在宅で家族の介護を行っていると、介護のために仕事を休まざるを得なくなったり、退職(介護離職)を選択せざるを得なくなったりして、経済的な困窮や不安を感じるケースが少なくありません。
- 「家族を介護しているけれど、国や自治体から手当や慰労金はもらえないのだろうか?」
- 「在宅介護の経済的負担を減らせる公的制度にはどんなものがある?」
実は、在宅で要介護者を介護している家族に対して、自治体から現金が支給される「家族介護慰労金」などの手当制度が存在します。
また、手当以外にも税金の控除や給付金、介護用品の給付など、知っておくべき支援策が数多く用意されています。
本記事では、在宅介護の家族に支給される手当(介護手当・慰労金)の支給条件や金額相場をはじめ、働いている方が使える介護休業給付金、要介護高齢者も対象となる特別障害者手当、見落としがちな税金控除や自治体の独自支援まで分かりやすく解説します。
経済的負担を和らげ、安心して在宅介護を続けるために、ぜひ参考にしてください。

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1. 在宅介護の家族に支給される「介護手当(家族介護慰労金)」とは?
在宅で介護を行う家族に対して、お住まいの自治体から現金が支給される制度があります。一般的に「家族介護慰労金」や「在宅介護手当」「寝たきり老人等介護手当」などと呼ばれています。
介護手当(家族介護慰労金)の目的と特徴
介護手当の主な目的は、介護のために就労が制限されたり、消耗品費がかさんだりして生じる家族の経済的負担の軽減・慰労です。
介護保険制度のような国一律のサービスとは異なり、各市区町村が独自に実施している事業であるため、制度の有無、支給金額、受給条件、名称は自治体によって大きく異なります。
実施していない自治体もあるため、まずは居住地の自治体での実施状況を確認する必要があります。
支給金額の相場
自治体によって異なりますが、一般的な支給金額の相場は年額10万円〜12万円程度(月額換算で1万円前後)です。
一括で年1回支給されるケースもあれば、数ヶ月ごとに分割支給されるケースもあります。
主な支給条件(よくある受給基準)
自治体ごとに条件は設定されていますが、多くの場合、以下のような厳しい要件を満たす必要があります。
- 要介護度:要介護4または要介護5(一部自治体では要介護3以上)の高齢者を在宅で介護していること
- 介護保険サービスの非利用:過去1年間(または一定期間)、介護保険サービス(ショートステイやデイサービスなど)をほぼ利用していないこと(※年間10日以内の利用までなら認められる自治体が多い)
- 医療機関への入院期間:過去1年間の入院日数が通算90日以内(または30日以内)であること
- 所得制限:要介護者本人および介護者の属する世帯全員が住民税非課税であること
「介護保険サービスを使わずに家族だけで在宅介護を続けている労をねぎらう」という趣旨の制度であるため、デイサービスやショートステイを日常的に利用している場合は対象外となるケースが多い点に注意が必要です。
手当の使い道と非課税扱い
家族介護慰労金などで支給されたお金は非課税所得となるため、使い道は完全に自由です。領収書の提出や使途報告の義務もありません。
- 紙おむつや衛生用品などの介護用品の購入費
- 自宅の光熱費や食費の補填
- 日頃介護を頑張っている家族自身のリフレッシュ費用(外食や趣味など)
どのような目的に使っても問題ありません。
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2. 働いている方・寝たきり高齢者が利用できるその他の公的給付・手当
家族介護慰労金以外にも、条件を満たすことで国や公的機関から支給される給付金や手当があります。
① 介護休業給付金(仕事を休んで介護体制を整えるための給付金)
家族を介護するために会社を休業(介護休業)した場合に、雇用保険から支給される手当金です。
- 対象者:雇用保険に加入しており、要介護状態(常時介護を必要とする状態)にある家族を介護するために休業する会社員・パート・アルバイト等
- 支給額:休業開始前の賃金日額の67%相当額
- 支給期間:対象家族1人につき通算93日まで(最大3回まで分割取得可能)
