急速な高齢化に伴い、仕事をしながら家族の介護を担う「ビジネスケアラー」が増加しています。
家族の介護が必要になった際、離職(介護離職)を選択してしまうと、経済的な困窮や社会的な孤立につながるリスクが高まります。
そうした介護離職を防ぎ、仕事と介護の両立を支援するために設けられている公的制度が「介護休業給付金」です。
本記事では、介護休業給付金の基本的な仕組みや介護休暇との違い、支給対象となる条件、支給額の計算方法、申請の手順や必要書類、受給時の注意点、その他に役立つ仕事と介護の両立支援制度まで詳しく解説します。

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1. 介護休業給付金とは?制度の目的と基本ルール
介護休業給付金とは、要介護状態にある家族を介護するために「介護休業」を取得した労働者に対して、休業期間中の生活安定と職場復帰を支援するために雇用保険から支給される給付金です。
制度の目的と「職場復帰」の前提
本制度の最大の目的は、「介護離職を防ぎ、介護休業終了後に元の職場へ復帰すること」です。
そのため、休業前からすでに退職が決まっている場合や、休業終了後にそのまま退職する予定である場合は支給対象外となります。
介護休業と「介護休暇」の違い
名前が似ている「介護休業」と「介護休暇」ですが、目的や取得できる日数、給付の有無などが大きく異なります。
- 介護休業
目的:介護体制を整え、両立環境を構築するためのまとまった休業
対象家族1人あたりの取得可能日数:通算93日まで(最大3回まで分割取得可能)
給付金の有無:あり(雇用保険から賃金の67%を支給)
事前の申出期限:原則、休業開始日の2週間前まで - 介護休暇
目的:急な通院付き添いや突発的な介護に対応するための短期休暇
対象家族1人あたりの取得可能日数:年間5日まで(対象家族が2人以上の場合は年10日まで。時間単位取得可能)
給付金の有無:なし(無給となる企業が多いが、有給とする企業もある)
事前の申出期限:当日申出も可能(企業の規定による)
介護休業は「自分がずっと自宅で手厚く介護を行うための期間」ではなく、「ケアマネジャーと相談してデイサービスやヘルパーなどの介護サービスを手配し、働きながら介護を続けられる体制(ケアプラン)を構築するための期間」として活用するのが本来のあり方です。
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2. 介護休業給付金の支給対象者と受給要件
介護休業給付金を受け取るためには、被保険者(介護者)と被介護者(要介護家族)の双方に定められた条件を満たす必要があります。
対象となる被保険者(労働者)の要件
雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者であり、以下の要件を満たす方が対象となります。
- 休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること(11日以上の月が足りない場合、勤務時間が80時間以上の月を1ヶ月として計算可能)。
- 休業期間中の就労日数が、1ヶ月(支給対象期間)あたり10日(10日を超える場合は80時間)以下であること。
- 有期雇用労働者(パート・アルバイト・契約社員等)の場合:介護休業開始日から起算して93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までに、労働契約が満了することが制限されていないこと。
※法改正により、従来あった「入社1年未満の労働者を除外する要件」は緩和され、労使協定による除外等がない限り、入社1年未満であっても要件を満たせば取得可能となっています。
対象となる「要介護家族」の範囲
給付金の対象となる家族(被介護者)の範囲は以下の通りです。同居・別居を問いません。
- 配偶者(事実婚・内縁関係を含む)
- 父母(養父母を含む)
- 配偶者の父母(養父母を含む)
- 子(養子を含む)
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
※叔父・叔母、従兄弟(いとこ)、配偶者の兄弟姉妹などは対象外となります。
「要介護状態」の定義
「要介護状態」とは、負傷、疾病、または身体上・精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態を指します。
必ずしも要介護認定(要介護1〜5)を受けている必要はなく、状態の基準を満たしていれば対象となります。
3. 介護休業給付金はいくらもらえる?計算方法と上限額
介護休業給付金として支給される金額は、休業前の給与(賃金月額)をベースに計算されます。
基本的な計算式
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
- 休業開始時賃金日額:原則として介護休業開始前6ヶ月間に支払われた決まって支給される給与(賞与を除く総支給額)を180で割った金額
- 支給日数:通常、1ヶ月(30日または31日)単位での計算
目安として、休業前の月収(手取りではなく額面)のおよそ3分の2(67%)が支給されます。
休業期間中は社会保険料の免除規定はありませんが、給付金自体は非課税(所得税・住民税がかからない)となるため、実質的な手取り額の7割程度がカバーされます。
