【最新版】高次脳機能障害による失語症とは?症状の種類や正しい対応方法・リハビリを解説

高次脳機能障害の後遺症として、非常に高い頻度でみられるのが「失語症」です。

失語症を発症すると、今まで通りに言葉を使った意思疎通が困難になり、ご本人はもちろん、ご家族や周囲の方も戸惑いや不安を抱えることが多くなります。

  • 話しかけても伝わっていない気がする
  • 言いたいことが言葉にならないようで、もどかしい
  • どのように接すれば、スムーズにコミュニケーションが取れるの?

このような疑問やお悩みを抱えている方に向けて、本記事では以下のポイントを中心に解説します。

  • 高次脳機能障害による失語症の主な症状と4つの種類
  • 失語症の方への正しい対応方法とコミュニケーションのコツ
  • 似ている症状(構音障害・失声症)との違い
  • リハビリテーションの内容と回復の見込み
  • 取得できる障害者手帳の種類

高次脳機能障害や失語症への理解を深め、ご本人と周囲が少しでも穏やかに意思疎通を図るためのヒントとして、ぜひ最後までお読みください。

目次

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高次脳機能障害とは?

高次脳機能障害とは、脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)などの脳血管障害や、交通事故・転倒による頭部外傷、脳炎、脳腫瘍などによって脳が損傷し、認知機能に重大な支障をきたしている状態を指します。

外見からは障害があることが分かりにくいため、「見えない障害」とも呼ばれています。

主な症状には、以下のようなものがあります。

  • 失語症:言葉の理解や表出ができなくなること
  • 記憶障害:新しいことを覚えられない、すぐ忘れてしまうこと
  • 注意障害:集中力が続かない、同時に2つのことができないこと
  • 遂行機能障害:計画を立てて段取りよく行動できないこと
  • 半側空間無視:視界の片側(多くは左側)を認識できないこと
  • 社会的行動障害:感情のコントロールが効かず怒りっぽくなる、依存的になること

これらの症状が複雑に絡み合い、日常生活や社会生活(復職など)に困難をもたらします。

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高次脳機能障害による「失語症」の4つの種類と症状

失語症とは、「聞く」「話す」「読む」「書く」という言語に関わるすべての機能が低下し、言葉をうまく操れなくなる障害です。

脳の損傷部位によって、主に以下の4つのタイプに分類されます。

① 運動性失語(ブローカ失語)

脳の前方にある「ブローカ野(運動性言語中枢)」が損傷して起こります。

  • 特徴:相手の言っていること(言葉の意味)は理解できるが、自分の言いたいことを言葉にして発することが難しい
  • 症状:言葉がスムーズに出てこない、たどたどしい話し方になる。「あー」「うー」などの発声のみになったり、言い間違いが増えたりする

② 感覚性失語(ウェルニッケ失語)

脳の後方にある「ウェルニッケ野(感覚性言語中枢)」が損傷して起こります。

  • 特徴:言葉を流暢に話すことはできるが、言葉の意味を理解することが難しい
  • 症状:言葉の理解が伴っていないため、言い間違いが多く、話の内容が支離滅裂(ジャーゴン)になりやすいのが特徴です。自分が言い間違えていることに気付かないケースも多く見られます

③ 全失語

脳の広範囲(言語野全体)が損傷することで起こります。

  • 特徴:「話す・聞く・読む・書く」すべての言語機能に重度の障害が残る
  • 症状:意味のある言葉を発することができず、相手の話もほとんど理解できません。右半身の重い麻痺(片麻痺)を伴うことが多く見られます

④ 健忘失語

  • 特徴:日常会話や言葉の理解は比較的保たれていますが、人や物の「名前(名詞)」がとっさに出てこなくなる
  • 症状:「あれ」「それ」という指示代名詞が増える、または「丸くて赤くて甘い果物(りんご)」のように、回りくどい説明になるのが特徴です

失語症と似ている症状(構音障害・失声症)との違い

失語症と混同されやすい症状に、「構音障害」と「失声症」があります。対応方法が異なるため、違いを正しく理解しておきましょう。

構音障害(こうおんしょうがい)

舌、唇、のど(声帯)などの発声器官の麻痺や筋力低下によって、言葉をうまく発音できない状態です。

失語症との違い:脳の言語機能は保たれているため、言葉の意味は理解しており、頭の中で文章を組み立てることも、読み書きも可能です。「呂律(ろれつ)が回らない」「声がかすれる」といった症状が中心です。

失声症(しっせいしょう)

声を出すための器官(声帯など)や脳の言語機能に異常はないものの、声が出なくなる状態です。

失語症との違い:強い心理的ストレスや精神的なショックが主な原因とされています。筆談などの「読み書き」は問題なく行うことができます。原因となるストレスが緩和されると回復に向かうことが多いのが特徴です。

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家族・周囲ができる!失語症の方への正しい対応方法

失語症の方とのコミュニケーションでは、ご本人の「伝えたい」という意欲を削がないことが最も大切です。以下のポイントを意識して接しましょう。

① ゆっくり、はっきり、短く話す

耳が聞こえなくなったわけではありませんが、言葉を処理するのに時間がかかります。

「ゆっくり」「はっきり」と、そして一度に伝える情報を少なくするため「短い文章」で話しかけましょう。

  • 悪い例:「今日は天気がいいから、着替えてからスーパーに買い物に行きましょう」
  • 良い例:「いい天気ですね」「着替えましょう」「買い物に行きますよ」

② 答えやすい質問の形にする(二択や「はい/いいえ」)

