなどを使用する
2つ目は「デンタルフロスなどを使用すること」です。
歯磨きだけでは、歯ブラシの毛先が届きにくい歯と歯の隙間や歯並びの複雑な部分の食べカスを完全に取り切れないことがあります。
そこで、デンタルフロスや歯間ブラシを併用すると、歯と歯の接触面に詰まった残渣をしっかりとかき出せます。
こうした補助清掃具は使い方がやや難しく、面倒に感じてしまう場合もありますが、慣れると短時間で終えられるようになり、毎日のケアで虫歯や歯周病のリスクを大きく下げることが期待できます。
特に、詰め物やかぶせ物をしている箇所は、段差や隙間に汚れが溜まりやすいポイントです。
フロスを通す際は、ゆっくりと動かしながら歯の側面に沿うようにして、押し付けすぎないよう注意しましょう。
③洗口液を使用する
3つ目は「洗口液を使用すること」です。
洗口液(マウスウォッシュ)とは、口臭を防いだり口の中を綺麗に保つ目的で使用する液体のことです。
洗口液を使うと、歯磨きやフロスで除去しきれなかった微細な食べかすや菌を洗い流し、口腔内をさらに清潔に保ちやすくなります。
また、殺菌成分や抗炎症成分、フッ素などが含まれている製品を選べば、歯茎の腫れやむし歯の予防にも一定の効果が期待できるでしょう。
ただし、洗口液だけでは十分な物理的除去が行えないため、必ず歯磨きやフロスと併用する形で使うのが望ましいとされています。
食物残渣を未然に防ぐための方法
最後に、食物残渣を未然に防ぐための方法についてご紹介します。
ここまで、食物残渣の原因や対処法などをご紹介してきましたが、なんと言っても重要なのはそもそも食べ物を口の中に残さないことです。
咀嚼力や嚥下力の低下、舌や頬の筋力の低下によって食べ物が口の中に残ってしまうことは仕方の無いことですが、日々の食事の中で以下のような工夫をすることで、その残りカスも最大限取り除けます。
- 食べ物を十分に噛み砕く
- こまめに水分を補給する
- 定期的に歯のクリーニングをする
また、食物残渣は口の中に残れば残るほど取り除きにくくなるという側面もあるため、食後はしっかりとうがいや歯磨きをして、清潔に保ち続ける意識が重要です。
食物残渣についてのまとめ
ここまで要支援と要介護についてご紹介しました。
要点を以下にまとめます。
- 食物残渣とは、主に食後に口腔内や消化管内に残る食べ物のカスや消化されていない食物のこと
- 食物残渣の原因には、咀嚼力や嚥下力の低下、舌や頬の筋力の低下などが挙げられる
- 食物残渣によるリスクや病気には、誤嚥性肺炎や虫歯の発症、口臭の悪化などが挙げられる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。