病気や加齢、脳卒中の後遺症などにより、口から食事を摂ることが難しくなった際の選択肢として「胃ろう(PEG)」があります。
胃ろうの導入にあたっては、本人やご家族が迅速かつ慎重な判断を迫られる場面も少なくありません。
本記事では、胃ろうの基本的な仕組みから、メリット・デメリット、費用、カテーテルの種類、さらに他の栄養補給方法との違いについて詳しく解説します。
- 胃ろう(PEG)の仕組みと対象者・適応外となるケース
- 胃ろうのメリット・デメリット
- カテーテルの種類(形状・構造の違い)と交換時期
- 胃ろうにかかる費用(手術・メンテナンス・栄養剤)
- 経鼻経管栄養や腸ろう、経静脈栄養など他の選択肢
胃ろうについての正しい知識を深め、今後の治療や介護方針の検討に役立ててください。

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胃ろう(PEG)とは?仕組みと対象者
胃ろうとは、お腹の皮膚から胃へ通じる小さな穴(造設口)を開け、カテーテル(チューブ)を通して直接胃に栄養を投与する処置(経腸栄養法)です。
内視鏡を用いて行う胃ろう造設術はPEG(ペグ:Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)と呼ばれます。手術時間は通常15分〜30分程度と短時間で行われ、身体への負担が比較的少ないのが特徴です。

胃ろうの対象となる方
口から食べ物を安全に摂取・咀嚼・飲み込む(嚥下)ことが困難になった方が対象となります。
- 脳卒中や神経難病の後遺症により、重度の嚥下障害がある方
- 認知症の進行により、食事の認識や口からの摂取が困難になった方
- 誤嚥(ごえん)を繰り返し、誤嚥性肺炎を頻発している方
- 頭頸部腫瘍や食道がんなどにより、物理的に食物の通過が困難な方
胃ろうの手術ができない方(適応外)
胃ろうはすべての人に適用できるわけではなく、解剖学的・身体的理由から手術を行えない場合(適応外)があります。
- のどや食道に高度な狭窄・腫瘍があり、内視鏡が通過できない場合
- 胃を切除している、または著しい胃の変形・位置異常がある場合
- 著しい腹水が溜まっている場合、または高度な肥満・横隔膜ヘルニアがある場合
- 重篤な凝固障害(血が止まりにくい状態)や著しい全身体力の低下がある場合
- 妊娠している場合
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胃ろうのメリット・デメリット
胃ろうの導入を検討する際は、身体への利点だけでなく注意点も理解しておくことが重要です。
胃ろうのメリット
- 確実な栄養・水分補給が可能:必要なカロリーや栄養素、水分を安定して胃に届けられるため、脱水や低栄養を防止できること
- 鼻チューブ(経鼻栄養)に比べ不快感が少ない:鼻から管を通す方法に比べて顔回りの違和感や痛みがなく、カテーテルが服の下に隠れるため目立たないこと
- 口からの食事(経口摂取)やリハビリも併用できる:胃ろうを作っても、嚥下機能が残っていれば口から食べる訓練(嚥下リハビリ)を継続できること
- 誤嚥性肺炎のリスクを軽減:口から食べ物が気管に入るリスクを減らせること(※唾液の誤嚥などによる誤嚥性肺炎を完全に防げるわけではありません)
- 日常動作や入浴が可能:服の下に収まるため動きを妨げず、医師の許可があれば入浴や外出も通常通り行えること
胃ろうのデメリット
- 造設手術が必要:内視鏡による小手術が必要なため、感染症や出血、麻酔のリスクが少なからず存在すること
- 徹底した口腔ケアが必要:口から食べなくなっても唾液の分泌低下により雑菌が繁殖しやすくなるため、毎日の口腔ケアを怠ると誤嚥性肺炎の原因になること
- 栄養剤の逆流・漏れへの注意が必要:注入時の姿勢(上半身を30度〜45度起こす)や注入速度を守らないと、嘔吐や逆流、皮膚のかぶれを起こすことがあること
- 定期的なカテーテル交換・メンテナンスが必要:カテーテルの劣化を防ぐため、定期的な医療機関での交換が必要なこと
胃ろうカテーテルの種類と特徴
胃ろうのカテーテルは、「体外部分の形状(ボタン型/チューブ型)」と「胃内部の固定方法(バルーン型/バンパー型)」の組み合わせによって4パターンに分かれます。
1. 体外部分の形状の違い
| 種類 | 特徴・メリット | デメリット |
|---|---|---|
| ボタン型 | 皮膚表面にボタン状に収まるため目立たず、動作の邪魔になりにくい。抜けにくい。 | 栄養注入時に接続チューブをつなぐ手間がある。 |
| チューブ型 | 体外にチューブが出ており、栄養注入時の接続が簡便。 | チューブが服に引っかかって抜けたり、汚れが溜まりやすい。 |
2. 胃内部の固定方法の違い
| 種類 | 特徴・メリット | 構造・交換頻度 |
|---|---|---|
| バルーン型 | 蒸留水を入れた風船で固定。交換時の痛みが少なく、負担が軽い。 | 交換目安は1〜2ヶ月に1回。耐久性がやや低い。 |
| バンパー型 | プラスチック製のストッパーで固定。抜けにくく耐久性に優れる。 | 交換目安は4〜6ヶ月に1回。交換時にやや引っ張られる痛みがある。 |
ご本人の身体状況や自己抜去(誤って自分で抜いてしまうこと)のリスク、介護者の取り扱いやすさに応じて医師と相談して選択します。
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胃ろうのメンテナンスと交換頻度
胃ろうは造設したら終わりではなく、適切な管理と定期的な交換が必要です。
毎日の管理(日常ケア)
- 皮膚の観察・清拭:造設口(ホール)周辺の皮膚に赤み、浸出液、肉芽(にくげ)の発生がないか確認し、入浴や清拭時に清潔を保ちます
- カテーテルの回転確認:カテーテルが胃壁に埋没するのを防ぐため、日常的に前後に動かしたり半回転させたりする処置(ボタン型・バンパー型等)を行います
カテーテルの交換時期
カテーテルの種類によって医療機関での交換頻度が異なります。
- バルーン型:約1〜2ヶ月ごと(訪問診療や外来で短時間で交換可能)
- バンパー型:約4〜6ヶ月ごと(内視鏡等を用いて交換する場合あり)
定期交換を怠ると、カテーテルの破損や胃壁への埋没、感染症の原因となるため、指定された交換時期を守ることが不可欠です。
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胃ろうにかかる費用
胃ろうの導入・運用にかかる費用は、主に「造設手術・入院費」「定期交換・メンテナンス費」「栄養剤代」の3つです。
1. 手術・入院費用
胃ろう造設手術(PEG)およびその後の経過観察入院(約1週間程度)は公的医療保険の適用対象です。
- 自己負担額の目安:1割負担の方で約10,000円〜20,000円程度(※手術費・検査費のみ)
別途、差額ベッド代や食事代、日用品代がかかります。
70歳以上の方や医療費が高額になる場合は「高額療養費制度」が適用され、月額負担上限が設定されます。
2. 定期交換・メンテナンス費用
カテーテルの交換費用も保険適用となります。
- バルーン型(1〜2ヶ月ごと):1回あたり約2,000円〜3,000円(1割負担の場合)
- バンパー型(4〜6ヶ月ごと):1回あたり約2,000円〜4,000円(1割負担の場合)
3. 栄養剤の費用
医師から処方される「医薬品扱い」の経腸栄養剤(エンシュア、ラコールなど)は、公的医療保険が適用されます。
- 1ヶ月あたりの目安:1割負担の方で約2,000円〜4,000円程度(※使用量や剤形による)
処方薬品ではなく食品扱いの栄養剤を使用する場合は、全額自己負担となるため注意が必要です。

