緑内障は日本人が失明する原因の第1位ともいわれています。
自覚症状があらわれにくいため、気づいたときには症状がかなり進行していることもあります。
緑内障とは、いったいどのような病気なのでしょうか。
緑内障を治療する方法はあるのでしょうか。
本記事では、緑内障について、以下の点を中心にご紹介します。
- 緑内障の種類
- 緑内障の主な症状
- 緑内障の主な原因
- 緑内障を治療するには
緑内障について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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緑内障とは
緑内障とは、眼と脳をつなぐ視神経に障害が起こることです。
視野が徐々に狭くなっていくのが特徴です。
緑内障は、眼病の中でも比較的発症率が高い病気です。
特にリスクが高いのは40代以降の方です。
緑内障を放置すると、最悪の場合は失明します。
一方、早期に治療すれば重症化リスクは低減できます。
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緑内障の種類は5つ
緑内障は大きく分けて5つのタイプがあります。
それぞれの特徴などを解説します。
原発開放隅角緑内障
原発開放隅角緑内障は、眼圧が高くなることで視神経が圧迫される状態です。
眼圧とは、眼球の硬さのことです。
より具体的には、房水による圧力を眼圧と呼びます。
房水とは眼球内を循環する水分です。
眼球の形を維持したり、栄養・老廃物を運搬したりする役割を担います。
通常房水は毛様体という部分で作られ、眼球内の線維柱帯を通りシュレム管から排出されます。
眼圧が正常に保たれるには作られる房水と、排出される房水の量が同じでなければなりません。
一方、原発開放隅角緑内障では、線維柱帯が目詰まりを起こします。
線維柱帯が詰まると、房水の循環に支障が出ます。
具体的には、房水がシュレム管に辿りつけなくなるのです。
排出されない房水は、眼球内にだんだん蓄積されます。
眼球内に過剰な房水が溜まると、眼圧が上昇します。
簡単にいえば、眼球が膨張してしまうのです。
結果、眼球が視神経を圧迫してしまい、視野が欠けるなどの症状があらわれます。
なお、原発開放隅角緑内障は正常眼圧緑内障と、狭義の原発開放隅角緑内障の2種類に分類されます。
正常眼圧緑内障は、正常な眼圧内で起こる緑内障です。
狭義の原発開放隅角緑内障は、眼圧が20mmHgより高いタイプです。
単純に原発開放隅角緑内障という場合、狭義の原発開放隅角緑内障を指すことが多いです。
原発開放隅角緑内障の症状は、視野が狭くなることです。
多くの場合、症状は数年かけてゆっくり進行します。
そのぶん視野狭窄を自覚しにくいため、気がついたときには症状がかなり進行していたというケースが多々みられます。
原発閉塞隅角緑内障
原発閉塞隅角緑内障は、隅角という部位が閉じて起こる緑内障です。
隅角とは、房水の排出口です。
なんらかの原因で隅角が完全に閉じると、房水が排出されなくなります。
結果、眼球内に房水が過剰に蓄積されてしまうため、眼圧が上昇して視神経を圧迫します。
原発閉塞隅角緑内障は、急激に発症し、一気に重症化しやすいのが特徴です。
短時間で失明することもあるため、異変に気づいたらすぐに眼科を受診することが大切です。
原発閉塞隅角緑内障の症状には以下があります。
- 激しい眼の痛み
- 頭痛
- 吐き気
原発閉塞隅角緑内障は、両目に同じ症状があらわれることが多いです。
片目に症状がある場合、もう片方の眼に異常がなくとも予防のために処置する必要があります。
正常眼圧緑内障
正常眼圧緑内障は、眼圧に異常がないにもかかわらず、視神経に障害が起こることです。
原発開放隅角緑内障のうち、眼圧が正常範囲20mmHg以下の場合が該当します。
正常眼圧緑内障は、日本人の緑内障の約7割を占めると指摘されています。
発症メカニズムは解明されていません。
ただし一説では、眼の周辺の血流悪化などが原因とされています。
正常眼圧緑内障の主な症状は、視野の狭窄です。
症状は数年かけてゆっくり進行することが一般的です。
初期は自覚症状があらわれにくいため、かなり症状が進行してから気づいたというケースは少なくありません。
発達緑内障
発達緑内障は、先天性の緑内障です。
早期型と遅発型の2種類に分けられます。