「何が食べたい?」というような自由回答の質問(オープンクエスチョン)は言葉を探す負担が大きくなります。

  • 「うどんでいいですか?(はい/いいえ)」
  • 「うどんとそば、どちらがいいですか?(二択)」

など、指差しやうなずきで答えられる質問(クローズドクエスチョン)を心がけましょう。

③ 視覚情報(写真・イラスト・ジェスチャー)を活用する

言葉だけのコミュニケーションにこだわらず、カレンダーを見せる、実物を指差す、写真やイラストのボード(コミュニケーションノート)を使う、身振り手振りを交えるなど、目から入る情報を増やすと伝わりやすくなります。

④ 急に話題を変えない

話題が切り替わると、頭の中の処理が追いつかず混乱してしまいます。

話題を変えるときは「話は変わるけど」「次の話だけど」とワンクッション置くようにしましょう。

⑤ 子供扱いせず、失敗しても責めない

言葉が出ないもどかしさから、ご本人が一番つらい思いをしています。大きな声で怒鳴るように話しかけたり、子供扱いしたりすることは、自尊心を深く傷つけます

時間がかかっても言葉を先回りして遮らず、ゆとりを持って相槌を打ちながら「聞き上手」になることが重要です。

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失語症のリハビリと回復の可能性について

「失語症は治るのか?」と不安に思う方は多いでしょう。

失語症の回復程度は、年齢、脳の損傷範囲・重症度、発症からの期間などによって大きく異なります。日常会話や復職が可能なレベルまで回復する方もいれば、後遺症として長く付き合っていくことになる方もいます。

リハビリテーション(言語聴覚療法)の内容

言語の専門家である「言語聴覚士(ST)」が中心となり、重症度や失語症のタイプに合わせたリハビリを行います。

  • 聞く・話す:単語の復唱、絵カードを使った呼称(名前を言う)、ニュースを聞いて内容を把握する訓練
  • 読む・書く:文字と絵を合わせる、簡単な文章を読んで質問に答える、日記をつける訓練
  • 実用的なコミュニケーション:言葉が出ない場合の代償手段(ジェスチャー、絵カード、スマートフォンのアプリ、タブレットの活用など)を身につける訓練

脳の機能回復は、一般的に発症から半年まで(回復期)が最も著しいとされていますが、それ以降の生活期(維持期)であっても、周囲との関わりや継続的なリハビリによって、緩やかにコミュニケーション能力が向上するケースは多々あります。焦らず、長期的な視点でサポートを続けることが大切です。

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高次脳機能障害・失語症の方が取得できる障害者手帳

高次脳機能障害や失語症の診断を受けた場合、症状に応じて以下の障害者手帳を取得でき、さまざまな福祉サービスや税金の減免措置を受けられます。

精神障害者保健福祉手帳

高次脳機能障害による記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害など(器質性精神障害)を理由に申請できる手帳です。

身体障害者手帳

失語症(音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害)や、手足の麻痺(肢体不自由)がある場合は、身体障害者手帳の対象となります。

「高次脳機能障害(精神)」と「失語症・麻痺(身体)」の両方の症状がある場合は、2つの手帳を重複して取得することも可能です。

手帳の種類によって受けられるサービス(交通費の割引率や補装具の支給など)が異なるため、主治医や市区町村の障害福祉窓口、医療ソーシャルワーカーに相談してみましょう。

高次脳機能障害の失語症に関するよくある質問(Q&A)

Q. 失語症の人と話すとき、どうしてもイライラしてしまいます。どうすればいいですか?

A. 意思疎通がうまくいかないと、ご家族がストレスを感じるのは当然のことです。完璧に理解しようとせず、会話の6〜7割が通じれば良しとする「心の余裕」を持つことが大切です。疲れた時はデイサービスやショートステイなどを利用し、介護者自身がリフレッシュする時間を作ってください。

Q. 認知症と言葉が出ない失語症の違いは何ですか?

A. 認知症は記憶や見当識(時間や場所の認識)など、認知機能全体が徐々に低下していく進行性の病気です。一方、失語症は脳の言語野の損傷によるもので、言語以外の理解力や判断力、発症以前の記憶は保たれていることが多く、症状が急激に進行することは通常ありません。

Q. スマートフォンやタブレットはコミュニケーションの役に立ちますか?

A. 大いに役立ちます。近年では、失語症の方向けの「指差しコミュニケーションアプリ」や、音声を文字に変換するアプリなどが多数開発されています。言葉に頼らない代償手段として、言語聴覚士に相談しながらITツールを取り入れるのもおすすめです。

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まとめ

高次脳機能障害に伴う失語症について、症状の特徴や接し方のポイントを解説しました。

要点は以下の通りです。

  • 失語症には「運動性」「感覚性」「全失語」「健忘失語」などがあり、症状が異なる
  • 似た症状の構音障害(発音の問題)や失声症(心因性など)とは区別される
  • コミュニケーションは「ゆっくり、短く、わかりやすく」。子供扱いや急な話題転換は避ける
  • 写真、ジェスチャー、絵カードなど視覚的な「代償手段」を積極的に活用する
  • 失語症がある場合は「身体障害者手帳」、その他の認知機能障害では「精神障害者手帳」の取得が可能

失語症の方とのコミュニケーションは、言葉という道具が使いにくくなっただけで、心の中には豊かな感情や意思が残っています。

周囲が正しい知識を持ち、焦らず寄り添うことで、心を通わせる方法は必ず見つかります。

本記事が、失語症のご本人とご家族の生活を少しでも豊かにする一助となれば幸いです。

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