- 親の足腰が弱くなり、玄関の上がり框(かまち)やトイレで立ち上がるのが大変そうだ
- 自宅で転倒して骨折しないか心配だが、どこにどんな手すりを付ければいいのか分からない
- 手すりの設置費用は介護保険で安くなるって本当?
在宅介護を安全に続け、高齢者の自立した生活を支える上で、最も重要で手軽な住環境整備が「介護用手すりの設置」です。
高齢者の転倒事故の多くは、屋外ではなく「自宅内(玄関・廊下・居室・トイレ・浴室など)」で発生しています。
たった1回の転倒骨折が原因で、寝たきり状態や要介護度の重度化に繋がるケースも少なくありません。
本記事では、介護用手すりの設置効果をはじめ、3つの種類(工事取り付け型・据え置き型・突っ張り型)、場所別(玄関・トイレ・浴室・階段等)の具体的な選び方と適切な高さの決め方、介護保険(住宅改修費給付・福祉用具貸与)を活用して費用を大幅に抑える方法まで分かりやすく徹底解説します。

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介護における住環境整備と「手すり設置」の重要性
超高齢社会を迎えた日本において、住み慣れた自宅で長く暮らし続ける「在宅介護」の推進が重要な課題となっています。
在宅介護で手すりが必要とされる背景
加齢に伴い筋力やバランス感覚が低下すると、日常の何気ない動作(立ち上がり、座り込み、またぎ動作、歩行時の方向転換)で転倒する危険性が高まります。特に昔ながらの日本家屋では、以下のような段差や危険が多く存在します。
- 玄関の上がり框(かまち):15〜30cmもの高低差があり、靴の脱ぎ履きや段差昇降でバランスを崩しやすい
- トイレや浴室:便座からの立ち座り、立ち上がった状態での衣服の着脱、跨ぎ動作、水濡れによる滑り
- 廊下や階段:移動中のふらつき、階段での踏み外し
手すりを設置する3つのメリット
- 転倒・骨折事故の防止:身体を支える支点を作ることで、上半身の力を利用して安全に動作を行えます
- 本人の自立支援と精神的安心感:誰かの助けを借りずに自分で移動・動作ができるため、自信と尊厳を守れます
- 介助者の負担軽減:全介助が必要だった動作が、手すりを掴むことで一部自立になり、介助者の腰痛や負担が激減します
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介護用手すりの3つの種類と特徴
手すりには、壁に工事で固定するものから、工事不要で置くだけのタイプまで様々あります。
① 工事取り付け型(固定式手すり)
壁の補強工事を行い、金物とネジで直接固定する手すりです。
- 特徴・メリット:壁にしっかり固定するため最も安定感が高く、スペースを取りません。持ち家の方に最も選ばれる方法で、縦型・横型・L字型など自由な位置に設置できます
- 利用方法:介護保険の「居宅介護住宅改修費」が適用されます
② 据え置き型(置くだけ手すり)
重みのあるベースプレート(金属板)と手すりが一体になった、置くだけで設置できる手すりです。
- 特徴・メリット:壁に穴を開ける必要がないため、賃貸住宅でも安心して使用できます。ベッドサイドやソファ横、玄関の上がり框などに置き、立ち上がり動作を助けます(バーを連結して廊下のように渡せるタイプもあります)
- 利用方法:介護保険の「福祉用具貸与(レンタル)」が適用されます
③ 突っ張り型(天井・床固定式手すり)
天井と床の間にポールを突っ張らせて固定する手すりです。
- 特徴・メリット:壁がない部屋の中央や、ベッド・トイレの横に「縦方向の支柱」として設置できます。掴んで身体を引き上げる動作に適しています(工事不要で賃貸住宅でも利用可能です)
- 利用方法:介護保険の「福祉用具貸与(レンタル)」が適用されます
設置場所別のポイント(高さ・種類・配置)
場所や動作の目的に合ったタイプ・高さを選ぶことが大切です。
玄関(靴の脱ぎ履き・段差昇降)
- 目的:上がり框の昇降と、靴を脱ぎ履きする際の立ち座り・バランス保持
- 適したタイプ:上がり框部分には「縦型」または「L字型」の手すり(据え置き型の玄関用手すりも有効)
- 高さの目安:横手すりの位置は床から75〜85cm、縦手すりは中央が高さ120cm前後にくるように配置します
トイレ(立ち座り・ズボンの着脱)
- 目的:便座への立ち座り、立ち上がった状態での下着・ズボンの脱ぎ履き時の身体保持
- 適したタイプ:便座横に「L字型手すり」を設置(または便器を囲む「はね上げ式手すり」や据え置き型フレーム)
- 配置の目安:L字の縦部分は便座の先端から手前20〜30cmの位置、横部分は便座面から上方23〜30cmの位置に固定します
浴室(滑り止め・またぎ動作)
- 目的:洗い場での移動、洗い場からの立ち上がり、浴槽への跨ぎ込み
- 適したタイプ:濡れても滑りにくい凹凸加工・樹脂被覆された防水手すり。「L字型」や浴槽の縁に挟み込む「浴槽用手すり」
- 配置の目安:浴槽の跨ぎ用縦手すりは、跨ぐ動作の邪魔にならない身体の前方に配置します
廊下(歩行・移動のサポート)