早期型発達緑内障は、生後1歳未満で発症します。
以下のような症状があらわれることが多いです。
- 涙が多く出る
- 光を異常にまぶしがる
- まぶたがピクピクとけいれんする
- 黒目が混濁する
- 黒目が大きくみえる
早期発達緑内障の原因の1つとして遺伝子異常が挙げられます。
治療は、外科手術が代表的です。
一方、遅発型発達緑内障は、10歳から20歳の間に発症します。
症状は、40代以降の方の緑内障とほぼ同様です。
具体的には視野狭窄などがあらわれます。
なお、若年者の緑内障は発見が遅れやすいという傾向があります。
理由は、世間一般的に緑内障は高齢者の病気というイメージが強いことです。
若年者の方は視覚に異常を感じたとしても、年齢的な理由から緑内障を意識することが少ないのです。
加えて遅発型発達緑内障は、症状の進行がゆるやかです。
自覚症状がないことも多いため、重症化してはじめて緑内障に気づくことも少なくありません。
続発緑内障
続発緑内障は、2次的な原因で引き起こされる緑内障です。
具体的には、次の原因が挙げられます。
- 眼のケガ
- 病気
- 医薬品の副作用
- 全身疾患など
【眼のケガや病気の例】
- ぶどう膜炎
- 網膜虚血性病変
- 白内障手術
- 硝子体手術
- 角膜移植
- 眼内腫瘍
- 外傷
【医薬品の副作用の例】
- ステロイド薬の長期使用による眼圧の上昇
【全身疾患の例】
- アミロイドーシス
- 糖尿病
- ベーチェット病
多くの場合、症状は年単位でゆるやかに進行します。
ただし急性の緑内障の場合、眼痛・頭痛・吐き気などの症状が急激にあらわれることもあります。
緑内障の典型的な症状
緑内障の症状は、視野の狭窄です。
具体的には、見える範囲が徐々に狭くなっていきます。
たとえば初期には、視野の真ん中がかすんだように見えにくくなります。
症状の進行に伴ってかすみの範囲が徐々に広がります。
気がついたときには視界全体がかすんでいるなどのケースが見られます。
緑内障の症状は、多くの場合、長年かけてゆっくり進行します。
ゆっくり進行するため視覚に違和感をあまり感じません。
失明直前になるまで症状を自覚できないというケースも少なくありません。
ただし、急性の緑内障では以下のような症状が急激にあらわれることもあります。
- 激しい眼の痛み
- 頭痛
- 吐き気
- 視界がかすむ
急性の緑内障とは、原発閉塞隅角緑内障が代表的です。
症状が急激に進行しやすいのが特徴で、短時間で失明することもあります。
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緑内障になる原因
緑内障の原因は、眼圧が高くなって視神経が圧迫されることです。
なぜ眼圧が高くなるのかは、はっきりとは解明されていません。
なお、一説では、眼圧上昇の要因として以下が指摘されています。
- 生活習慣病(高血圧・糖尿病など)
- 加齢
- 強度の近視
- 遺伝
- 眼の病気・手術経験(白内障・硝子体の異常など)
- 持病薬の副作用
- 眼周辺の血流悪化
- 視神経に毒が存在する
緑内障の検査方法
緑内障は自覚症状があらわれにくいため、発見が遅れることが少なくありません。
早期発見・治療につなげるには、定期的に検査を受けることが大切です。
緑内障の主な検査方法をご紹介します。
眼圧検査
眼圧を調べるための検査です。
眼圧が高い場合、緑内障の危険性が高いと判断できます。
ただし、緑内障は眼圧が正常範囲でも起こることがあります。
緑内障を診断するには眼圧検査とその他の検査結果を見比べて、慎重に判断する必要があります。
眼圧検査の内容は、眼球に風を吹きかけるというものです。
眼球が風を押し返す力を計測することで、眼圧を測ります。
眼底検査
特殊な装置を使って眼に光を照射し、眼球の底を観察する方法です。
具体的には、眼底にある視神経に異常がないかを調べます。
緑内障は、眼圧が高くなるなどして、視神経が圧迫されることで起こります。
つまり眼底検査で視神経に異常が確認された場合、緑内障が疑われます。
視野検査
視野の範囲を調べる方法です。
1点を凝視し、周辺で光の明滅が見えたらボタンを押すという方法が一般的です。
近年は、ブルーオンイエロー視野検査を導入するクリニックも増えています。
ブルーオンイエロー検査は、黄色い背景に青い光を映す検査方法です。
緑内障では、まず青色を認識しにくくなるケースが多いです。
