長きにわたりお読みいただきありがとうございました。
それぞれのコラムの内容について、その根底にある考えは「動き出しは本人から」です。
日々の生活は新しいこと、また生活習慣となって繰り返されることも含めて大小様々な経験の連続です。
経験を通じて心も体も成長し、その動きも巧みになっていきます。乳幼児の様子が毎日変化していくことを想像すると分かりやすいと思います。
一方、高齢になると成長は止まるのかと言えばそうではありません。
高齢者もまた成長し続けています。
心身機能はもちろん下降線をたどることとなります、しかし衰えに適応しつつ生活を維持したり、あるいは社会活動においては充実度や信頼性は増していく場合も多いのは想像に難くないと思います。
生涯発達という言葉や学問分野があるとおり、人は生涯を通じて成長し続けていると考えるのが妥当です。
そこで改めて「経験」がキーワードとなります。
経験とは体を使って自ら何かに働きかけることはもちろん、そこで得られる様々な感覚や感情までも含みます。つまり心身の活用です。
機能の衰えに適応して心身も変化し続けます。それは、緩やかに右肩下がりに発達していくとも捉えられます。
介護は、ある意味でその方の経験を奪います。
良かれと思っての何気ない介助が、衰えを加速させてしまう場合もあるのです。
「小さな親切大きなお世話」ということわざがありますが、お世話には負の側面もあるのです。
介護が必要になった、だからこそ「動き出しは本人から」という、本人の小さな経験を大切にすることが介護者に求められます。
日々の小さな経験を大切にして、発達し続けて最後を迎える。そのような人生に寄り添えるのもまた介護の魅力だと思います。
ですから、人を物のように捉えて、荷物を運ぶかのごとく効率よく動かすのが介護技術ではありません。
たとえ介助が必要であったとしても、その人の動き出しを認め、それをその人にとって大切な経験にして差し上げるのが介護です。
156編のコラムを通じて「動き出しは本人から」という言葉の意味がお伝えできていれば幸いです。
デイサービスRe-Start(北海道札幌市) 大堀 具視