休業中に会社から賃金(給与)が支払われた場合
介護休業期間中に企業から賃金が支払われた場合、支給額が減額または不支給となる仕組みがあります。
- 会社からの賃金が休業前賃金の13%以下の場合:給付金は減額されず、全額(67%)支給
- 会社からの賃金が13%を超えて80%未満の場合:休業前賃金の80%に達するまでの差額分が支給
- 会社からの賃金が80%以上の場合:介護休業給付金は支給なし(不支給)
支給額の上限額と下限額
給付金には、厚生労働省により毎年8月に改定される上限額と下限額が設定されています。
- 上限額(1ヶ月あたり):約33万円〜34万円前後(毎年の賃金基準により設定)
- 下限額(1ヶ月あたり):約8万円前後
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4. 介護休業給付金の申請手順と必要書類
介護休業給付金の申請手続きは、原則として勤務先の事業主(企業)を経由してハローワーク(公共職業安定所)へ提出します。
申請のステップ(流れ)
- 会社へ介護休業の申出:休業開始予定日の2週間前までに、勤務先へ書面(介護休業申出書)で通知
- 介護休業の取得と介護体制の構築:ケアマネジャーとの話し合い、介護サービスの契約等を実施
- 介護休業の終了と職場復帰:休業期間を終えて職場に復帰
- ハローワークへの支給申請(会社経由):休業終了後に、必要書類をハローワークへ提出
- 給付金の振込:支給決定後、約1週間〜2週間で指定の口座へ振込
提出に必要な主な書類
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 介護休業給付金支給申請書(個人番号等の記載欄あり)
- 介護休業申出書(受講者が会社に提出した書類の控え)
- 賃金台帳、出勤簿、タイムカード等(休業前後の賃金・就労日数を確認できる書類)
- 要介護家族との続柄を確認できる書類(住民票記載事項証明書や戸籍謄本など)
申請期限
申請期限は、介護休業期間が終了した日の翌日から起算して2ヶ月を経過する日の属する月の末日までです。
期限を過ぎると受給できなくなる可能性があるため、復帰後速やかに会社と連携して手続きを行いましょう。
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5. 介護休業給付金を利用する際の注意点
制度をスムーズに活用するために、事前に把握しておくべき注意点です。
1. 休業中の「リアルタイム給付」ではない
給付金の申請は「介護休業が終了した後」に行うのが原則です。
そのため、休業期間中すぐにお金が振り込まれるわけではありません。申請から実際の振込まで数ヶ月のタイムラグが生じるため、休業中の当面の生活費はあらかじめ手元に用意しておく必要があります。
2. 同じ対象家族に対して「通算93日・最大3回」まで
介護休業給付金が支給されるのは、同一の対象家族1人につき通算93日、かつ最大3回までの分割取得に限られます。
一度93日分を使い切ると、同一の家族について再度受給することはできません。
3. 他の休業給付(産休・育休・傷病手当金)との重複不可
介護休業期間中に、別の家族に対する介護休業や、産前・産後休業、育児休業、労災保険の休業補償、傷病手当金などが開始された場合、元の介護休業給付金は新たな休業開始日の前日で終了となります。
4. 給付金は非課税だが社会保険料の免除はない
育児休業とは異なり、介護休業期間中は健康保険料や厚生年金保険料の免除規定がありません。
休業中も社会保険料の支払い義務が発生するため、会社と支払方法(口座振り込み等)を話し合っておく必要があります。
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6. その他に役立つ仕事と介護の両立支援制度・助成金
介護休業給付金以外にも、法で定められた両立支援制度や地域の給付制度があります。
労働基準法・育児介護休業法に基づく制度
- 所定外労働の制限(残業免除):対象家族1人につき、介護に必要な期間、残業(所定外労働)の免除
- 時間外労働・深夜業の制限:月24時間、年150時間を超える時間外労働や、深夜勤務(午後10時〜午前5時)の制限
- 短時間勤務等の措置(時短勤務・フレックス制など):連続する3年の期間内で、短時間勤務やフレックスタイム制、時差出勤、介護費用の助成などの措置を受給可能
地域・自治体の独自手当
- 家族介護慰労金(介護手当):要介護4・5の高齢者を介護保険サービスを使わずに在宅介護している非課税世帯等に対し、自治体から年10万〜12万円程度が支給される制度
7. まとめ
介護休業給付金に関する重要ポイントをおさらいします。
- 制度の目的:介護離職を防ぎ、職場復帰後に仕事を続けながら介護できる体制を整えるための給付制度。
- 支給額:休業前の賃金(額面月収)の原則67%を支給(非課税)。
- 支給期間:対象家族1人につき通算93日まで(最大3回まで分割取得可能)。
- 成功のコツ:休業期間中にケアマネジャーと連携し、デイサービスやヘルパーなどの外部サービスを手配して両立環境を構築する。
家族の介護が必要になったからといって、焦って仕事を辞めてしまう必要はありません。
介護休業給付金や各種支援制度を活用し、会社やケアマネジャーと相談しながら、持続可能な「仕事と介護の両立」を目指していきましょう。