そのため、青色に対する認識・感度を測ることで、より迅速な緑内障の発見が期待できます。
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緑内障の治療方法
緑内障の主な治療方法をご紹介します。
なお、どのような治療法であっても、緑内障によって失われた視覚機能は元に戻せません。
視神経は1度損傷すると、永遠に再生しないためです。
では、緑内障の治療の目的とはなんでしょうか。
答えは、緑内障の進行を防ぐことです。
具体的には、緑内障の進行スピードを遅らせて、いま残されている視野をできる限り維持することを目的とします。
それでは緑内障の治療方法を見ていきましょう。
点眼薬での治療
もっとも一般的なのが点眼薬による治療です。
眼圧を下げる効果のある目薬が処方されます。
なお、点眼薬による治療は、眼圧が高くない方にも有効です。
たとえば正常眼圧緑内障の方でも、眼圧を下げる目薬によって緑内障の進行をゆるやかにできます。
外科的療法での治療
点眼薬で十分な効果が得られない場合は、外科手術が選択されます。
代表的なのはレーザー療法です。
レーザー療法は、線維柱帯にレーザーを照射して房水の流出を促進する方法です。あるいは、繊維柱帯をメスなどで切除して房水の排出口を作る方法も一般的です。
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緑内障の手術をするタイミング
緑内障の手術を考えるべきタイミングとは、たとえば以下があります。
- 点眼薬で眼圧が十分に下がらない場合
- 眼圧は下がったものの、視野の狭窄に歯止めがかからない場合
手術すべき具体的なタイミングには個人差があります。
適切なタイミングで手術するためには、かかりつけ医とよく話し合うことが大切です。
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緑内障の予防方法
緑内障は発症原因が解明されていません。
そのため、有効な予防方法も確立されていません。
ただし一説では、緑内障の危険因子は不規則な生活習慣と指摘されています。
そのため緑内障のリスクを下げるには、生活習慣を改善することが大切です。
具体的には、以下のようなポイントを心がけましょう。
- 栄養バランスの良い食事
- 適度な運動
- 良質な睡眠
- ストレス発散
- 規則正しい生活リズム
- 定期的な検診
緑内障は自覚症状があらわれにくいため、発見が遅れがちです。
重症化を防ぐためには、定期的に眼科検診を受け、緑内障を早期発見することが大切です。
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緑内障の患者数と推移
緑内障の患者数は年々増加しています。
平成29年の厚生労働省の調査を参照します。
昭和62年の緑内障の総患者数は14万3,000人でした。
平成5年には21万9,000人、平成11年には40万9,000人に増加しています。
緑内障患者はその後も増加を続け、平成20年には63万7,000人、平成29年には107万7,000人にのぼっています。
なお、緑内障患者のうち、約6割は正常眼圧緑内障と指摘されています。
緑内障は失明する可能性の高い病気です。
しかし自覚症状があらわれにくいため、気づいたときには失明していた、というケースが非常に多いです。
特に正常眼圧緑内障の方は、自身の緑内障に気づきにくいです。
眼の健康を守るためには、定期的に検診を受けて、緑内障を早期発見することが大切です。
出典:厚生労働省【平成29年患者調査(傷病分類編)36P】
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緑内障のまとめ
ここまで、緑内障についてお伝えしてきました。
緑内障の要点を以下にまとめます。
- 緑内障の主な種類は、原発開放隅角緑内障・原発閉塞隅角緑内障・正常眼圧緑内障のほか、発達緑内障・続発緑内障など
- 緑内障の主な症状は視野の狭窄・欠けだが、急性の場合は眼痛・頭痛・吐き気などを伴うことがある
- 緑内障の主な原因は不明だが、一説では遺伝・生活習慣の乱れ・眼周辺の血流悪化などが指摘されている
- 緑内障を治療するには点眼治療か手術が一般的だが、いずれの治療法でも視野の回復はできない
最後までお読みいただき、ありがとうございました。