- 手や足に力が入りにくく、物をよく落とすようになった
- 舌がもつれて話しづらい、食べ物が飲み込みにくい
といった症状に不安を感じていませんか?
手足や口、喉の筋力が次第に低下していく「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」は、国の指定難病に認定されている神経変性疾患です。
ALSは血液検査や画像診断だけで「1発で判定できる特効薬的な診断マーカー」が存在しないため、他の類似疾患を慎重に排除していく「除外診断」と「各種精密検査(針筋電図など)」を組み合わせて確定診断を行います。
本記事では、40代以上の方が知っておくべきALSの基礎知識やタイプ別の初期症状をはじめ、確定診断に必要な9つの検査方法、検査入院が必要な理由、セルフチェック項目、早期発見による最新治療・公的支援のメリットまで分かりやすく解説します。

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【まず結論】この記事の重要ポイント
- ALSとは:筋肉を動かす脳や脊髄の「運動ニューロン(上位・下位)」が選択的に侵され、全身の筋力が低下していく指定難病
- 2つの主要な初期症状:
四肢型(手足の筋力低下):箸やペンが持てない、つまづきやすい、手足の筋肉がピクピクする
球麻痺型(口・喉の麻痺):ろれつが回らない、食べ物や水分でむせる(嚥下障害) - 診断の基本は「除外診断」:ALS単体を直接証明する血液マーカーがないため、MRI・血液検査・髄液検査等で他の病気を除外しつつ、針筋電図検査等で判定する
- 検査入院が必要:複数種類の高度な検査を集中して行い、総合的に判断するため、数日〜1週間程度の検査入院が一般的
- 早期発見の重要性:早期に脳神経内科を受診して診断を受けることで、進行を遅らせる薬物療法の開始、リハビリテーション、難病医療費助成制度の早期利用が可能になる
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筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは?運動ニューロン障害の仕組み
筋萎縮性側索硬化症(ALS:Amyotrophic Lateral Sclerosis)は、体を動かすための神経系である「運動ニューロン」が徐々に障害を受ける進行性の病気です。
筋肉そのものの病気ではなく、「脳や脊髄からの運動指令が筋肉に届かなくなること」で筋肉が痩せて力が落ちていきます。
運動ニューロンの2つの分類
- 上位運動ニューロン:大脳皮質から指令を出し、脊髄へ送る神経(障害を受けると筋肉の突っ張り・腱反射の亢進)
- 下位運動ニューロン:脊髄(前角細胞)から直接骨格筋へ指令を伸ばす神経(障害を受けると筋肉の痩せ・筋力低下・ピクつき)
ALSは、この上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの「両方」が同時期に侵されるのが大きな特徴です。
発症原因は解明されておらず、根本的な完治治療法がまだ確立されていないため、厚生労働省の「指定難病」に指定されています。
見逃してはいけない!ALSの代表的な初期症状(タイプ別)
ALSは、「どの部位の筋肉・神経から症状が始まるか」によって大きくタイプが分かれます。初期段階では痛みがほとんどないため、注意深く観察することが大切です。
ALS発症の初期パターン
- 四肢型(約7割):手先・足先の筋力低下・筋肉の痩せ・こわばり
- 球麻痺型(約3割):舌や喉の麻痺(ろれつ不審・飲み込みにくさ)
- その他:呼吸筋の低下、認知機能の変化(前頭側頭型認知症の併発)
1. 四肢型(手や足の筋肉から始まるタイプ)
ALSの約7割を占める最も多いタイプです。主に手先や足の末梢部分から症状が出現します。
- 手の症状:ドアノブが回しにくい、箸やペンがうまく握れない、ペットボトルのキャップが開けられない、親指と人差し指の間の筋肉が凹んで痩せてきた
