せん妄の治療ってどのようなことを行う?起こる原因、症状も解説!

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急に親の様子がおかしくなったら?「せん妄」の正しい治療法と家族ができる対応のポイント

  • 「昨日まで普通だった親が、急につじつまの合わないことを言い出した」
  • 「夜中に突然興奮して暴れ出し、ここがどこだか分からなくなっている」

このような姿を目の当たりにすると、多くの人が「ついに認知症が始まってしまったのか」とショックを受け、パニックに陥ってしまいます。

しかし、その突然の異常な言動は、認知症ではなく「せん妄(せんもう)」という一時的な精神障害の可能性が高いことをご存知でしょうか。

本記事では、健康意識の高い40代以上の方向けに、せん妄の基礎知識、医療機関での具体的な治療法、自宅で家族が実践できるケア、さらには引き金となりやすいお薬の知識まで、最新の医療知見を交えて分かりやすく解説します。

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せん妄とは?認知症との違いと主な症状

せん妄は「一時的な意識の混乱状態」

せん妄とは、身体的な疾患や薬の影響などによって脳の機能が一時的に低下し、軽度の意識障害や精神混乱を引き起こす状態を指します。

認知症と最も異なるのは、「急激に発症し、一時的(可逆的)である」という点です。

せん妄の持続時間は、一般的には数時間から数日とされており、原因が取り除かれれば元の状態に回復します。ただし、場合によっては数ヶ月単位で症状が長引くケースもあります。高齢者だけでなく、比較的若い方でも大手術の後などに発症することがあります。

せん妄の代表的な症状

せん妄状態に陥ると、以下のような多様な症状が突発的に現れます。

  • 幻視などのそこにいない虫や人が見えるという訴え(幻覚・錯覚)
  • 昼夜逆転による夜間の完全な不眠(睡眠障害)
  • 時間、場所、周囲の人物が分からなくなる状態(見当識障害)
  • 意識がはっきりせずぼんやりしている状態(意識障害)
  • 大声を出す、急に怒る、点滴のチューブを引き抜こうとするなどの行動(興奮・イライラ・攻撃性)
  • 急激な怯え、または活動が著しく低下し一日中寝たきりになる状態(低活動型せん妄などの不安・無気力)
  • 泣いたり笑ったりを繰り返す状態(情緒不安定)
  • 直前の出来事を覚えていられない状態(記憶障害)

せん妄の主な治療法

せん妄の治療は、「直接的な原因(疾患や薬剤など)の排除」と「症状を和らげる対症療法」の両面から進められます。

薬物療法(抗精神病薬の使用)

興奮や幻覚、睡眠障害などの症状が激しく、本人の安全やケアが困難な場合には、医師の診断のもとで一時的に抗精神病薬が使用されます。

公的医療保険が適用される薬剤

日本においてせん妄治療で公的医療保険の適用が正式に認められているのは「チアプリド」のみです。チアプリドは、徘徊や過度の興奮、攻撃的な行動を穏やかに抑える効果があります。

保険適用外(臨床で広く使用される薬剤)

脳や臓器の炎症などに伴う激しい興奮状態に対しては、医師の判断により、以下の抗精神病薬が保険適用外(適応外使用)として処方されることがあります。

  • ハロペリドール
  • クエチアピン
  • リスペリドン
  • ペロスピロン
ご注意

認知症の有無や本人の身体状態(糖尿病の既往など)によって、使用できる薬剤は厳格に制限されます。必ず医師の処方に従ってください。

本人が安心できる環境の調節

せん妄の症状を落ち着かせるためには、お薬以上に「脳が安心できる環境づくり」が極めて効果的です。

幻視・錯覚への対策

部屋が暗いと、物影が不気味な人影に見えるなど、見間違い(錯覚)が起こりやすくなります。部屋の照明を明るく保ち、余計な荷物を片付けて見通しを良くしましょう。

時間の見当識障害への対策

「今がいつか」を脳が認識できるように、本人の目に入る位置に大きめのカレンダーや時計を設置します。

場所・状況の丁寧な説明

注意力が低下している本人は、自分が今どこで何をしているのか不安でいっぱいです。例えば「今、病院に行くためにタクシーに乗っているよ」と繰り返し、目的地や状況を伝えて安心させましょう。

五感のサポート(感覚遮断の防止)

目が見えにくい、耳が聞こえにくい状態は脳を不安にさせ、せん妄を悪化させます。普段使っているメガネや補聴器を適切に装着させたり、日中はラジオを流して適度な刺激を与えたりすることが効果的です。

