高齢化の進展に伴い介護サービスの需要が高まる一方、介護事業所や介護施設の「倒産・休廃業」が近年過去最多を更新しており、大きな社会問題となっています。
本記事では、最新の公的データや東京商工リサーチなどの調査に基づく介護施設の倒産動向、経営難に陥る背景、倒産が疑われる施設の兆候、そして利用者・ご家族が取るべき対策について詳しく解説します。
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介護施設の倒産件数の最新動向と推移
東京商工リサーチが発表した介護事業者の倒産動向調査によると、介護事業者の倒産件数は近年高水準で推移しており、2024年(179件)および2025年(176件)と2年連続で過去最多水準を更新する深刻な状況が続いています。
業種別・規模別の傾向
- 業種別の内訳(訪問介護事業所が全体の約半数を占めて突出し、次いで通所介護やショートステイが多くなっている)
- 規模別の特徴(資本金1,000万円未満や、従業員10人未満の小・零細事業者が大半を占めている)
- 有料老人ホームの状況(過剰供給やコスト高から、有料老人ホームの倒産件数も依然として高水準で推移している)
大規模なグループ企業が運営する介護付き有料老人ホームや公的な特別養護老人ホーム(特養)に比べ、小規模な訪問介護ステーションや個人経営のデイサービス事業所、新興の小規模施設が経営難に陥りやすい傾向が顕著にあらわれています。
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介護施設・事業所が倒産に追い込まれる4つの主な要因
介護需要が増加しているにもかかわらず、なぜ倒産が増加しているのでしょうか。そこには介護業界特有の構造的課題と外部環境の変化があります。
1. 慢性的なヘルパー・介護職員不足と人件費・採用費の高騰
公益財団法人介護労働安定センターの調査によると、約6割強の事業所が「人手不足」を感じています。特に訪問ヘルパーの高齢化と人材不足は限界に達しており、人手不足で新規利用者の依頼を断らざるを得ず売上が伸び悩む「人手不足倒産」が急増しています。また、人材確保のための求人費用や賃上げに伴う人件費増が経営を直接圧迫しています。
2. 物価高騰・光熱費・燃料費上昇と介護報酬の仕組み
施設運営に必要な電気代・ガス代、送迎用のガソリン代、給食の食材費や衛生用品費が急激に値上がりしています。一般企業であれば価格転嫁(サービスの値上げ)が可能ですが、介護事業者の収入(介護報酬)は国によって公的に定められているため、物価高を理由に自由に値上げできず、収益が悪化する構造になっています。
3. 2024年度介護報酬改定の影響
2024年度の介護報酬改定において、訪問介護の基本報酬が引き下げられたことなどが引き金となり、経営体力の乏しい小規模事業者の資金繰りが一気に悪化しました。
4. 競合激化と稼働率の低下
民間企業の参入により、特定のエリアでデイサービスや有料老人ホームの過剰供給が生じ、獲得競争が激化しています。利用者の獲得が進まず稼働率が低下すると、施設賃料や固定費を賄えなくなり経営破綻に至ります。
介護施設が倒産した場合どうなる?
万が一、利用中の介護施設や事業所が倒産・閉鎖となった場合、以下のいずれかの経過をたどることになります。
別の運営会社が事業を引き継ぐ場合(事業譲渡・スポンサー支援)
運営会社が変わっても施設自体は存続するため、急な退去を求められないケースが多いです。ただし、新運営会社のポリシーにより「利用料金体系の見直し」「スタッフの総入れ替え」「アクティビティや食事内容の変更」などが行われる可能性があります。
引き継ぎ手がなく施設が閉鎖される場合
完全閉鎖となる場合、別の移籍先・転居先の施設を探す必要があります。速やかに担当ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、近隣の空き施設や代替サービスの手配を進めましょう。
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利用者・ご家族が知っておくべき倒産予防策と保証制度
利用している介護施設や有料老人ホームが突然倒産した場合に備え、事前に知っておくべき保護制度があります。
入居一時金の保全措置(有料老人ホーム)
民間の有料老人ホームへ入居する際、前払い家賃として「入居一時金(前払金)」を支払う場合があります。老人福祉法に基づき、事業者は入居一時金の返還を確実に行うための保全措置(銀行保証や保証協会との契約等)を講じることが義務付けられています。契約前に「保全措置が取られているか」「返還条件」を必ず確認しましょう。
入居者生活保証制度
公益社団法人全国有料老人ホーム協会が運営する「入居者生活保証制度」に加入している施設であれば、倒産等によって全員の契約が解除された場合、協会から登録入居者に対して一定額の保証金(500万円等)が支払われます。
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倒産リスクが高い介護施設・倒産しにくい施設の特徴
施設選びや日頃の利用の中で、経営状態のサインを見極めることが大切です。
倒産リスクが懸念される施設のサイン
- 利用率・稼働率の低下(空室や空き枠が目立ち、館内や送迎車に活気がない)
- 職員の相次ぐ離職・減少(スタッフが定着せず入れ替わりが激しい。いつも人手不足でバタバタしている)
- 設備の放置やサービスの低下(備品の壊れや汚れが放置されている、食事の質やレクリエーションが明らかに低下している)
倒産リスクが比較的低い施設の特徴
- 特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)など、自治体や社会福祉法人・医療法人が運営する公的施設
- 広域で多数の施設を展開する大手介護事業者や、満室に近い高稼働率を維持している施設
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万が一の閉鎖時にすぐ対応するための手順
利用中の施設が閉鎖されることになった場合、次の受け皿を迅速に確保するための手順です。
担当ケアマネジャー・地域包括支援センターへ即座に相談
ケアマネジャーに緊急移籍の支援を依頼し、周辺地域の空き状況を調査してもらいます。
「特養(特別養護老人ホーム)」や民間施設の広域検討
公的施設である特養は費用が抑えられ経営も安定していますが、待機者数が多いため、希望地域の範囲を広げて複数施設へ同時に申し込みを行いましょう。また、即日〜短期間で入居可能な「住宅型有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」も平行して検討するとスムーズです。
まとめ
- 介護事業所の倒産件数は、人手不足・物価高騰・介護報酬改定などの影響により過去最多水準で推移している
- 特に訪問介護や小規模なデイサービス事業所で倒産・休廃業リスクが高い
- 有料老人ホームを選ぶ際は「入居一時金の保全措置」や「運営会社の経営体力」を事前に確認することが重要
- 倒産の兆候を感じたら、早めにケアマネジャーと代替案を協議しておくことが推奨される