介護休業は「ずっと自分が家で介護をするための期間」ではなく、「ケアマネジャーと相談して介護保険サービスを手配し、仕事と介護を両立できる体制を構築するための期間」です。
介護離職を防ぎ、収入の落ち込みを補うための極めて重要な給付制度です。
② 特別障害者手当(重度障害・寝たきり高齢者対象の手当)
精神または身体に著しく重度の障害があり、日常の生活において常時特別の介護を必要とする在宅の方に支給される国の手当制度です。
- 対象者:20歳以上で、重度の障害や病気により、日常生活で常時複雑な介護を必要とする在宅の方。「要介護4・5」で寝たきり状態の高齢者や、重度の認知症の方も受給対象となり得る
- 支給額:月額 28,840円(※物価スライド等により改定される公的金額)。年4回(5月、8月、11月、2月)に分けて本人の口座へ振り込み
- 受給できないケース:病院や診療所に継続して3ヶ月を超えて入院している場合や、障害者施設・特別養護老人ホームなどの施設に入所している場合は対象外。また、本人や配偶者・扶養義務者の所得が一定額以上ある場合は支給停止
「障害者手当」という名称から高齢者の介護では見落とされがちですが、医師の診断書(指定様式)を作成してもらい要件を満たせば、高齢の要介護者でも申請・受給が可能です。
③ 障害者控除(税金が安くなる制度)
要介護認定を受けている65歳以上の高齢者は、自治体から「障害者控除対象者認定書」の交付を受けることで、障害者手帳を持っていなくても、所得税や住民税の「障害者控除」を受けることができます。
- 概要:65歳以上で、認知症の程度や寝たきりの状態が障害者に準ずると認められた場合、税法上の障害者または特別障害者として控除が適用される
- メリット:介護者(または本人)の所得控除額が増えるため、納める所得税・住民税が安くなる。税金が安くなることで、介護保険料や医療費の自己負担上限額が下がる二次的効果が得られる場合もある
- 申請先:お住まいの市区町村の介護保険課や高齢者福祉窓口にて申請
3. 在宅介護の直接的な出費を減らす介護保険の補助金・給付制度
現金の支給ではありませんが、在宅介護にかかる費用そのものを大幅に削減できる介護保険の給付制度を紹介します。
① 介護保険 住宅改修費支給(自宅のバリアフリー工事)
要介護者が自宅で安全に生活し、介護者の負担を減らすためのリフォーム費用を補助する制度です。
- 対象工事:手すりの取り付け、段差の解消(スロープ設置など)、滑りにくい床材への変更、引き戸等へのドアの取り替え、洋式便器への取り替えなど
- 支給限度額:要介護者1人につき上限20万円(原則一生に1回まで)
- 自己負担額:所得に応じて1割〜3割負担(例:1割負担の方なら、20万円の工事を2万円の自己負担で実施可能)
必ず工事着工前にケアマネジャーに相談し、事前に自治体へ申請する必要があります。事後申請では支給されないため注意してください。
② 特定福祉用具販売(介護用品の購入補助)
他人が使用したものを再利用することに抵抗がある福祉用具や、排泄・入浴に関する用具を1〜3割の自己負担で購入できる制度です。
- 対象となる指定福祉用具:腰掛け便座(ポータブルトイレ・補高便座)、自動排泄処理装置の交換可能部品、入浴補助用具(シャワーチェア・浴槽手すり・バスボードなど)、簡易浴槽、移動用リフトの吊り具部分
- 支給限度額:毎年4月1日〜翌年3月31日までの1年間で上限10万円
※指定を受けた「指定特定福祉用具販売事業者」から購入した場合のみ対象となります。
一旦全額を支払い、後から払い戻しを受ける「償還払い」が一般的ですが、自治体によっては自己負担分のみ支払う「受領委任払い」も選択できます。
③ 高額介護サービス費(1ヶ月の介護費用の上限設定)
1ヶ月に支払った介護保険サービスの自己負担額の合計が、所得に応じた世帯上限額(例:一般世帯で月額44,400円、住民税非課税世帯で月額24,600円など)を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。
デイサービスや訪問介護、ショートステイなどを多く利用した月でも、費用が無限に膨らむのを防ぐことができます。
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4. 見落としがち!自治体が独自で行う在宅介護支援サービス