症状環境調節の具体策
幻視・錯覚照明を明るくする、部屋を片付け物影を減らす
時間の見当識障害大きな時計やカレンダーをわかりやすい場所に設置する
場所の見当識障害移動中や不意の混乱時、定期的に現在地や目的を伝える
複数の不穏症状メガネ・補聴器を装着する、ラジオなどで適度な感覚刺激を与える

誘因となった薬物の中止・見直し

せん妄は、現在服用しているお薬が引き金(誘因)となって起こることが非常に多いのも特徴です。

最近新しく飲み始めた薬、あるいは長年飲んでいたのに急に中止した薬がないか、服用状況を徹底的に確認します。原因となる薬が特定できれば、その薬を中止または減量することで速やかな改善が期待できます。

ご注意

自己判断での増減や中止は極めて危険ですので、必ずかかりつけ医や薬剤師に相談してください。

睡眠・覚醒リズムの改善(生活リズムの調整)

せん妄になると昼夜が逆転しやすくなりますが、「昼は起きて活動し、夜は眠る」という本来のリズムを整えることが、せん妄の予防と改善に繋がります。

  • 日中の活動促進:昼間の適度な身体活動と昼寝の防止
  • 明暗のメリハリ:朝の日光の取り込みと夜間の減光
  • 快適な寝具:清潔なシーツや寝具によるリラックス環境の維持

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せん妄治療における専門の医療ガイドライン

医療現場では、どのような基準でせん妄が治療されているのでしょうか。代表的な2つの専門ガイドラインから、そのアプローチをご紹介します。

がん患者のせん妄ガイドライン

がん患者さんは、疾患そのものの影響(脳転移や代謝異常)だけでなく、抗がん剤や多種類のお薬を併用することが多いため、薬剤誘発性のせん妄が起こりやすい特徴があります。

特にがん疼痛治療に用いられる「オピオイド」や、脳浮腫などを抑える「ステロイド」などがせん妄の引き金になりやすいとされています。また、終末期において、活動が著しく低下する「低活動型せん妄」が起こりやすいのも特徴です。

集中治療室(ICU)における管理ガイドライン

ICUなどの集中治療室に入るような重症の患者さんも、せん妄のハイリスク群です。

治療に不可欠な「オピオイド鎮痛薬」や、不安や興奮を抑えるための「ベンゾジアゼピン系鎮静薬」の使用が、脳の混乱(せん妄)を促進する大きな危険因子となるため、これらを適切に管理・調整するための厳格な治療基準が設けられています。

治療ガイドラインにおける重要ルール

これら専門ガイドラインにおいて共通する注意点は以下の通りです。

非薬物療法の徹底が先決

いきなり抗精神病薬を使用するのではなく、まずは「環境調整」「全身状態(脱水や感染症)の改善」「原因となる薬剤の整理」を優先すること。

不眠コントロールの重要性

「不眠」はせん妄を著しく悪化させます。ただし、不眠治療によく使われるベンゾジアゼピン系の睡眠薬・鎮静薬は、逆にせん妄を悪化・誘発させるリスクが非常に高いため、安易な単独使用は避けるべきとされています。

併用リスク(FDAの警告)

米国食品医薬品局(FDA)などからも、オピオイド系鎮痛薬とベンゾジアゼピン系薬剤の併用については、呼吸抑制やせん妄の重篤化を招くとして強い注意喚起がなされています。

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せん妄が疑われたら何科を受診すべき?

「急におかしなことを言うようになったけれど、どこに相談すればいい?」

そんな時は、状況に応じて以下のように動きましょう。

  • 入院中の場合:看護師や主治医への速やかな報告
  • 在宅生活の場合:普段の健康状態を熟知する「かかりつけ医」への相談
  • 専門的な診断が必要な場合:医師の指示による「精神科」「心療内科」「老年内科(高齢者の場合)」などの受診

医師が用いる「せん妄」の診断基準

せん妄の診断にあたっては、一般的に以下の4つの要素が確認されます。

  • 注意および認識の障害:集中力の低下や周囲の状況理解の困難
  • 短期間での発症と1日の中での変動:数時間から数日での急激な症状発現と激しい日内変動
  • 認知機能の追加の障害:記憶違い、幻覚(幻視)、錯覚などの合併
  • 身体的背景:身体的異常や薬物の影響による引き起こしの証明(認知症や他の安定した精神疾患では説明できないこと)