- 足の症状:つま先が上がりにくく段差でつまづく、スリッパが脱げやすい、階段の上り下りが辛い、一度しゃがむと立ち上がれない
2. 球麻痺型(きゅうまひがた:口や喉の筋肉から始まるタイプ)
脳幹(延髄)にある運動神経が侵されるタイプで、高齢女性にやや多く見られます。
- 構音障害(言語障害):ろれつが回りにくくなり、特に「ラ行」「パ行」「タ行」の発音が不鮮明になる
- 嚥下障害(えんげしょうがい):水分や食事を飲み込む際に頻繁にむせる、唾液が飲み込みにくく口からこぼれる
3. その他の初期症状
- 筋肉のピクつき(束性収縮):腕、脚、胸、舌などの筋肉の表面が、自分の意思と関係なく小刻みにピクピクと痙攣する
- 呼吸困難:ごく稀に、手足や口よりも先に胸の呼吸筋が弱まり、朝方の頭痛や息苦しさを感じる
- 認知機能の変化(FTDの併発):ALS患者の一定割合において、前頭側頭型認知症(FTD)を併発し、意欲低下やルールを守れなくなる行動変化が見られる
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【セルフチェック】ALSが疑われる症状リスト
ご自身やご家族の気になる症状をチェックしてみましょう。
ALS初期症状のセルフチェックリスト
- ボタン掛けや鍵の解錠など、指先を使う細かな作業が急に下手になった
- 手や足の特定の筋肉が削ぎ落とされたように痩せてきた
- 平らな道でもつまづきやすく、足が突っ張る感じがある
- 電話や会話で「声が変わった」「ろれつが回っていない」と言われる
- お茶や味噌汁などの水分で急にむせることが増えた
- 腕、脚、胸などの筋肉の一部がピクピクと動く現象が続いている
- これらの症状が数ヶ月かけて少しずつ広がったり強くなったりしている
※1〜2項目でも当てはまり、症状が徐々に進行している場合は、できるだけ早く「脳神経内科(神経内科)」を受診しましょう。
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早期発見・早期受診が得られる3つの大きなメリット
- 進行抑制薬(リルゾール・エダラボン等)の早期投与:病気の進行を遅らせるお薬を早い段階から開始できる
- 早期リハビリテーションの開始:筋力低下や関節のこわばりを防ぐ理学療法、言語・嚥下訓練をスタートできる
- 指定難病の医療費助成制度の利用:経済的負担を大幅に軽減する公的申請が早めに行える
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ALSを確定診断するための9つの検査方法
ALSの診断は、患者の問診・神経学的診察と、「似た症状を示す他の病気を完全に否定する(除外診断)」というプロセスで進められます。
ALS確定診断の3大要件
- 上位運動ニューロン障害の証明(突っ張り・腱反射の亢進等)
- 下位運動ニューロン障害の証明(筋力低下・筋萎縮・針筋電図異常)
- 他疾患の除外(MRI、血液、髄液検査等で異常がないこと)
ALSの確定診断で行われる主な検査一覧
| 検査方法 | 検査の概要 | ALS診断における役割 |
|---|---|---|
| 1. 問診・神経学的診察 | 症状の始まりや経過を詳細に聞き取り、筋肉の力やこわばりを直接確認する。 | 初期タイプの分類(四肢型・球麻痺型等)や進行性の確認。 |
| 2. 腱反射検査(膝蓋腱反射等) | 打診器(ハンマー)で膝や肘の腱を叩き、反射の強度を見る。 | 反射が異常に強まる場合、上位運動ニューロン障害を疑う。 |
| 3. バビンスキー反射 | 足の裏の外側を擦り、足の指の動きを確認する。 | 親指が上に向かって反り返る場合、上位運動ニューロン障害を示す。 |
| 4. 針筋電図検査(EMG) | 筋肉に細い電極針を刺し、安静時や収縮時の電気信号を直接記録する。 | 最重要検査:目に見えないレベルの失神経電位(下位運動ニューロン障害)を検出する。 |
