日本では、医薬品の副作用による健康被害をサポートする公的な「救済制度」が存在しますが、その知名度は決して高くありません。
この制度を知っておくことで、もしもの時に自分や家族の生活、そして経済的な負担を守ることができます。
本記事では、医薬品で副作用が出た場合の救済制度について、対象となる条件や給付の種類、具体的な申請手続きの流れを中心に分かりやすく解説します。
- 副作用救済制度とは:医薬品を適正に使用したにもかかわらず、入院治療などが必要な重篤な副作用が出た場合に医療費などが支給される公的制度
- 給付の種類:医療費、医療手当、障害年金、障害児養育年金、遺族年金、遺族一時金、葬祭料の7種類
- 対象となる条件:1980年5月1日以降に医薬品を「適正な目的・用法」で使用し、副作用と医薬品の因果関係が認められた場合
- 注意点:障害年金などを除き、ほとんどの給付には「5年以内」などの請求期限が設けられているため早めの手続きが必要
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1. 副作用の救済制度とは?
副作用救済制度とは、医薬品によって健康被害を受けた方に対して、治療費や年金などを給付する公的な制度です。独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)によって運営されています。
医薬品には、病気を治す効果がある一方で、多かれ少なかれ副作用のリスクが伴います。用法・用量を守って適正に使用していても、思わぬ副作用や健康被害にあう方が一定数存在します。こうした被害者を迅速に救済することが、本制度の目的です。
なお、対象となる医薬品は、病院で処方される「処方薬」だけでなく、薬局などで購入できる「一般市販薬」も含まれます。
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2. 副作用被害による救済制度の7つの種類
救済制度には、被害の程度や状況に応じて7つの給付種類が用意されています。

① 医療費
入院治療を必要とするほどの副作用被害を受け、医療機関で治療を受けた際に支給されます。
支給される金額は、健康保険などからの給付を除いた自己負担分(実費)です。
② 医療手当
医療費と同様に、入院治療を必要とするほどの副作用被害を受けた方が対象です。治療費そのものではなく、入院中の食費や雑費など、治療費以外の費用負担を補うために支給されます。
給付額は、入院の有無や医療機関にかかった日数によって異なります。(例:入院の場合、1ヵ月のうち8日以上で3万7000円など ※令和3年4月1日現在)
③ 障害年金
副作用により、日常生活に著しい支障が出る程度の障害が残った18歳以上の方に支給されます。被害者の生活費を補償する目的があり、障害の程度に応じて1級・2級に区分されます。
④ 障害児養育年金
日常生活に支障をきたすほどの副作用被害を受けた18歳未満の方を対象とし、その養育費として支給される年金です。こちらも1級・2級に区分されます。
⑤ 遺族年金
一家の生計維持者が副作用被害によって死亡した場合、残された遺族の生活を立て直す目的で支給される年金です。(最大10年間の支給)
⑥ 遺族一時金
生計維持者以外の方が副作用によって死亡した場合に、遺族への見舞金として1回限りで支給される一時金です。
⑦ 葬祭料
医薬品による副作用被害で死亡した方の葬儀代として、1回限り支給されます。
3. 救済制度の対象となる条件・対象外となるケース
副作用救済制度の対象となるのは、1980年5月1日以降に医薬品を適正に使用したにもかかわらず、入院が必要な程度の疾病、日常生活に支障をきたす障害、または死亡といった重大な健康被害を受けた方です。
※必ずしも入院していなくても、入院治療に相当する通院治療であれば対象となる場合があります。
救済制度の対象外(除外)となるケース
以下のような場合は、給付の対象から除外されます。
- 法定予防接種が原因の健康被害(※別の救済制度があります)
- がん治療に用いる抗がん剤や、免疫抑制剤など一部の対象外医薬品によるもの
- 健康被害の程度が軽く、入院(またはそれに準ずる通院)を必要としない場合
- 医薬品の容器や添付文書に記載されている用法・用量、使用上の注意に従わず、不適正な目的・方法で使用した場合
- 救命のためにやむを得ず使用し、あらかじめ副作用の発生が予測されていた場合
- 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会にて、医学的・薬学的観点から因果関係が認められなかった場合
- 請求期限が過ぎてしまった場合
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4. 給付対象になるかを見極める4つのポイント
申請をスムーズに行い、確実に給付を受けるために、以下のポイントを満たしているか確認しましょう。
原因が医薬品だと確信が得られるか
サプリメントや他の医薬品を複数併用している場合や、副作用発生から受診までに時間が空きすぎている場合、原因の特定が困難になり不支給となる恐れがあります。異常を感じたらすぐに医療機関を受診してください。
副作用は重症(入院相当)か
軽度な発疹や一時的な吐き気など、すぐ治る程度のものは対象外となります。
使用目的や使用方法は正しかったか
「家族に処方された薬を飲んだ」「捻挫用の湿布を肩こりに使った」など、誤った使用法では適用されません。
対象外の医薬品ではないか
抗がん剤や動物用医薬品などは対象外です。
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5. 救済給付の申請手続きと流れ
副作用の救済制度を利用する場合、被害を受けた本人(死亡の場合は遺族)が自ら申請を行う必要があります。申請先は「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」です。
【申請から給付までの流れ】
- 被害者または遺族が、PMDAへ請求書および医師の診断書などの必要書類を提出する
- PMDAが厚生労働大臣に判定の申し出を行う
- 厚生労働大臣が「薬事・食品衛生審議会」に諮問する
- 審議会での医学的・薬学的判定後、厚生労働大臣に答申される
- 判定結果がPMDAに通知され、PMDAから申請者へ決定通知と給付が行われる
※申請から給付決定までの期間は、平均で6カ月以内です。
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6. 給付の請求期限に注意!
障害年金および障害児養育年金を除き、ほとんどの給付には厳密な「請求期限」が設けられています。期限を過ぎると給付を受けられなくなるため注意が必要です。
- 医療費:支給対象となる費用の支払日から5年以内
- 医療手当:請求対象となる医療を受けた月の翌月初日から5年以内
- 遺族年金・遺族一時金・葬祭料:副作用被害を受けた方が死亡した日から5年以内
(※死亡前に他の副作用救済制度の支給決定を受けていた場合は、死亡日から2年以内となります)
7. なぜ副作用の救済制度が作られたのか?(経緯)
この制度が創設された背景には、1960年代を中心に多発した「サリドマイド事件」や「スモン事件」などの悲惨な薬害事件があります。
当時、被害者の多くが製薬会社や国を相手に訴訟を起こしましたが、和解や賠償が行われるまでに長い年月がかかり、救済を待たずに亡くなる被害者が少なくありませんでした。
医薬品による健康被害には「迅速な救済」が不可欠であるという教訓から、1980年に現在の副作用救済制度が創設されました。さらに2004年には、血液製剤によるエイズ感染被害などを教訓とした「生物由来製品感染等被害救済制度」も新たに設けられています。
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まとめ
医薬品の副作用救済制度は、万が一の健康被害から国民を守るための重要なセーフティネットです。
- 適正使用で重篤な副作用(入院相当)が出た場合は医療費などが支給される
- 申請には医師の診断書やPMDAへの書類提出が必要
- 請求期限(多くは5年以内)があるため、早めの行動が大切
薬を使用していて「いつもと違う」「体調がおかしい」と感じたら、すぐに使用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。そして、もし重篤な副作用に繋がってしまった場合は、一人で抱え込まずにPMDAの「救済制度相談窓口」へ相談しましょう。