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胃ろう以外の栄養補給方法(人工栄養法)
胃ろうが適応できない場合や、短期間での回復が見込まれる場合は、他の人工栄養補給法が検討されます。
1. 経鼻経管栄養(けいびけいかんえいよう)
鼻から胃へチューブを通す方法です。
- 特徴:手術が不要で、すぐに開始・中止ができる
- 用途:数週間〜1ヶ月程度の短期的な栄養補給や、手術までのつなぎとして用いられる
- 注意点:鼻やのどへの不快感が強く、自己抜去のリスクや誤嚥のリスクが胃ろうより高め
2. 腸ろう(ちょうろう)
胃ではなく、小腸(空腸など)に直接穴を開けてカテーテルを通す方法です。
- 特徴:胃を切除した方や、胃の運動機能障害・重度の逆流がある方に適している
- 注意点:胃に比べて注入速度をゆっくりにする必要がある
3. PTEG(経皮経食道胃管挿入術)
首の皮膚から食道へ管を通す方法です。
- 特徴:胃切除後の方や、腹水・肥満などで胃ろうが造設できない方に適している
- 注意点:首元にチューブが出るため管理と固定に配慮が必要
4. 経静脈栄養(けいじょうみゃくえいよう)
消化管(胃や腸)が使えない場合、血管(静脈)から直接栄養を注入する方法です。
- 末梢静脈栄養(PPN):腕などの細い静脈から点滴する。10日以内の短い期間用
- 中心静脈栄養(TPN):鎖骨下などの太い静脈(中心静脈)へカテーテルを通す。長期間の栄養管理が可能だが、感染症(カテーテル敗血症)のリスク管理が必要
まとめ
胃ろう(PEG)についての要点をまとめます。
- 胃ろうは、口から食事・栄養の摂取が困難な方に行われる内視鏡を用いた栄養補給法
- 経鼻栄養に比べて不快感が少なく、口からの食事やリハビリを並行して行いやすい
- 定期的なカテーテル交換、日々の皮膚ケアや逆流予防、徹底した口腔ケアが必要
- 手術費・メンテナンス費・処方栄養剤は公的医療保険の適用対象
- 身体状況に合わせて、経鼻栄養、腸ろう、PTEG、静脈栄養などの代替手段も選択可能
胃ろうは単なる延命処置にとどまらず、適切な栄養状態を保ち、リハビリや穏やかな生活を支えるための有効な手段の一つです。本人・ご家族の意向と身体状況を踏まえ、主治医や多職種チームとよく話し合って最適な選択を行いましょう。