| 5. 神経伝導検査(NCS) | 末梢神経に弱い電気刺激を与え、信号が伝わる速度と振幅を測定する。 | 末梢神経の「脱髄性疾患」などを除外する。ALSでは伝導速度は正常。 |
| 6. 頭部・脊髄MRI検査 | 磁気を用いて脳や頚椎・腰椎の断面画像を撮影する。 | 頚椎症、脳梗塞、脳腫瘍、脊髄腫瘍など、症状が酷似した病気を除外する。 |
| 7. 血液検査 | 血液中の酵素(CK・CPK)や甲状腺ホルモン、自己抗体を調べる。 | 筋炎や自己免疫疾患、甲状腺機能異常などを除外する。 |
| 8. 脳脊髄液検査(腰椎穿刺) | 腰から背骨の隙間に針を刺し、髄液を採取して成分を分析する。 | 髄液中のタンパクや細胞数を調べ、神経の慢性炎症性疾患を除外する。 |
| 9. 胸部レントゲン検査 | 胸部のX線写真を撮影し、肺や横隔膜の状態を確認する。 | 呼吸の苦しさが呼吸器自体の病気(肺炎や気胸など)でないか確認する。 |
ALSの診断になぜ「検査入院」が必要なのか?
ALSの確定診断を受ける際、多くの医療機関で数日から1週間程度の「検査入院」が推奨されます。これには明確な理由があります。
検査入院が必要な理由
- 身体的負担の大きい特殊検査(針筋電図・腰椎穿刺など)を一集中で行うため
- 他の酷似した疾患(頚椎症や末梢神経障害等)を100%排除する精密な評価のため
- 診断後の今後の治療計画・公的申請・リハビリの方針をチーム医療で検討するため
ALSの診断は「この検査で陽性が出ればALS確定」という単純なものではありません。時間をかけて一つひとつの検査結果を突き合わせ、誤診を防ぐために慎重な判断が下されるため、入院環境での観察が最も適しているのです。
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診断確定後の治療・サポート体制と難病申請
ALSと診断された場合、早期から多角的なサポートチームを組んで生活を支えます。
1. 進行を抑える薬物療法
現在、ALSの進行を遅らせる目的で承認されている主な薬物治療です。
- リルゾール(内服薬):グルタミン酸による神経毒性を抑え、生存期間を延長する
- エダラボン(点滴薬・内服懸濁液):強力な抗酸化作用により、運動機能障害の進行を抑制する
- トファセン等(核酸医薬品):特定の遺伝子変異(SOD1型)を持つALSに対する最新の治療選択肢
2. リハビリテーションとコミュニケーション支援
理学療法(PT)・作業療法(OT)・言語聴覚療法(ST)を組み合わせ、残存する筋力の維持や、意思伝達装置(視線入力装置等)の早期導入を進めます。
3. 難病医療費助成制度の活用
ALSと診断確定された場合、国の指定難病として「難病医療費助成制度」を申請できます。認定されると、所得に応じた自己負担上限額が設定され、医療費や訪問看護等の負担が大幅に軽減されます。
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まとめ:身体の違和感を感じたら早めに脳神経内科へ
ALS(筋萎縮性側索硬化症)の検査と診断についてまとめます。
- ALSは上位・下位運動ニューロンが侵され全身の筋力が低下する指定難病
- 「手足に力が入らない」「箸が持てない」「むせる」「ろれつが回らない」が代表的な初期症状
- 単一の検査で確定できないため、MRIや針筋電図などの「除外診断」を重ねて診断する
- 数日から1週間程度の検査入院を行い、総合的に慎重な評価が下される
- 早期発見により、進行抑制薬の投与やリハビリ、難病助成制度を早くスタートできる
手足の筋力低下や飲み込みにくさなど、少しでも気になる症状が続いている場合は、決して一人で抱え込まず、早めに「脳神経内科」の専門医を受診してください。
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