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家族が「せん妄」になったときの正しい対応4つのポイント

目の前で大切な親が突然パニックになったり、おかしなことを口にしたりすると、介護する側も心身ともに疲弊してしまいます。家族が慌てずに対応するための4つの鉄則を心に留めておきましょう。

1. 慌てずに落ち着く

家族が急に豹変すれば驚くのは当然ですが、一番困惑し、恐怖を感じているのは本人です。周囲が慌てて怒鳴ったり、おろおろしたりすると、本人の不安が倍増し、せん妄の症状がさらに悪化してしまいます。

冷静に原因を探る、病院に受診するなどして、まずは落ち着いて対応しましょう。

ポイント

特に高齢の方、脳卒中やパーキンソン病などの持病がある方はせん妄の発症率が高いため、これらのリスクがある方が急に変わった言動を始めたら、まずは「せん妄」を疑う冷静さを持ちましょう。

2. 無理に制止したり叱ったりしない

「そんな変なことを言わないで!」「何言ってるの!」と、無理に制止したり、叱ったりするのは止めましょう

本人のつじつまの合わない話をしていても、訂正せず、話を合わせることが大切です。会話の制止や遮断によって、かえって不穏や興奮が悪化するおそれがあります。

どんなに異常な言動であっても、本人にとっては意味のある行動です。特別な危険がない限り、行動を見守りましょう。

3. 優しいトーンでの語りかけ

本人の脳に安心感を与えるため、話しかけるときは以下のポイントを意識してください。

  • ゆっくり、はっきりとした、短い文章での対話
  • 興奮した脳に響きやすく、聞き取りやすい、少し低いトーンでの声がけ
  • 上から見下ろすことを避け、正面から目線の高さを合わせた対話

4. 本人の話をよく聞き、共感する

どうしても問題行動が落ち着かない場合は、症状が少し落ち着いているタイミングを見計らって、本人に理由を聞いてみるのも手です。

本人の言い分がどんなに現実離れしていても、頭ごなしに否定せず、その世界を理解して共感を示すことが大切です。

「この人は自分の味方だ、理解してくれる」と本人が感じられれば、不安が和らぎ、症状が落ち着くことも少なくありません。

せん妄を引き起こしやすい要注意なお薬リスト

以下は、高齢者や中高年の方が日常的、あるいは治療時に使用することで、せん妄を誘発しやすいお薬・物質の代表例です。

ご注意

新しくこれらのお薬を飲み始めた、あるいは急にやめた後に言動がおかしくなった場合は、すぐにかかりつけ医に相談してください。

  • モルヒネやペチジンなどの医療用麻薬(強オピオイド):がん治療や大きな手術後の痛みの緩和に使用
  • 睡眠薬・鎮静薬:特にベンゾジアゼピン系薬剤による高いリスク
  • 抗精神病薬や抗うつ薬:精神症状を抑える薬剤による逆効果リスク
  • 抗ヒスタミン薬:花粉症やアレルギーの市販薬、一部の風邪薬に含まれ脳に作用するリスク
  • コカインなどの違法薬物
  • シメチジン:胃酸分泌を抑えるH2ブロッカー(胃腸薬)
  • コルチコステロイド(ステロイド薬):強力な抗炎症薬による精神症状誘発
  • 心疾患の治療薬や筋弛緩薬
  • アルコール(離脱症状):多量飲酒者が急に禁酒・減酒した際の激しい離脱症状

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まとめ

突然の親の異変に直面すると、誰もが強い不安にかられますが、正しい知識があれば冷静に対処できます。本記事の要点を振り返り、万が一の時に備えましょう。

  • せん妄の定義:病気や薬の影響による一時的な脳の混乱と意識障害(認知症とは異なり一時的なもの)
  • 治療の基本:抗精神病薬によるコントロール、明るく片付けられた環境の調整、原因薬の中止、生活リズムの改善
  • 周囲の関わり方:家族の冷静な対応、無理な制止の回避、不安や恐怖への共感と寄り添い

ご家族の突然の不穏に悩んだら、決して一人で抱え込まず、すぐに「かかりつけ医」や専門家に相談してください。その異変が「せん妄」であれば、適切なケアで元の穏やかな笑顔を取り戻すことができます。

(※各ガイドライン等の詳細や最新情報は、各専門学会および官公庁の公式ウェブサイトをご確認ください)

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