新ユニット完成! チェンライの豊かな自然とつながる「縁側のある介護」

土橋 壮之
土橋 壮之介護福祉士

介護福祉士の土橋壮之(つちはしまさゆき)です。みなさんからは「ツッチー」と呼ばれています。気軽にそう呼んでいただけると嬉しいです!

みなさんのおかげで、タイ・チェンライの高齢者施設「ひだまりHOME」の新ユニットが無事に完成し、行政の許可も取得することができました!
あと少し、すだれ掛けや庭の工事が残っていますけどね。

今回の新設にあたっては、クラウドファンディングでも本当にたくさんの応援をいただきました。
改めて、心からありがとうございます!

とはいえ、実際には「完成してゴール!」というよりは、ようやくスタートラインに立てたという感覚です。

介護士?それとも庭師?毎日泥まみれの「ガーデナー社長」

この1か月は、毎日朝早くから施設に来て、排水路を掘ったり、花壇を作ったり、草を刈ったりと、ずっと庭をいじっていました。

ガーデナー社長
ひだまりHOMEの庭

正直、自分が介護士なのか、庭師なのか、はたまた土木作業員なのかわからなくなる時もあります(笑)。
最近はスタッフや周囲から「ガーデナー」と呼ばれていて、なんだか響きがかっこよくて気に入っています。

でも、チェンライで介護をやっていると、こういう“暮らしの周辺”を整えることが、実はすごく大事なんだなと気づかされます。
チェンライのこの辺りの家って、本当に庭にたくさん花を植えているんです。

朝や夕方の少し涼しい時間になると、みんな家の前で水をまいたり、椅子に座ってぼーっと過ごしたり、近所の人と世間話をしたりしています。
日本のように「家の中だけで完結する暮らし」というより、“外の社会と地続きでつながっている暮らし”という感じがします。

だから、新ユニットを作る時も「ただ部屋の数を増やす」のではなく、「どうやったら入居者さんが自発的に外へ出たくなるかな?」ということをずっと考えていました。

アジアの気候にベストマッチ! こだわりの「縁側」と「大きな窓」

そうして試行錯誤の中で作ったのが、「縁側(えんがわ)」です。
日本の昔ながらの家にある、“内と外の間”にあるあの中間空間をイメージしました。
外ではないけれど、かといって部屋の中閉ざされてもいない。
心地いい風が抜けて、外の花や空を眺めながら、のんびり座っていられる場所です。

ひだまりHOMEに作った縁側

この「中間にある場所」って、すごくアジア的だなと思うんです。
外だと暑すぎるし、中にこもりきりだと外の空気が吸えない。
この内と外の間が、タイの気候に驚くほどしっくり合います。
以前視察したベトナムの施設でも、縁側そのものではなかったですが、こうした中間のスペースをうまく活用していたので、その時のイメージもベースになっています。

また、新ユニットの窓はあえて大きく設計し、部屋の中からでも庭がよく眺められるようにしました。

私が庭で畑を作ったり草を刈ったり、何かしらバタバタやっていると、入居者さんたちは窓からじーっとその様子を見ています(笑)。
「見られている!」と思うと、僕もついつい庭いじりに熱が入ってしまい、事務仕事がなかなか進みません(泣)。
ときどき、窓越しにジェスチャーで「あれをやれ」「これを受け取れ」なんて指示を出されたりもします。

庭で作業するツッチー

実はこういう仕掛けは、昔、イギリスの障がい者施設の屋根裏部屋に住み込みでボランティアをしていた頃の経験がベースになっています。
当時、庭で配管工兼庭師のスタッフがいろいろな作業をしているのを、入居者のみんなが大きな窓から楽しそうに眺めていたんです。
イギリス人も本当に庭が大好きですからね。
天気がいい日は庭に出て、天気が悪い日は室内から外を眺める。
その時のあたたかい空気感を、ずっと心に覚えていました。

歩くことは「目的」じゃない。心が動くから、身体が動く

高齢者ケアにおいて、リハビリとして「歩くこと」それ自体は目的ではない、と僕は思っています。
まず、本人の「心が動くこと」が何より大切なんです。

庭で作業するツッチー

「あの花を見に行きたい」
「植物に水をあげたい」
「あ、新しい芽が出てきた。花が咲いたな」
「今日は暑いな、寒いな、大雨が降ってきたぞ」

こうした五感の刺激こそが、僕が目指している“暮らしの中の介護”なのかもしれません。
自分で言うのもなんですが、外の空気に触れているときの入居者のみなさんは、本当に活き活きとした表情をされています😊

だからこそ、屋根を深くして日陰を作ったり、風が抜けるルートを考えたり、植物に水をかけながら涼しく過ごせる工夫をしたりしています。

年中いつでも同じ温度に保たれ、外の景色もずっと変わらない場所にいたら……。
確かに一見、快適で安全かもしれませんが、だんだんと時間の認識や季節感が薄れていってしまうのではないでしょうか。
実は昔、東京の介護施設で働いていた頃、そんな「施設の中だけで完結する介護」に対してずっと違和感を抱えていました。

チェンライの人たちは、家の前に椅子を出して、近所の人と話し、そばで犬が寝ていて、子どもたちが元気に遊んでいます。
だから僕も、日本の管理された介護をそのまま持ち込むのではなく、この“チェンライの豊かな暮らし”の中に溶け込む介護を作りたいんです。

庭で作業するツッチー

トラブルも「マイペンライ」! 地域みんなで育てるホームへ

もちろん、まだまだ理想通りにはいきません。
雨が降れば庭はすぐにぬかるむし、排水がうまくいかないことも日常茶飯事。
タイの職人さんによる工事なので、「え、なんでこうなった!?」というハプニングも普通に起きます(笑)。

こだわりの縁側も、スコールが降ると雨が中に激しく吹き込んできて、「もしかして設計ミスでは……?」と焦ることも。
でも、そこはピンチをチャンスに変える精神で、タイ名物の「すだれ」を取り付けて補強することにしました。
毎日、小さなお手上げ問題だらけです。

でも、そのたびに「どうしたらもっと外へ出やすいかな」「どうしたらみんなが気持ちよく過ごせるかな」と考えながら、少しずつ自分の手で直していくプロセスがたまらなく愛おしいのです。

最近では、地域の人たちやご家族も、僕が素人ながら泥まみれになって花壇や畑を作っているのを見て、お家の花を分けてくれるようになりました!
先日は立派なブーゲンビリアとハイビスカスをゲットしました!
なんだか、自分たちだけで施設を作っているというより、地域のみんなで一緒に庭を育てているような感覚です。

介護施設というと、日本ではどうしても「四角い建物」や「行き届いたサービス」というハード面で考えられがちです。
でも本当に大切なのは、その人が毎日どんな景色を見て、どんな心地いい風を感じて、誰と笑い合って過ごすかという、“暮らし”そのものじゃないかなと思っています。

新ユニットのハードは完成しましたが、僕の中ではここからが本当の本番です。
庭の花がもっと増えて、地域の人がふらっと遊びに来て、入居者さんが自然と外へ出て、誰かと笑い合っている。
そんな温かい場所を、ここチェンライで少しずつ、でもしっかりと作っていけたらと思っています。

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筆者プロフィール

ツッチーの旅する介護士日記
介護福祉士
ツッチーの旅する介護士日記
TVCM業界からひょんなことをきっかけに介護の仕事に転身。日本、イギリス、そしてベトナムへ、世界の介護現場を回る旅に出る。
WRITTEN BY
土橋 壮之
土橋 壮之
介護福祉士
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