お元気に生活している高齢者のシンプルなイメージの一つとして、「よく動かれている」が挙がると思います。そして、もう一つ挙げるとするならば、「よく喋る」ではないでしょうか。
そしてこの二つはセットになっているように思います。
つまり、よく動かれているけど、誰とも喋らない人は少ないですし、よく喋るけどほとんど動かないという人もあまりいません。
よく動いて、よく喋るが健康の秘訣とも言えそうです。
なぜ動くことと喋ることがセットになるのかは、脳の仕組みに理由がありそうです。
動くこと(運動)をつかさどるのも、喋ることをつかさどるのも同じ脳の前の部分、前頭葉と呼ばれるところです。
赤ちゃんの動きが盛んになるのに比例して、言葉の表出が増えてくるのもうなずけるように思います。
高齢者に限らずでしょうが、何らかの理由でほとんどの生活動作に介助が必要になる、つまり一人ではほとんど動けない方ほど言葉も減っていきます。
そのような時に、周りの者があの手この手で話しかけてもほとんど効果はありません。
しかし、「最近よくお話しするようになった」と印象が変わることがあります。
それは介助が必要な状態が大きく変わらずとも、少しでも本人自らが動くようになった時です。
あえて言い換えるとするなら、少しでも本人自ら動くことが許される環境を介護者が作っていくことです。
ある動作を介護者が全て介助するのは、時間的にも、安全の観点からも良いことが多いようにも思えます。
でも、自ら動き出すときに脳の前頭葉は働きます。
したがって、たとえ介助が必要であったとしても少しでも自ら動き出す瞬間を大切にして介助することが肝心です。
「最近よくお話しするようになった」、その背景には自ら動き出すということとセットになっているはずです。
「動き出し」と「語り出し」はセットです、そしてどちらも表現です。
介護では本人の動き出しを大切にすることが、その人らしさに近づけるのです。
本人の動きを信用して少しだけ待ってみる、そんな態度があれば十分ですから誰にでもできる大切な、しかも簡単な介護技術です。