- 目的:部屋からトイレやリビングへの移動時のふらつき防止
- 適したタイプ:壁に沿って設置する「水平(横型)手すり」(端部に服の袖が引っかからないよう、端が壁側に曲がったブラケットを使用します)
- 高さの目安:床から75〜85cm
階段(昇り降りのサポート)
- 目的:階段の昇り降りでの滑落防止
- 適したタイプ:階段の傾斜に合わせた斜め手すり(両側に設置するのが理想ですが、片側の場合は「降りる時の利き手側(または麻痺がない健側)」に設置します)
- 配置の目安:段鼻(段の先端)から75cm前後の高さ(上りきった・下りきった水平部分は20cm以上長く伸ばして設置します)
寝室・ベッド周り(起き上がり・立ち上がり)
- 目的:ベッドからの起き上がり、端座位の保持、立ち上がり
- 適したタイプ:ベッドのフレームに差し込む「ベッド用手すり」や「据え置き型手すり」
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介護用手すりの選び方(高さ・太さ・素材)
適切な高さの決め方(体型に合わせる)
手すりの高さの基準は、一般的に「床から75〜85cm」とされていますが、本人の体型(身長)や骨格に合わせることが最も重要です。
立ち上がり・歩行用手すりの目案:まっすぐ立った状態で、「大腿骨大転子(だいたいこつだいてんし:太ももの骨の付け根の外側にある出っ張り)」の高さ、または「腕を自然に下ろした際の手首の関節の位置」に合わせると、最も力が入リやすく快適に使用できます。
太さと形状(握りやすさ)
- 太さの目安:しっかりと握り込む手すり(縦手すりや階段)は、外径直径32mm〜35mmが最適
- 平型・楕円型:握力の弱い方や、手を上から乗せて体重を預ける横手すりには、手のひらや肘を乗せやすい楕円型や平型の平手すりも効果的
素材の選び方
- 居室・廊下:インテリアに馴染み、肌触りの温かい木製
- 浴室:水に強く、濡れても滑りにくい樹脂被覆加工やステンレス
- 屋外・玄関前:夏場の熱さや冬場の冷たさを軽減する樹脂被覆メタル
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手すり設置費用を大幅に抑える公的制度(介護保険)
手すり設置は、介護保険制度を利用することでわずかな自己負担で実施・購入・レンタルが可能です。
① 居宅介護住宅改修費(工事取り付け型)
要支援1〜2、要介護1〜5の認定を受けた方が自宅に手すりを工事取り付ける場合、介護保険から住宅改修費が支給されます。
- 支給上限額:要介護者1人につき上限20万円(生涯通算)
- 自己負担額:所得に応じて1割・2割・3割(1割負担の場合、20万円の工事なら自己負担2万円で実施可能)
- 再利用の条件:要介護度が3段階以上上がった場合(例:要介護1➔要介護4など)や、転居した場合は再度20万円の枠がリセットされて利用できます
② 福祉用具貸与(据え置き型・突っ張り型レンタル)
壁に穴を開けられない場合や、体調の変化に合わせて手すりの位置を変えたい場合は、福祉用具レンタルが有効です。
- 対象:工事を伴わない手すり(据え置き型・突っ張り型・スロープなど)は、要支援1〜要介護5まで介護保険のレンタル対象
- 自己負担額:月額レンタル料の1〜3割(月数千円のレンタル料なら、1割負担で月数百円〜千円程度)
③ 住宅特定改修特別税額控除(バリアフリー税制優遇)
自己資金で一定のバリアフリー改修工事(補助金等を除いた自己負担工事費が一定額以上)を行った場合、確定申告を行うことで所得税の控除を受けられる税制優遇制度があります。
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失敗しない!設置位置に迷ったときの相談先
「うちの親にはどの高さが良いのか」「どこに付ければ一番邪魔にならないか」と迷った場合は、自己判断で工事を進めず、専門家に相談しましょう。
- 担当のケアマネジャー:介護保険申請や住宅改修の手続きをサポートしてくれます
- 福祉住環境コーディネーター / 理学療法士・作業療法士:本人の身体動作や麻痺の状態を観察し、リハビリの観点から最適な位置や高さをアドバイスしてくれます
- 指定住宅改修事業者:介護保険の住宅改修実績が豊富な施工業者を選びましょう
まとめ
介護用手すりの設置に関する重要ポイントをおさらいします。
- 手すりの効果:転倒・骨折事故の防止、本人の自立支援(ADL維持)、介助者の腰痛・負担軽減
- 3つの種類:壁固定の「工事取り付け型」、置くだけの「据え置き型」、天井・床で固定する「突っ張り型」
- 高さの基本:大腿骨大転子(太ももの付け根の出っ張り)や手首の関節の高さを基準に本人の体型に合わせる
- 費用軽減:工事取り付けは「居宅介護住宅改修費(上限20万円・1〜3割負担)」、工事不要タイプは「福祉用具貸与(レンタル)」を活用する
たった一箇所手すりを設置するだけで、高齢者の行動範囲が広がり、ご家族も安心して生活できるようになります。
ケアマネジャーや専門業者と相談しながら、早めの環境整備を進めていきましょう。