現金手当の他にも、市区町村では在宅で介護する家族に向けた独自の給付・サービスを提供しています。
① 紙おむつ・介護用品の給付事業
在宅で重度の要介護者を介護している非課税世帯などを対象に、紙おむつや尿取りパッド、使い捨て手袋などの介護用品を現物支給、または年間数万円分の給付券(引き換え券)として支給する自治体が多くあります。
毎月かかる紙おむつ代は大きな負担となるため、非常に助かる支援です。
② GPS位置情報探索サービス利用費補助
認知症による徘徊症状がある高齢者を介護している家族に対し、GPS発信機や位置情報探索サービスの加入金・初期費用(上限1万円程度)を補助する制度です。
行方不明防止や事故予防、介護者の精神的安心に繋がります。
③ 徘徊SOSネットワーク・見守りシール事業
認知症高齢者が徘徊して保護された際、素早く身元が判明するよう、QRコード付きの「見守りシール」を衣服や靴に貼る事業を無償提供している自治体が増えています。
④ 配食サービス(高齢者向け食事宅配の助成)
一人暮らしの高齢者や、家族が介護で調理を行うのが難しい世帯に対し、栄養バランスの取れた安否確認付きの宅配弁当を低価格(1食数 HUNDRED 円程度)で提供・助成する事業です。
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5. 在宅介護の手当・制度を利用する際の注意点とコツ
公的な手当や支援制度を賢く活用し、共倒れを防ぐためのポイントを解説します。
注意点①:公的支援の多くは「申請主義」(自分から動かないともらえない)
日本における福祉制度や手当のほとんどは「申請主義」です。
役所から「あなたには手当の受給資格がありますよ」と親切に教えてくれることは基本的にありません。
情報を自分から集め、必要な申請書類を提出して初めて支給が開始されます。
過去に遡って遡及受給できない制度も多いため、「知らなかった」で損をしないよう早めの確認が不可欠です。
注意点②:手当(家族介護慰労金)目当てでサービスを控えるリスクに注意
家族介護慰労金をもらうために、「ショートステイやデイサービスを使わない」という選択をする家族がいらっしゃいます。
しかし、年10万円程度の手当のために365日休みなく一人で重度介護を続けると、介護者自身の体調破壊や介護うつ、共倒れを引き起こす危険性が極めて高くなります。
手当をもらうことよりも、デイサービスやショートステイを活用して介護者自身がレスパイト(休息)を取る方が、長期的には家族全員の幸福に繋がります。
困ったときは「地域包括支援センター」へ相談する
「自分が使える手当や制度がどれなのか分からない」「手続きが難しそう」と感じたら、お住まいの地域の「地域包括支援センター」に相談しましょう。
地域包括支援センターには、社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーなどの専門家が常駐しており、そのご家庭の状況に合った手当や助成制度、介護サービスの組み合わせを無料で一緒に考えてくれます。
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6. まとめ
在宅介護で利用できる手当や支援制度のポイントをまとめます。
- 家族介護慰労金(介護手当):要介護4・5等の高齢者をサービス利用なしで在宅介護する非課税世帯などに、年10万〜12万円程度を支給する自治体独自の制度。使い道は自由
- 介護休業給付金:仕事と介護を両立するための休業時に、賃金の67%が支給される制度(通算93日まで)
- 特別障害者手当:要介護4・5の寝たきり高齢者等も対象。月額28,840円が支給される国の制度
- 税金控除:「障害者控除対象者認定書」を取得することで、所得税・住民税が安くなる
- その他の軽減策:住宅改修補助(上限20万円)、特定福祉用具購入(年間10万円)、紙おむつ給付事業などを組み合わせる
在宅介護は、根性や精神論だけで乗り切れるものではありません。
公的な手当や給付金、助成サービスをフル活用し、経済的・身体的な負担をできる限り軽減させながら、無理のない持続可能な介護体制を作っていきましょう。


